【木村和久連載】「ジャンボ尾崎さん、さようなら」 昭和・平成ゴルフの終焉――ゴルフは新たな時代へ

0

2026年01月25日 06:50  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆最終回

 昨年の暮れ、ジャンボ尾崎さん(尾崎将司)が亡くなられました。

 まさしく、巨星墜つ――。世界に衝撃を与えましたね。これは、日本のゴルフ界において、ひとつの節目になるかもしれません。

 ということで、ジャンボさんの功績を顧みながら、今後のゴルフ界についても見ていきたいと思います。

(1)空前のゴルフブーム
 昔、ゴルフはお金持ちのスポーツでしたが、戦後、大衆化が進みます。1957年、霞ヶ関カンツリー倶楽部で開催されたカナダカップ(のちのワールドカップ)における日本チーム(中村寅吉、小野光一)の優勝を皮切りに、「和製ビッグ3」(河野高明、杉本英世、安田春雄)、「AON」(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)の活躍など、プロゴルフ界の役者もそろって空前のゴルフブームが巻き起こります。

 その最大の立役者がジャンボさん。ジャンボさんのJ'sブランドのゴルフクラブは150億円以上を売り上げ、トーナメントのテレビ中継は視聴率10%を軽く超えていました。ゴルフ人口も1000万人を超え、ゴルフコースの数も2000を超えていきます。

 バブル時代、ゴルフ会員権は投資の対象となり、4億円超えのコースが現れたほど。ある意味、日本経済がまるまるゴルフに乗っかっていたようなもので、ジャンボ尾崎大明神様々でした。

(2)ポスト・ジャンボ尾崎
 ジャンボ尾崎以降は、石川遼と松山英樹らが登場。待望の次世代スター誕生で、ゴルフブーム再来となったのですが、ジャンボさんほどの勢いはないんですよね。

 石川選手は史上最年少(15歳245日)でプロトーナメントを制し、松山選手はのちにジャンボさんすら果たせなかったマスターズ優勝という快挙を遂げています。個人の実績としては松山選手のほうがすごいのですが、時代の波に乗ったジャンボさんには敵いませんでした。

 そうなると、ジャンボ尾崎の次に時代の寵児になったのは、タイガー・ウッズと言えるでしょう。ただ、それは全世界的なもので、日本独自というわけではありません。

 その最中、2000年代へと突入し、日本のゴルフ界のマーケットが完全に変わる出来事が起こります。それが次。

(3)空前の女子ゴルフブーム
 宮里藍、横峯さくらの登場です。

 宮里選手が高校生で女子プロトーナメントを優勝して一世を風靡。さらに、宮里選手と同い年の横峯選手が小柄ながらとんでもない飛距離を出して、ツアーを席巻します。

 おかげで世の中では、娘をスポーツ選手にしたがっていたお父さん方が俄然、ジュニアゴルファー、すなわち我が娘の育成に燃え始めます。

 それはなぜか?

 当時の小学生でも、男子は野球やサッカーなど夢見るプロスポーツの選択肢はたくさんありました。一方で女子は、将来お金を稼ぐことができそうなスポーツって、フィギュアスケートなどほんの一部しかありませんでした。

 そうした状況にあって、横峯選手の父・良郎さんはいち早く女子ゴルフに目をつけて娘たちを指導。レッスンプロでも何でもない、ただのゴルフ好きのお父さんながら、娘たちをマイクロバスに乗せてキャラバン的な生活を送りつつ、彼女たちを立派なプロゴルファーに育て上げていきました。

 その姿を見て、あるいは聞きつけて「じゃあ、うちの娘もひょっとして......」と思った世のお父さん方がたくさんいたわけですな。その当時、坂田塾など、タイミングよくゴルファーの育成を狙った環境が整いつつあったのも大きかったのでしょう。

 そうして、ゴルフクラブのCMは「AON」から、藍ちゃんやさくらちゃんに代わっていきます。やがて、「黄金世代」と呼ばれる、宮里選手に憧れて育った女子プロゴルファーが大挙現れる、という状況が訪れたわけです。

(4)ジャンボ軍団女子部の躍進
 そんな時代にあって、今度は若手女子ゴルファーがこぞってジャンボ軍団入り。そこで育った選手たちがメキメキと頭角を現していきます。

 これは、どういうことなのか?

 まず、ジャンボさんがすごかったのは、ゴルフの集団指導体制を確立したことです。

 ゴルフの練習や鍛錬というのは、プロはほぼ個人でやります。とはいえ、その際にお金持ちのプロであればコーチを雇えますが、新人選手などはそうはいきません。

 そこで、ジャンボさんは自らが陣頭指揮を執って、みんなで教え合い、練習しようという環境を作ったのです。それが、ジャンボ軍団の誕生です。

 ただ、時が流れて男子ゴルフが低迷し始めると、次第にジャンボ軍団への入門者も減っていきます。そうしたなか、その噂を聞きつけたやる気のある女子選手たちがジャンボ軍団への入門を志願。当初、ジャンボ軍団には女子は入れない予定だったのですが、「女子のほうが(男子よりも)ガッツがあるから」と、ジャンボさん自身がそれを認めたそうです。

 当時、ジャンボさんは雑誌のインタビューで、「男子のほうが(ジャンボ軍団に)入りたい、というやつが少ない」と嘆いていたとか。昔のジャンボ軍団のイメージだと、ゆとりやZ世代の男子からすれば、「怖そうだから」と言って敬遠されていたのかもしれませんね。

 ともあれ、その結果、ジャンボ軍団から世界でも活躍する女子選手が次々に誕生していったわけです。そして、ツアー人気とともに、彼女たちのファンも急増していきます。

 実際のところ、ゴルフファンの8割は男性。つまり、昔「AON」やタイガー・ウッズを応援していたオジさんたちが今、女子ゴルフを応援しているんですね。

 男子も頑張っているんですが、松山選手と石川選手以外はキャラが弱いというか......。じゃあ、粒がそろっている女子のほうが応援のしがいがあると、ファンの大移動が起きたわけですな。

(5)スポ根からレジャーへ
 ジャンボさん全盛の頃のアマチュアゴルファーは、体育会系気質でした。シングルになろうとか、クラブ競技で活躍するとか、一緒にラウンドする仲間には負けないとか、"スポ根"ゴルフが大勢を占めていました。

 しかし今や、他人との勝負にこだわる人も減って、ゴルフをレジャーとして捉えている人が増えてきました。

 そういうなか、アマチュアゴルファーが参考にするのは、遠く及ばない男子プロより、自らの飛距離にわりと近い女子プロ。「自分よりヘッドスピードが劣るのに、なんで自分よりも飛ぶの?」といったことなど、女子プロゴルフのほうが見ていて、いろいろと参考になることが多いのです。

(6)ゴルフメディアの変化
 昔のゴルフメディアの記事は、ジャンボ尾崎一択でよかったのですが、現在は多彩なタレントがそろう女子ツアーが盛況。坂道系のアイドルがセンター争いを繰り広げるように、毎回優勝者が代わって、週替わりで新たなヒロインが誕生しています。しかも、世界レベルで活躍する選手もたくさん出てきています。

 そうなると、"推し活"文化が花盛りといったところ。だから、ゴルフメディアでは女子プロ選手たちの露出が増え、女子ゴルフ関連の企画が増えています。

 また、アマチュアゴルファーが自らゴルフを楽しむテーマや企画も増加。テレビでは、ゴルフのエンターテインメント番組が大流行りです。雑誌やYouTubeでもビギナーの増加によって、マナーやルールを語るコンテンツが多くなっていますね。

 とまあ、そんなわけで、長年お送りして参りました今連載の『お気楽ゴルフ』では、アマチュアゴルファーが主役で、気楽にプレーを楽しむことを主旨として執筆してきました。その目標は、どうやらそこそこ達成できたように思いますので、ここで一旦、連載はお休みとさせていただきます。

 またどこかで、アマチュア目線主体の話をさせていただければと思います。

 それでは皆さん、各々のゴルフライフの充実を目指して、お気楽にプレーしてください。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定