
韓国発のYouTubeドラマシリーズが今、“圧倒的な演技力”と“衝撃的な映像美”で世界を席巻しています。ドラマ「ON&OFF」──女性同士のオフィスラブを描いた作品で、繊細な感情表現、完成度の高い演出、そして主演俳優2人の演技力で口コミが急速に広がり、再生数はシリーズ累計770万再生を突破。韓国国内のみならず海外でも異例ともいえるムーブメントが起きており、この夏、日本でのファンミーティングも決定しています。今回はそんな話題作で主演を務める俳優、ハン・ジウ(한 지우)さんとチョ・ユン(조 윤)さん、そして同作の監督を手掛けるSukfilm代表のインタビューを前編・後編でお届けします。
ドラマ「ON&OFF」は、仕事を完璧にこなす冷徹な上司、クォン・セア(演:ハン・ジウさん)とウブな新入社員、イ・ハユン(演:チョ・ユンさん)が、オフィスを舞台に関係を築いていく過程を描いた作品。女性同士の繊細な感情を軸にした物語構成とリアリティのある職場環境が相まって、他の作品とは一線を画す魅力を放っています。
本作はYouTubeをプラットフォームにショートドラマ形式で配信されており、1シーズンは約45分〜1時間程度と、気軽に視聴できる点も特徴の一つです。
同じ職場の上司と部下という関係の2人は、常に周囲の視線を意識せざるを得ない状況。そのため、勤務中は徹底して感情を隠す「ONモード」、2人きりの時間には素直な姿を見せる「OFFモード」という関係設定が、作品の大きな軸となっています。
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season1では、「ONモード」に重きを置く2人が、互いに簡単には近づけず、「すれ違い」を重ねていく過程が中心に描かれました。season2では、感情の変化の中で生まれた「嫉妬」と「本音」が、より深く掘り下げられています。そして2026年3月現在展開中のseason3では、2人の関係を揺るがす複雑な葛藤と2つの危機が物語の主軸となっています。
ドラマ「ON&OFF」の最大の強みは、何といっても俳優たちの没入感あふれる演技にあります。
特に主演を務めるハン・ジウさんとチョ・ユンさんは、キャラクターの感情を立体的に表現しながら、作品の軸をしっかりと支えていると高く評価されています。二人の息の合った演技は、韓国のみならず、世界中の視聴者に深い印象を残しています。
メンバーシップ限定で公開されているUncut Versionでは、セアとハユンの感情の流れがより深く描かれており、人物同士の関係性や空気感を繊細に映し出す演出が際立っています。
視線の動きや手のしぐさ、距離感といった細かな表現が各シーンの完成度を押し上げており、視聴者からは「沼すぎ」「この作品から得られる幸せ感が大好き」「ホンマに、ONnOFFクオリティ高すぎる。これ、webドラマやで? 凄すぎん?」といった反応が寄せられています。
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さらに人気を後押ししたのが、主演を務めた2人の俳優の個性とケミストリー。
バリキャリ鬼上司を演じるハン・ジウさんは、劇中のイメージとは対照的に、実際には温かく思いやりのある性格で、ファンと積極的に交流する姿が知られ、好感を集めています。
一方、社会人になったばかりのキャラクターを演じるチョ・ユンさんも、エネルギッシュで前向きな性格に加え、誠実で謙虚な姿勢が支持を集めています。
そうした本作と俳優たちの人気の高まりを受け、SNSでは作品を紹介するファンが世界各国で増加。それをきっかけに「GL(ガールズラブ)作品を初めて見た」という声も次々と上がるなど、間口が狭いと言われてきたWebGLドラマというテーマの常識を覆した作品──それが「ON&OFF」です。
かくいう筆者もGL作品を見た経験はパク・チャヌク監督の映画「お嬢さん(原題:아가씨)」を見たことがある程度で、そもそもジャンル自体に詳しくありません。しかし、偶然「ON&OFF」シリーズを知る機会を得て、1話を視聴した瞬間に「これはただ事ではない、本気の芝居が詰まった作品だ……!」と衝撃を受けました。
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筆者はWebドラマの制作に携わった経験を持ちますが、Webドラマと言えば予算が厳しく、撮影はタイトで、現場が疲弊している──そんな印象がありました。しかし本作では俳優たちが生き生きと演技する様子がビハインド映像で確認できたほか、監督をはじめ、非常にチームの雰囲気がよく、「なぜこんなに素敵な作品が生まれたのか──」と、猛烈に気になりました。
そこで今回、『記者の目』を通してドラマ「ON&OFF」のヒットの理由を探るべく、本シリーズの制作を手がける「Sukfilm」に取材を申し込んだところ快諾をいただき、筆者は3月15日、はるばる韓国までやってきました。
取材場所は、本シリーズを撮影しているソウル特別市内のスタジオ。セアとハユンが暮らすあの家に足を踏み入れると、クォン・セア役のハン・ジウ(한 지우)さん、そしてイ・ハユン役のチョ・ユン(조 윤)さん、Sukfilm代表で本作の監督が出迎えてくださいました。ここからは主演のお二人と監督のインタビューをお届けします。
──Sukfilmとその制作作品の特徴について教えてください。
監督:Sukfilmは2021年4月に私が創業した制作会社です。最初はテレビで扱いにくい題材をテーマに率直で現実的な20〜30代の人物を描く話を作ってみたらどうかと考えていて、そういったことを自由にできるYouTubeをメインのフィールドに選びました。
初めの頃は出費が多く、黒字に転換できてからまだ1年も経っていませんが、今となっては必要な投資だったと思っています。本当に周りにいい人が多く、運よくここまで来られました。常に「普通ではダメだ」と思っているので、テレビでは描きづらい、少し刺激的な演出やサムネイルを取り入れているところが作品の特徴です。これまでの全ての作品に私が参加しています。
──「ON&OFF」シリーズはどのようなきっかけで企画が始まったのでしょうか。
監督:最初は特別な企画というよりは、チャンネルにアップロードする4部作のGLドラマの一つとして始まりました。ところが、視聴者の方々の反応が予想よりもはるかに熱く、その期待に応えたいという気持ちでseason2、そしてseason3まで続くことになりました。
──セアをハン・ジウさん、ハユンをチョ・ユンさんにキャスティングした決め手を教えてください。
監督:2人の俳優さんのビジュアルがキャラクターと合っていたからです。送ってくださったお芝居の映像もすごく良かったのでこの2人に決めました。
韓国には「Filmmaker Korea(필름메이커스)」という映像制作におけるマッチングプラットフォームがあり、時期は違いますが、お二人ともそのサイトを通じて出会いました。一般的なドラマだと出演者募集には500〜600人ほどの応募があるのですが、BL・GL作品は特殊ジャンルなので「ON&OFF」は200〜300人ほどの応募だったと思います。
少し面白かったのは、season2のゲストで登場するクァク・ヨヌというキャラクターに600〜700人ほどの応募があったことです。おそらくseason1の人気が高かったからだと思います。
──それぞれの役柄を演じるにあたり、俳優さんにとっての決め手はなんでしたか。
ハン・ジウさん:きっかけはオーディションでしたが、出演に対してはそこまで悩みませんでした。もちろんジャンルでドラマをご覧になる方もいらっしゃると思いますが、私は「ON&OFF」について、人と人とが愛し合う普遍的な物語だと捉えています。愛する対象が何であれ、「愛」という感情が中心にある物語であれば、それだけで十分に意味のある作品だと感じました。
チョ・ユンさん:ビハインド的なお話となりますが、実は「ON&OFF」以前にSukfilmの「トランクガール」というGL作品でオーディションに参加したことがあり、せっかくキャスティングのお話をいただいたのにスケジュールが合わなくて出演が叶わなかったんです。そして時間が経ってから、私のプロフィールを持っていてくださった監督から再び声をかけていただいたのが「ON&OFF」でした。2回もこうして声をかけていただいたのは運命だと思って確信を持って取り組むことになりました。
監督:ハン・ジウさんは「ON&OFF」を通じて初めて一緒に仕事をすることになりましたが、チョ・ユンさんは以前、弊社のBL作品『체크 남방을 입은 사내 “Checkered Shirt”』にミンジ役で出演した縁があり、改めてご連絡を差し上げることになりました。その時の演技が非常に印象に残っていたので。
──各シーズンの撮影期間はどの程度なのでしょうか。
監督:1回の撮影で2話分のエピソードを撮影することになっているので、4話構成のseason1は2回。8話構成のseason2と3は4回の撮影で撮り切りました。撮影は1日につき10〜11時間程度となるので、俳優さんとスタッフさんの都合に合わせてスケジュールを組む形です。
──監督が見て、セアとハユンは当初どのような女性像としてスタートしたのでしょうか 。
監督:セアは成功を納めた変わり者。外見は冷たそうで嫌な感じが出ているが、内面には傷もあって本当は温かい人。
ハユンはかわいくて愛嬌があって。ソフトに見えるけれど、内面は意外とメンタルが強い人に設定しました。ただこういったキャラクター紹介は私よりもファンの皆さんの方がはるかに上手なので(笑)。
一同:(笑)。
監督:season1では、セアとハユンの関係性の構造を見せることに集中し、seasonが進むにつれて2人の関係を内面的に深く見せたいと思うようになっていきましたね。
──俳優さんから見て、自身が演じた役を表現するとしたら、どのような人物でしょうか。
ハン・ジウさん:私が演じたセアは、初めて見ると、そばに置くには少し難しい人物のように感じられるかもしれません。言葉が鋭く、ときには相手を傷つけてしまうような行動を取ることもあるので、人によっては少し居心地の悪さを覚えるキャラクターだと思います。
ですが、私は演じながらずっと「セアはなぜこんなふうに行動するのだろう?」と考えていました。season1に登場する元恋人イ・ジュウォン(演:チャン・ソヨン/장 소영さん)から受けた傷によって、人と深い関係を結ぶことが難しくなってしまったのかもしれないですし、それだけ本気で愛していたからこそ、より深く傷ついたのではないかとも思いました。そうした意味で、セアを少し切なく感じる部分もありました。
もちろん、だからといって他人を傷つける行動が正当化されるとは思ってはいません。だからこそセアを表現するときは、表に見える姿だけでなく、その裏にある感情や理由まで含めて描こうとしました。
チョ・ユンさん:一言でハユンを表現してみると、愛することの前では限りなく率直で飾らない人だと思います。
──役柄と俳優本人で似ている点、異なる点はありますか。
ハン・ジウさん:セアという人物は、私とはほとんど正反対と言っていいキャラクターだったので、作り上げていく過程は難しく感じませんでした。自分とは違う人物だと考えたからこそ、普段の自分なら取らない行動、持っていない癖についてたくさん考え、その中からセアに合う要素を選びながら人物像を作っていったように思います。
似ている点があるとすれば、自分の仕事を愛しているところ。そして表現の仕方は違っても、誰かを愛するときにそれぞれのやり方で最善を尽くすという部分ではないかと思います。
チョ・ユンさん:ハユンと似ているところは、「愛する人の前では思うまま表現する」ところで、これは本当に似ているなと思います。それ以外の部分に関しては全部違います。
一同:(笑)。
チョ・ユンさん:ちなみにオンニ(ジウさん)とセアの似ているところは、冷たさの中に温かいところがあるところだと思います。セアは愛嬌が感じられないけど、オンニは自然な生活的な愛嬌があるところは違うところかなと。
ハン・ジウさん:ハユンは基本的に、「言うべきことはきちんと言う」芯の強い人物だと思います。一方で、実際のユニ(ユンさん)はいたずら好きで、周囲にポジティブなエネルギーを与える明るい人なので、ハユンとユニとの間には温度感や空気感のようなものに少し違いがあるように感じます。
もちろん、ハユンも前向きなエネルギーを持ったキャラクターではありますが、表現の仕方の「質感」が違う気がするんです。それでも私の目には、ハユンもユニもどちらも愛らしくてかわいらしく映っています。
──ユンさんは本当に(MBTIが)Eの方という感じがしますよね。
ハン・ジウさん:まさにその通りです(笑)。
チョ・ユンさん:(笑)。
──今では息ぴったりのお二人ですが、最初の撮影に入るまではどのようにお互いの信頼関係を築いていきましたか。
ハン・ジウさん:撮影前に十分な期間が用意できなかったのでユニとはオンラインミーティングで初めて会いました。今は撮影を一緒にやってきた期間があるので、自ずと信頼関係ができてきたと思います。
チョ・ユンさん:最初にリーディングをしてから撮影までの期間が短かったので、そこまで仲良くなれずに撮影に入ったんですが、今は長い間一緒に演じてくることができて、自ずと仲良くなって信頼関係ができたと思います。
──各シーズンにおいて、それぞれのキャラクターを準備する際にはどんなことを心がけましたか。
ハン・ジウさん:season1はセアという人が“そうせざるを得なかった性格的な理由”を見せたいと考えました。表向きは刺々しく見えますが、内面には傷や繊細な部分を抱えている人物なので、その質感を表現するために声のトーンを落としたり、体重も約2kg減量したりするなど、外見的な部分にまで細かく気を配りました。
season2では、ハユンに出会ったことでセアが本来持っていた柔らかさや温かさが自然ににじみ出るようにしたいと思っていました。恋人として少しずつ安定していく過程を、できるだけリアルにお見せしたかったんです。
season3では、時間が経過している分、お互いにより慣れ親しみ、距離が縮まった関係性を盛り込むことに重点を置きました。より自然で肩の力が抜けた“恋人らしい姿”をお見せできるよう努めています。
チョ・ユンさん:お話の中ではseason1から3までで3年という時間が経過しているのですが、実際の撮影では数カ月しか経過していないので、準備できることには限界もありました。
その分、ハユンだからこそできる行動、言葉を理解しようと気をつけたと思います。
──キスシーンをはじめ本当にお二人お芝居が自然で。視聴者が作品に入り込める演技が本作最大の魅力だと思うのですが、セアとハユンを演じるための「ON」と「OFF」はどのように切り替えていますか。
ハン・ジウさん:本当にシンプルな方法ですが、とてつもない集中をしようとします。相手の目を見ながら「なぜこの人を好きになるのだろう」「なぜこんな行動を取るのだろう」といった問いを自分に投げかけ続けて、感情を最後まで掘り下げようとしています。そうやって集中し続けていると、自然に感情が積み重なっていき、結果として良いシーンに繋がっていくのだと思います。
チョ・ユンさん:私も似ていますね。「私はこの人だ」と思い込んで、完全にその役柄になれば結局、初めて会った相手だとしても、スキンシップを取ることもそこまで難しくはないです。完全に思い込むこと自体は簡単ではないんですが、それも集中してやれば大丈夫です。
──「ON&OFF」といえばストーリーの展開も魅力的ですよね。お話はどのように作られているのでしょうか。
監督:撮影チームは私を含めて3人ほどの小規模なチームであり、2021年4月にチャンネルを初めて開設した時から共にしてきたチームです。脚本家はシリーズごとに異なる方と協業しています。私がコンセプトを練り、ライターさんが執筆したものを私がチェックするという形です。
──脚本家の選定についてはどのように行われましたか。
監督:先ほどお話しした「Filmmaker Korea(필름메이커스)」でリクエストを掲げていると、作家さんたちがレジュメを送ってくださるんです。その中から最も相性が良さそうな、成果物のできが良かった方を脚本家に選びました。
本記事は前編・後編の2部構成です。後編では、「俳優たちが選ぶベストシーン」「ハン・ジウさん、チョ・ユンさんが選ぶベストスキンシップシーン」「芝居や演技プランの狙い、役を演じて生じた変化」などをお届けします。撮り下ろし写真を含む後編記事は2026年3月22日 20時公開予定です。
(執筆・撮影:Kikka)
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