【2026年F1新車分析:メルセデス『W17』】スロット付きディフューザーでダウンフォースを追求

0

2026年02月02日 14:00  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

2026年型メルセデスF1マシン『W17』のスロット付きディフューザー
 スペイン・バルセロナでの2026年第1回F1プレシーズンテストが終了し、ウイリアムズ以外の10チームのニューマシンがコースデビューを済ませた。各チームのマシンはここから大きく変貌していくが、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、まずはシェイクダウン仕様のマシンを観察、分析した。今回はメルセデス『W17』にフォーカスする。

───────────────────────────

 シルバーストンで行われた最初のシェイクダウン走行において、メルセデスはディフューザー左右に2つのスリット(開口部)を備えた構造で周囲を驚かせた。

 メルセデスがディフューザー周辺に導入したこの空力的アイデアは、マシン両側に見える大きな側面開口部を特徴としている。厳密な意味での“ダブルディフューザー”ではないものの、このアーキテクチャはディフューザー内の膨張領域を制御することを狙ったものだ。

 この開口部の位置は、局所的な下向きの流れを生成し、ディフューザー外壁に沿って空気を誘導・整流する意図を示唆している。この高エネルギーの気流は、リヤタイヤの回転によって生じる乱流(一般に“リヤ・ホイール・スクワート”と呼ばれる現象)から、内部の気流を保護する役割を果たすと考えられる。


■ディフューザー内部の膨張を守る

 ディフューザー終端部では、気流はとりわけ不安定な状態にある。フロア下を超高速で流れた空気はすでに減速され、大きな圧力勾配にさらされて膨張中の状態にある。この段階の空気は、リヤタイヤから発生する乱流によって容易に乱されてしまう。この相互作用は膨張効率を低下させ、発生するダウンフォースを減少させる要因となる。

 メルセデスが考案した側面開口部は、より好ましい圧力分布と流れの方向性を生み出し、下図の青で示されるような空力的な防壁を形成して、タイヤ由来の乱流がディフューザー内部へ侵入するのを防ぐ狙いがある。つまり、ディフューザーの中核部への乱流侵入を抑える仮想的な壁を作り出そうとしているのだ。

 こうして生み出される流れは、ディフューザー内部の流れの一体性を維持するのに貢献し、車体下での膨張ポテンシャルを最大限に引き出すための重要な条件となる。


■メルセデスのアイデアは合法か

 この仮説は、メルセデスのサイドポンツーン形状の特徴とも一致する。大きくえぐられたアンダーカットは、この側面開口部へ大量の空気を導くために設計されたように見える。誘導された気流はディフューザーのスリットへと送り込まれ、外側壁およびトンネル上部の流れを活性化させる。

 では、この構造は合法なのだろうか?

 第一印象として、この側面開口部は、従来この領域で許容されてきたごく小さな開口範囲をはるかに超えているように見える。ただしその逃げ道としての解釈は、ディフューザーやフロア側壁を直接規定する条文ではなく、リヤブレーキダクトやディフレクターに関する規則との組み合わせで行えると考えているようだ。

 いずれにせよ、その後に発表されたフェラーリSF-26にも同様の解決策が採用されていることが、下の比較画像から確認できる。


■注目を集めるメルセデスの新エンジン

 W17は初走行から約200kmを走破した。これはフィルミングデーと称される特別なテスト走行で許される最大距離であり、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリが交代でステアリングを握った。

 この印象的かつ順調な滑り出しは、冬季テスト開始前から囁かれていたメルセデス本命説をさらに強めるものとなった。数カ月前からパドックでは、2026年規定向けに開発されているメルセデス製パワーユニットに関するポジティブな噂が広まっていた。

 特に昨シーズン終盤、一部ライバルメーカーが新しい圧縮比規定に対するメルセデスの解釈に不満を示したことで、これらの話題はさらに加速した。メルセデスによるこのレギュレーション解釈がもたらすエンジン性能により、コンマ数秒のアドバンテージが生まれる可能性がある、というのがライバルメーカーを含むパドックでの主張だ。

 トラブルなく最大走行距離を即座に達成したW17の初走行は、新レギュレーション時代に向けてメルセデスが極めて入念な準備を進めてきたという印象をさらに強めている。バルセロナテスト前の会合において、F1チームとFIAの間で、エンジンが高温状態にある際の圧縮比を測定する新たな方法について合意が成立したが、この手法が短期的に導入される可能性は低いと見られている。


■ライバル勢との鮮明なコントラスト

 2026年型マシンコースデビュー時の走行距離を他チームと比較すると、メルセデスの最初の順調さはなおさら際立つ。

 ワークス参戦初年度となるアウディは、R26で許可距離の約4分の1しか走行できず、信頼性を優先した極めて保守的なセットアップを選択した。レーシングブルズも、まずイモラでVCARB 03による15km限定のデモランを行い、その翌日にフィルミングデーをフルで実施する計画を立てた。キャデラックもまた、シルバーストンでの走行において割り当て距離を使い切らなかった。

 こうした状況の中、メルセデスが初日から最大限の走行距離を確保できた事実は、グリッド全体に向けた最初の“警告”と受け取ることができる。この好調な流れは、ワークスチームだけにとどまらない。メルセデスPUを初めて搭載したアルピーヌも、初走行で好印象を残した。ウエット路面と日照低下という厳しい条件にもかかわらず、アルピーヌは約140kmを走破したのだ。


■栄光復活の鍵は、2026年規約への対応力

 メルセデスは2025年にすでに採用していたプッシュロッド式フロントサスペンションをW17でも継続した。この方式は当時は少数派だったが、2026年に向けて主流になりつつある。

 同じ剛性でより軽量に仕上げられるこのシステムは、最低重量が770kgへ引き下げられた新規定への対応に有利であり、「1グラムたりとも無駄にしない」というチームの姿勢を象徴している。

 W17のノーズは、フロントウイングの第3エレメントに支柱で接続されており、フロアへ向けて空気を導く大きな通路を確保している。これは他の2026年型F1マシンにも共通する特徴だ。バージボード周辺では、規則に適合しながらも、インウォッシュではなくアップウォッシュを重視する設計が採用されており、リヤタイヤ後流の管理とディフューザーへの流れの最適化を狙っている。

 メルセデスがW17で再び黄金時代を築けるかどうかは、グラウンドエフェクト時代のマシンで最大性能を引き出し切れなかった過去を乗り越え、2026年の新レギュレーションにどう適応するかにかかっている。

 過去の失敗は、未来の成功を保証するものではない。しかしもしメルセデスが自らの課題から本当に学び、それをW17の設計に一貫性をもって反映できているのだとすれば、新時代に向けた非常に強固な技術的基盤を手にしている可能性がある。

 そして「非常に競争力が高い」と噂されるパワーユニットと組み合わされば、メルセデスは2026年レギュレーション導入と同時に、極めて危険な存在へと変貌するかもしれない。

[オートスポーツweb 2026年02月02日]

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定