
高市内閣の支持率は依然好調だ。
自民党衆院議員全員に贈ったカタログギフトについて「違法ではない」と強調した総理の説明に納得するかどうかについて、ほぼ世論が拮抗し、ほとんど支持率には影響がなかったと見られる。
石破総理の商品券問題は批判され謝罪に追い込まれたが、今回の問題と何が違うのか。
若者の支持率9割 自民党支持率も回復傾向2月28日、3月1日で実施したJNNの世論調査で高市内閣の支持率は、前回調査(1月31日、2月1日)と比べ1.9ポイント上昇し、71.8%となった。突然の衆議院解散への反発もあり、前回調査では7割を切った支持率だったが、今回再び7割台へと回復した。
若い世代の支持率も依然高く、「30代未満」では支持率90%に達した。一方で「60歳以上」では支持率は58%と落ち込む。「現役世代」に広く支持されている内閣だということが改めて分かる。
自民党の支持率も高市内閣発足後、回復傾向にある。
2025年の8月の石破内閣の自民党支持率は、自民党が政権に復帰した2012年以降で過去最低の20.4%まで落ち込んだ。今回は37.3%まで上昇している。「35%以上」に回復するのは2022年8月(岸田内閣)以来、3年半ぶりだ。
|
|
|
|
自民党支持率を年代別にみると、「30代未満」では37%、「60代以上」でも38%であり、世代間で差があまりみられない。なお「40代」が最も高く42%だった。
主要野党の支持率の傾向は、中道改革連合が前回から3.6ポイント下落して下降傾向、国民民主党も30代未満では自民党に次ぐ8%の支持率だが全体的には下降傾向である。衆院選で大幅な議席増となった参政党の支持率は横ばい。
一方、前回より3.0ポイント支持率が上昇したのがチームみらいだった。衆院選は11議席獲得し、当初、社会保障国民会議に野党で唯一、出席するなど存在感が増したことなどが考えられる。特に50代では自民党に次ぐ2番目に高い支持率(11%)だった。
2月24日、高市総理が衆議院の当選祝いとして自身を除く自民党議員315人全員に1人約3万円相当のカタログギフトを贈っていたことが判明した。
高市総理は「私自身、昭和の中小企業のおやじ社長的なところがあって自分の会社の社員に何らかのねぎらいの気持ちを示したいなと思った」「考えに考えに考えた挙げ句、大体結婚式のお祝儀だったら、これぐらいかなという金額でかなり例外的なことをした」などとカタログギフトを配った理由を説明した。
その中で、何度か強調したのは「自身が支部長を務める奈良県第2選挙区支部の政治資金からの支出であり、政党支部から議員個人への寄付として法令上も問題はない」ということだった。
|
|
|
|
政治資金規正法では政治家個人から他の候補者への金銭などの寄付は原則禁止だが、今回のように政党支部からの寄付は現状、認められている。(ただし2027年1月1日から政党や政党支部から政治家個人に寄付することは法律で全面的に禁止になる)
こうした総理の説明について納得できるかどうか4段階で聞いたところ、
「非常に納得できる」14%
「ある程度納得できる」31%
「あまり納得できない」28%
「全く納得できない」26%
で「納得できる」と「納得できない」はおおむね拮抗している。
こちらも年齢別に分析すると、「30代未満」は「納得できる」が64%、「納得できない」が35%、一方で「60歳以上」では「納得できる」27%、「納得できない」72%と、高齢層のほうが厳しい評価で、年齢別の内閣支持率と同じような傾向がみてとれる。
「石破総理の商品券」と「高市総理のカタログギフト」なにが違う?この件について野党から以下のような指摘が上がった。
・「法令上問題はなくとも、有権者の中には失望や戸惑いを感じている人もいる。自民党の古い慣習を刷新することを期待されている高市総理だからこそ、今回の対応についての説明と今後の姿勢が問われている(公明・竹谷とし子代表)
|
|
|
|
・「庶民感覚、国民の金銭感覚からはやはりかけ離れた行為だった」「やはり党支部であれば、名義は高市早苗ではなく自民党奈良県第2区総支部とすべき」(中道・小川淳也代表)
・「総理御自身の政治団体政党の支部等の政治資金の使い方として贈答品をやめていくことが、企業・団体献金を減らしていくことにつながる。政治にお金がかからない、文化をつくっていくということが必要である」(中道・落合貴之議員)
今回の件で思い出されるのは、ちょうど1年前の石破総理のケースだ。
石破総理が新人議員15人に10万円の商品券を渡し、多くの批判を受け謝罪に追い込まれた。新人議員全員が商品券を自主的に返却した。
石破総理は当時「会食のお土産代わりに、ご家族へのねぎらいなどの観点から、ポケットマネーで用意した」と話したうえで、政治活動に関する寄付ではないと主張し、法的に問題はないとの認識を示した。
一方、高市総理は個人ではなく政党支持部からの支出であり、個人が政治家個人へ行う金銭寄付を禁止する政治資金規正法には抵触しないと強調した。
両者の違いは「支出が個人か政党支部か」「商品券かカタログギフトか」「新人議員15人に10万円か、自民党全議員315人に3万円か」の主に3点で、ここに本質的な違いはなく両者ともに脱法的な行動である。「ねぎらい」の気持ちで渡したという2人の言い分は全く同じだった。
では、なぜ石破総理は大きな批判を浴び謝罪し、高市総理はそこまで批判を浴びないのか。
これは「イメージ」と「支持率」が影響している。
石破総理は元々、お金にクリーンなイメージがあった中で、商品券配布問題が発覚したことで大きな失望を招いた。さらに“仲間が少ない”石破総理が「新人を囲い込むためだったのでは」という印象もつきまとった。
一方、石破総理と同じく“飲み会嫌い”の高市総理がとった行動は、商品券と比べ換金性の低いカタログギフトという「物品」を、自民党議員「全員」に送ったことで、より批判の目を小さくした。やっていることに差はないものの、受ける印象が違った。
そして最大の両者の違いは「支持率」だ。
問題が発覚した当時の石破総理の支持率は38.4%(25年3月)でいまの高市総理の半分程度、商品券配布発覚後の支持率は30.6%(25年4月)と急落する。
一方、高市総理は問題発覚後も支持率は微増した。
本質的に問題なのは、政党支部の政治資金が事実上、支部長(ここでは高市総理)が自由に使える“ポケットマネー”になってしまっていることだ。しかも政治資金は所得税がかからない非課税で優遇されている。
政党支部の政治資金の原資は、政党交付金(原資は税金)のほか、企業や個人からの献金であり、本来は地元の政治活動のために使われるべきもの。それを身内へのプレゼントとして1000万円近く使っていいのかという政治家としてのモラルが問われている。「政治活動」の定義が極めて曖昧なことも問題だ。
総理は法律を「よく調べた上で対応した」と述べるなど、用意周到に脱法的な行為を行っている。総理という最も率先垂範しないといけない人物がこのような政治資金の使い方をすることは、若手・中堅の自民党議員に対して示しが付かない。
同時に「抜け穴」の多い政治資金規正法も野放しにしてはいけない。
TBS政治部・世論調査担当デスク室井祐作
【JNN世論調査の結果概要】
●高市内閣の支持率は71.8%(前回よりも1.9ポイント上昇)。不支持率は24.9%(前回より1.6ポイント下落)。
●政党支持率は、自民党37.3%(前回より2.6ポイント上昇)、日本維新の会3.8%(前回より0.1ポイント下落)、中道改革連合は4.9%(前回より3.6ポイント下落)、国民民主党3.5%(前回より1.6ポイント下落)、参政党は4.6%(前回より0.6ポイント上昇)、チームみらいは4.2%(前回より3.0ポイント上昇)
●衆院選の結果について「与党がもっと議席を取るべきだった」7%、「野党がもっと議席を取るべきだった」50%、「ちょうど良い」36%
●今後食料品の消費税について「2年間に限りゼロにする」28%、「恒久的にゼロにする」39%、「減税すべきではない(増税すべき含む)」29%
●給付付き税額控除に賛同する野党にだけ参加を呼びかけた国民会議の進め方について「理解できる」35%、「理解できない」52%
●高市総理のカタログ問題について、高市総理の説明に「非常に納得できる」14%、「ある程度納得できる」31%、「あまり納得できない」28%、「全く納得できない」26%
●新年度予算案の審議の進め方について
「審議時間を短くして年度内に成立させるべき」54%
「年度をまたいでも例年並みの審議時間を確保すべき」42%
●中道改革連合の今後について
「再び立憲民主党と公明党に分かれるべき」42%
「参議院や地方議員も含めて完全合流すべき」23%
「衆議院だけ合流した今の形のままでいい」21%
●防衛装備品の輸出について
「条件をつけず輸出を全面的に解禁すべき」7%
「一定の条件や歯止めを設けた上で解禁すべき」33%
「今のルール通り殺傷能力をもたない防衛装備品に限って輸出すべき」41%
「殺傷能力の有無に限らず防衛装備品の輸出をやめるべき」16%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。2月28日(土)、3月1日(日)に全国18歳以上の男女2832人〔固定748人、携帯2084人〕に調査を行い、そのうち36.3%にあたる1028人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話428人、携帯600人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。
