
夫が私を頼りすぎるから
8歳と4歳の男の子を育てながら、パートで働くミキさん(40歳)。「夫は長男」と位置づけるほど、夫からも頼られている。言い換えれば「夫の世話が一番大変」だそうだ。「夫は不機嫌をまき散らすようなタイプではありません。逆にいつでもご機嫌で私を使うので、ひょっとしたらタチが悪いのかもしれないと思うこともあります。口では『ママがいないとオレは何もできない』と言いますが、人が忙しいときに限って『ねえ、水ちょうだい』などと言う。
私がそれをできる状態かどうか分からないの、とつい言うと、下の子に向かって『ママ、怖いねえ』と同意を求める。下の子も私が何か言うと、『ママ、怖いねえ』と言うようになってしまって困っています」
事情が分からない幼い子に同意を求めて、妻をやゆするようなやり方は、常にミキさんの神経をいらだたせる。だが、夫は「冗談だよ。明るく言ってるんだから問題ないでしょ」とどこ吹く風だ。
いいように使われている気がしてならない
「マンション住まいですが、夫は例えば玄関を出てから忘れものに気づいたような場合、戸を開けて『ママ、ママ、忘れものしたー』と大声を出す。自分で上がって持っていってよと言っても『いいじゃん、そこにいるんだから。ちょっと部屋を見てくれればすぐ分かるから』と。実際、急いでいるみたいだしやってあげちゃう私もいけないんでしょうけど……。|
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夫に子どもがまねするからやめてほしいと言うと、「みんな、ママが大好きなんだよ。な」とまた子どもに同意を求める。男3人にいいように使われている気がしてならない半面、「私がいないとこの家族はダメになる」というモチベーションにもつながるところが、甘えられ頼られてしまう女性の複雑な心境かもしれない。
「早めに男たちを自立させないといけないのは分かっているんですが」
ミキさんの表情も複雑だった。
乱暴な言い方をまねする息子
「うちの場合は、夫がかなりのモラハラ体質なんですよ。ストレスがたまると、嫌みや皮肉の言葉を私にぶつけてくる。気づけば謝ることもありますが、私には何を言ってもいいと思っているみたい。もう慣れましたけど、それでもムカつきますよ」サトミさん(42歳)は、子どもたちのために今は離婚はできないが、頭の隅にいつでもその2文字は浮かんでいると言う。
「11歳になる娘は、父親を嫌ってなるべく避けるようになりました。『あんなお父さんにしたがっているお母さんもヘン』と指摘されたこともあります。いずれは分かってくれると思いますが、下の8歳になる息子は最近、ものの言い方が夫に似てきて。それが気がかりです」
つい先日も、学校に提出する保護者のプリントをうっかり息子に渡しそこねたとき、息子は「どうしてそのくらい覚えていられないんだ、おまえは」と不機嫌な顔で言った。その言い方が夫に似ていて、一瞬、ひるんだが、「お母さんをおまえと呼んじゃダメ。あんたは私の夫じゃないんだから」とキツく叱った。息子は腑に落ちない表情だったという。
見当違いの話を息子にする夫
「娘が、あんたはお父さんじゃないんだからと弟をたしなめてくれましたが、それ以降もかなり乱暴な言葉を使って私に話すことがあるんです。『何度言ってもダメじゃん』とかね。夫の私への口癖みたいなものですが、すっかり口調まで同じで。そのたびに娘が怒っているけど、なかなか改まらない」あるときサトミさんは夫にそのことを伝えた。さすがの夫も反省するかと思いきや、息子を呼んで「お父さんがしていいことと、おまえがしていいこととは違う」という説得を始めた。
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それでも日常生活は止まらない。子どもたちの生活をすっかり変えるほどのことなのか、自分さえ時々我慢すればすむ話なのではないか、もっと大きなことが起こったときに決断した方がいいのではないかと、サトミさんは揺れ続けている。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

