画像提供:マイナビニュース「原動機付自転車」、略して「原付」と言えば誰でも知っている乗り物です。免許は16歳になれば筆記試験と実技講習だけで取得でき、自動車免許にも付帯されます。車両価格や燃費、税金などの維持費も安いため、趣味でバイクを楽しむ人以外にも通勤・通学や買い物の足として利用されてきました。
その原付はホンダ・ヤマハ・スズキの3メーカーから販売されていましたが、2025年10月末に生産を終了しています。新車は店頭の在庫だけで、そのほかは中古車しか選択肢がありません。それでは仕事や生活の足として原付を購入したいユーザーが困ってしまうため、2025年4月に追加されたのが「新基準原付」という新しい区分基準です。
「新基準原付」は規定の検討中に『原付免許で125ccも運転できるようになる』という噂が流れたせいか、その意味を誤解された方も多かったようです。この連載では、その「新基準原付」について解説します。
「新基準原付」は原付免許で乗れる125cc…ですが
生産が終了した50ccの原付(一種)に代わり、原付免許や普通自動車免許で乗れるバイクとして登場した「新基準原付」ですが、最も大きな特徴は、それまで“50cc以下”とされていたエンジンの排気量が“50cc超125cc以下”に拡大されたことです。
たしかに原付免許で125ccのバイクに乗れるようになったわけですが、これから免許を取得する初心者や、今まで50ccに乗っていたユーザーが2倍以上の排気量を持つエンジンのパワーを扱うのはあまりにも危険です。そのため「新基準原付」は排気量が125ccでも、最高出力を50cc原付並みの4.0Kw以下(約5.4馬力)に規制されています。
また、交通ルールも「30km/hの最高速度制限」や指定場所での「二段階右折」、「二人乗り禁止」など、従来の原付ルールがそのまま適用されます。
原付の生産終了は数年前から噂されていましたが、警察庁や有識者の間で新しい規定を検討している間に『排気量は125ccになるらしい』という情報が流れました。それが誤解されて『原付免許が125cに乗れる小型限定普通自動二輪免許に格上げされる』と勘違いする人もいたのですが、これは大きな間違いです。
原付免許で運転できるのは、従来の「50cc原付(一種)」か、排気量は125ccでも「新基準原付」として認証・登録されたバイクだけです。一般的な125ccクラス(原付二種)は今までどおり小型限定普通自動二輪以上の免許が必要で、原付免許で運転した場合は無免許運転になってしまいます。
具体的な「新基準原付」はどんなバイク?
すでにホンダからは2025年の冬に「Liteシリーズ」という4つの「新基準原付」が発売されています。見た目は既存の小型/原付二種モデル「スーパーカブ110/110PRO/クロスカブ」や「Dio110」と同じですが、エンジン出力を規制値以下に落とし、タンデムステップを廃して一人乗り仕様にするなどの仕様変更がされています。中でもスクーター型の「Dio110 Lite」は従来の50cc原付に近い24万円を切る価格に抑えられており、発売前の2025年10月に約6,000台の受注を記録しています。
ホンダ以外のメーカーでは、ヤマハも「JOG125」をベースとした「新基準原付」を2026年3月に発売する予定です。スズキは現時点(2026年1月)では公式発表はありませんが、「レッツ」や「アドレス」といったコスパのよい原付を提供してきたメーカーなので、期待している方も多いのではないでしょうか。
また従来の「原付一種」で規定されていた50ccという排気量は日本だけのガラパゴス規格でしたが、「新基準原付」の区分が追加されたことでグローバル基準の125ccになりました。それまで国内向け専用に50ccを造っていた各メーカーは、国内外で展開している125ccモデルを仕様変更することで生産コストも下げることができるはずです。
海外メーカーがすぐに参入してくることはないと思われますが、ベスパのようなネオレトロ系スクーターやMT車など、国産車とは違った魅力を持つモデルもたくさんあります。原付市場の盛り上がりによっては、輸入車を扱うディーラーが「新基準原付」に適合したモデルを発売する可能性もゼロではないでしょう。
「新基準原付」のメリットとデメリット
一般的な125ccバイクの出力は6.0〜9.0kW(約8〜12馬力)ですが、「新基準原付」では50cc相当の4.0Kw以下(約5.4馬力)にダウンします。車体は50ccより大きくて重い125ccモデルをベースにしているので、『50ccよりも遅くなるのではないか?』と思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、「出力(パワー/馬力)」は最高速度に影響するものであり、力強さや瞬発力を生み出す「トルク」は規制されていません。排気量が大きいほどトルクの恩恵を受けるため、スタートや坂道の加速でもモタつくことはないでしょう。また、トルク型は常用回転数を低く抑えられるため、エンジンの寿命が延びることも期待できます。
車体のサイズは50ccより一回り大きく重くなりますが、大径タイヤと長いホイールベースや、ストローク量の増えたサスペンションは走行時の安定性や乗り心地に大きく貢献します。大柄で体重の重い男性の場合、従来の小さな50ccより格段に快適なはずです。
ただし、この車格の大きさはデメリットにもなります。男性なら気にならないレベルですが、女性や高齢者の場合、駐輪場での押し引きやスタンドがけで苦労する人もいるでしょう。メーカーもできるだけ車体の軽量化をするはずですが、それでも50ccと同等にするのは難しいと思われます。
また、それまでの50cc原付で使っていた駐輪スペースが小さい場合、車体が枠からはみ出るかもしれません。特に都市部では集合住宅のほか、駅や商業施設などの駐輪場は狭いため、50ccと125ccで駐輪場所を区分けしているところもあります。「新基準原付」が従来の50ccと同じ「原付(一種)」に区分されるとしても、ほかの利用者とトラブルにならないように考慮した方がよいでしょう。
○次回:なぜ50ccの原付は生産できなくなったのか?
「新基準原付」の登場で、新車の原付(一種)を買えなくなるという危機は脱しましたが、なぜメーカーは今までの50cc原付の生産を終了したのでしょうか? 次回はこの理由を解説します。
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら(津原リョウ)