【アストンマーティン・ホンダの現在地(2)】上海でわずかに進歩。1ミリの余裕もないAMR26は変わるのか

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2026年03月21日 17:30  AUTOSPORT web

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2026年F1第2戦中国GP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
 海外有識者が現地からお届けする、アストンマーティン・ホンダのF1活動を観察し、分析する連載コラム。

 2026年、アストンマーティンF1チームとホンダはワークスパートナーシップの下で参戦、新たな時代へと踏み出した。ホンダはパワーユニット(PU)マニュファクチャラーとしての活動を再開、チームは天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの獲得にも成功し、F1での成功を目指す上で強力な基礎を築いた形だ。しかし、今年一新された技術規則の下で、今のところアストンマーティン・ホンダは厳しい状況に陥っている。

 かつてF1チームでテクニカルディレクターの役割を担い、現在は解説者を務めるアンドリュー・ギャリソン氏が、アストンマーティン・ホンダの状況と動向を分析する。

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 2戦が終了し、バーレーンGPとサウジアラビアGPが中止となったことで、残りは20戦となった。かつて自分のマシンをコースに送り出していた頃、私はレースが中止されると本当にがっかりした。レース数が少なくなるということは、学ぶ機会が減り、新しいパーツを試す機会や、ライバルと競う機会も減るということであり、要するにカレンダーがフルで開催される場合よりも楽しみが少なくなるからだった。

 しかし時には、レースの中止がまさに天からの贈り物のような場合もある。それは、私の経験でいうと、自分でも最高とは言えない設計をしてしまったときのことだ(誰にでもあることであり、ただそれを認める度量がない者もいるというだけの話だ)。レースがなくなることで、突然、2〜3週間の余裕が生まれ、自分たちが犯したミスを修正し、新しいパーツを設計し、さらにはテストまで行うことができる(昔はシーズン中にテストもできた。良い時代だった……)。それによって、他チームへの遅れを早く取り戻すことができたのだ。


■ レース中止がもたらす救済

 もちろん、アストンマーティンとホンダにとっても、自分たちが作り出してしまった混乱を整理するための追加の時間が得られるのは、歓迎すべきことだ。ただし問題がある。新レギュレーションで導入された『ADUO』(『Additional Development Upgrade Opportunities(追加開発アップグレードの機会)』)を誰に適用するかをFIAが決めるのは、第6戦の後と定められているが、当初ではそれは5月初旬のマイアミGP後だったが、新たなカレンダーでは第6戦は6月初旬のモナコGPになる。今のレギュレーションの文言に従えば、適用が当初より5週間も遅れることになるわけだ。ダイナモでの時間と資金の追加を切実に必要としているマニュファクチャラーにとっては、由々しき事態である。

 エイドリアン・ニューウェイはメルボルンで、ADUOの早期適用を狙ってホンダの問題を大げさに訴えたようだが、それはほとんど聞き入れられなかったようで、FIAは直ちにホンダへADUOを認めるような兆候を示さなかった。ただ、FIAは、2レースの中止を考慮してADUOの最初の適用を早めることを検討しているようだ。それは理にかなった措置だと思う。

 それでも、成功のための追加手段が、ホンダとおそらくレッドブル・フォードやアウディに提供されるのは、5月末のカナダGP後になるだろう。もし中東のレースが中止されていなければ5月上旬だったため、予定より実に3週間遅れることになる。


■上海でも変わらぬアストンマーティン側の姿勢

 さて中国GPに目を向けよう。私の計算が正しければ、上海の週末においてAMR26・ホンダの2台は合計147周を走行し、ほぼ3回分のグランプリ距離を走破した。そしてメカニカルトラブルで止まったのは一度だけだった。それは、日曜日にランス・ストロールがリタイアし、セーフティカーを出した時のことだ。スプリントでは両ドライバーとも完走し、結果は17位と18位ではあったが、19周終了時点では、アレクサンダー・アルボンのウイリアムズからそれほど離されてはいなかった。これは進歩である。

 ご存じのとおり、本当に重要な日曜日の決勝では2台ともリタイアした。ストロールはバッテリー関連と疑われる問題でマシンが停止し、アロンソは振動によって手足の感覚を失い始めたため、賢明にもAMR26をクラッシュさせるよりはリタイアすることを選んだ。

 冷静に見れば、上海はチームにとって、わずか1週間前、メルボルンで経験した悪夢のような週末よりもはるかに良い結果をもたらしたようだ。つまり、これもまた一種の進歩である。物事が自分の思いどおりに進まないときには常に辛辣になるアロンソは、この信頼性向上は「人為的な方法」で達成されたものだと主張した。つまり高回転域を使えないなどの制限があったという意味だ。しかし、連戦の最中にトラブルを抱えているときには、そうした対処をするしかない。奇跡を期待することが不可能だったことを、アロンソも分かっていたはずだ。

 Sakuraやシルバーストンをよく知る古参から聞いた話では、ホンダの最初の本格的な対策は、同社のホームグランプリである鈴鹿で投入される見込みだという。そうだとすれば心強い。一方で、ニューウェイやシャシー側のチームが、ホンダのパワーユニットに、2、3センチでもいいからもう少しの余裕を与えるようなパッケージ変更を行っているという話は聞こえてこない。

 私はAMR26にV6エンジンが搭載された部分の接写写真をいくつか見たが、閉所恐怖症の人には、この写真は決して見ないことを強く勧める。というのも、1ミリの余裕もないほどにすべてが詰め込まれているからだ。もちろん、そのすべては空力性能のためである。エイドリアンにとって、エアロダイナミクスが唯一の神であり、絶対的な支配者なのだ。

 中国でも、ホンダは再びすべての批判を正面から受け止める形になり、アストンマーティンはパートナーに責任を押し付けるばかりで、現状における自らの責任を認めようとはしなかった。FIAから優遇措置を引き出すためのアピールなのだろうが、それでもアストンマーティンには、世界に向けてありのままの真実を語ってほしいと私は思う。こうした公開の場での“叩き”は、彼らにとって何の利益にもならないからだ。

 差し出がましいようだが、ひとつ言いたいことがある。ホンダはオーナーのローレンス・ストロール氏に対して、真のチーム代表を見つけて、ニューウェイには誰よりも得意とする仕事、つまりレーシングカーの設計と開発に専念させるよう、提言してみてはどうだろうか。私個人の考えにすぎないが……。

────────────────────────筆者アンドリュー・ギャリソンについて

 パドックでアンドリュー・ギャリソン(仮名)の姿を見逃すことはまずない。身長1メートル90センチ、体重120キロという巨躯を持つアイルランド出身のギャリソンは、モータースポーツ界で広く愛されるベテランであり、あらゆる仕事を経験し、あらゆる人物と仕事をしてきた。彼は、物事を分析するやり方に、きわめて独特なスタイルを持っている。ギャリソンにとって、物事は「正しい」か「間違っている」かのどちらかであり、その中間は存在しない。

 彼はレーシングカーについてあらゆることを語ることができる。なぜなら、実際にそれに関連するすべてを経験してきたからだ。10代のころからレーシングメカニックとして働き始めたギャリソンは、20歳になる前に見習いメカニックとしてF1の世界に足を踏み入れた。しかし、そのわずか2カ月後には、下位カテゴリーのレースでチーフメカニックを任され、チームトラックのドライバーも兼ねながら、地元のスーパーマーケットでサンドイッチを買い出しする係まで担当するようになった。

 やがて彼はチームのナンバーワン・メカニックに就任、実践的なアイデアが次々と採用されたことでデザインチームにも加わった。これが契機となり、やがて彼は、自身でシャシーを設計して出場する下位フォーミュラで活動するようになる。

 約10年間、自らのチームを運営し、他チームのエンジニアリングを手伝い、トップデザイナーたちの失敗も間近で見てきた後、ギャリソンはテクニカルディレクターとしてF1へ復帰。引退の時を迎えるまで、その職を務め続けた。

 声が大きく、歯に衣着せぬ物言いのギャリソンは、今もかつての部下たちに静かな畏怖の念を抱かせる存在だ。彼らの中には、いまやテクニカルディレクターやチーム代表になっている者もいるが、誰もが今もなお、ギャリソンに一目置いている。

 本人は新しいテクノロジーには少々ついていけなくなったと率直に認めているが、基礎に関する知識は深いため、今は、技術面だけでなく人間関係の問題についても語れる解説者として、高く評価されている。

[オートスポーツweb 2026年03月21日]

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