真飛聖は雑草魂で興味の扉こじ開ける 宝塚元トップ40代ラストイヤーに一人芝居挑戦

0

2026年03月29日 08:00  日刊スポーツ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊スポーツ

舞台「ガールズ&ボーイズ」で一人芝居に挑戦する真飛聖(撮影・千葉一成)

宝塚歌劇団元花組トップスターで、映画、ドラマ、バラエティーと幅広い活動を続ける真飛聖(49)。40代ラストイヤーの節目に、舞台「ガールズ&ボーイズ」(4月9日から、東京・新国立劇場)で一人芝居に初挑戦する。宝塚初舞台から30年。好きのパワーと、自称“雑草魂”で、あらゆる扉をこじ開けてきた。【梅田恵子】


★マトブに最高プレゼント


誰にでも回ってくるわけではない一人芝居のチャンス。心境を聞くと「そんな大事件が起こるとは思いもしないマトブの人生でした」と豪快に笑う。


「みんな『よく受けたね』とか『こわっ』とか言うんですけど(笑い)、最後には『役者として最高だね』って。私もそう思います。出会いがなければできない挑戦で、よくぞマトブを見つけてくださった」。宝塚時代もソロのシーンは多くあり、「それが長くなったと思えば」とシンプルに構える。「今年50になりますが、まだまだ初めてのことがあるって幸せなこと。マトブの人生に最高のプレゼントだと思って、私を選んでくださった方々を信じて臨むだけです」。


作品は18年に英ロンドンで初演され、米ブロードウェーでも上演された話題作。妻となり、母となり、仕事をつかんで自己実現していく主人公「わたし」の人生が予期せぬ形で崩れ、社会に潜むさまざまなゆがみが浮き彫りになっていく。女性心理があけすけに飛び出すせりふの妙味も見どころ。受け手はあたかもグループカウンセリングの場に立ち会ったような当事者感覚に引き込まれていく。


「台本を読んで、やらない理由が見つからなかった。普段はほかの登場人物も含めて客観的に読むのですが、自分が物語の中で生きているという感触を覚えたのは初めての経験でした。つらいことも待ち受けていますが、どこか寄り添える距離感、近さを感じて、自分の中でフィットしたんだと思います」


★主人公と自身とが重なる


特に主人公がやりたい仕事を全力で取りに行く姿は自身と重なるという。「どんな立場でもいいから突破口を見つけてそこに入りたいという気持ちや、そうやって本気にならないとたどり着けない夢のリアルは、宝塚の経験上、私にも分かるので」。


★宝塚受験1度落ちて火が


宝塚歌劇団は中学3年の時に同級生の勧めで目指した。幼い頃から打ち込んだバレエを生かせる世界でもある。「宝塚を見たこともないのに受験を決めてしまった。後で舞台を見て、自分の無謀さに引きましたね(笑い)。1回落ちたことで悔しくなって、私はここに入りたいんだと、本気に火が付きました」。95年に入団(81期)し、星組に配属。05年に花組に組替えとなり、2年後にトップスターに就任した。


金髪の主人公が主流だった中、黒髪のオールバックでスーツを着こなすような濃いダンディズムで一時代を築いた。唯一無二といわれた男役像は、コンプレックスの中から生み出したものだ。


★自分だけの男役像を模索


「素顔が男っぽくなくて、色も白いから柔らかく見えるんです。当時男役はシュッとしてキリッとしているのがかっこいいという時代でしたが、この顔が全然シュッとならない(笑い)。自分は向いていないのかな、っていう挫折も」。好きなものを続けたい一心で、もみあげや眉毛など男役メークを徹底的に研究し、自分だけの男役像を探したという。「素顔がコレでも化粧をしたらこうなります、というビフォーアフターを楽しんでもらえる男役を目指したら、また男役が面白くなって」。


★学級委員?に「違いますぅ」


星組から花組への組替えも、「好き」のパワーで乗り越えた。「当時の星組はひまわりというか、はだしで大地を駆けているようなイメージで、花組は深紅のバラをちりばめたガラスの上を歩くような、繊細で美しいイメージ。私が花組? って笑っちゃうくらいの驚きでしたが、倍の友だちができて、何十通りの男役を見ることができるのは幸せなことだと」。


飾らないハートで信頼関係を築き、組をまとめた名トップとしても知られる。「実力はすぐバレるので、かっこつけるのやめようと。情けなさや、転んでいるところも見せていく。私こんなだけど、頑張るからついてきてって」。サヨナラ公演(11年4月)は東日本大震災のチャリティー公演として実施されている。公演期間中、仲間とロビーに立ち、募金活動を率いたのもこの人らしい。


卓抜したリーダーシップに「中高では学級委員でしたか」と聞くと「全然違いますぅ」とちゃめっ気たっぷりに笑う。「人をまとめたり士気を上げるのは得意ですが、子どもの頃から元気だけが取りえのわんぱく坊やで、学級委員は無理。兄は優しくて顔もかわいくて、周りから『かわいい』と言われて育ったのに、私は1度も言われたことがない。今でも根に持っています(笑い)」。


★好きがあれば強くなれる


多くの元トップが卒業後も舞台を中心にフィールドを築いていく中、映画、ドラマなど映像作品メインで活動してきた。「ミッドナイトスワン」のバレエの先生、「相棒」の甲斐享のパートナー、「その女、ジルバ」の物流倉庫スタッフなど、見る人によってさまざまな印象を残す。


「大好きな宝塚を卒業して、私の好きなものは何だろうと考えた時、それがテレビだった。もともとテレビっ子で、宝塚時代もテレビを見ることが一番のリセット時間だったので飛び込んでみようと」。先頃まで「ぽかぽか」(フジテレビ系)金曜レギュラーも務め、バラエティーにも進出。「まだまだ知らないこと、できないことがいっぱいあることが面白いんです。興味に対して欲張りで、食いしん坊。根っからの雑草魂なので」と目を輝かせる。


初舞台から30周年だった昨年、卒業後初ライブを行った。離れていた「歌」で、新たな気付きもあった。「喜んでくださるお客さまがたくさんいて、私も幸せを感じた。エンタメとして自分がお届けできる何かがあるならば、怖がらずにやった方がいいんだなって」。30年を振り返り「好きでいることのありがたさを感じる30年。好きがあれば、何倍、何十倍にも強くなれる。好きの偉大さですよね」。


40代ラストイヤー。「一人芝居という形で、自分の原点である舞台に向き合う時間をいただけたので、ちゃんと面白がれる1年にしたい」と話す。面白がりながら、何歳まで役者業を続けるのか聞いてみた。「生きている限り面白がってるんじゃないですか? あはは。こうやって死ぬまで笑っている気がします」。


▼「ガールズ&ボーイズ」演出の稲葉賀恵氏


お客さまに語りかけて味方にしていくような戯曲の世界を最初から完全に理解していて驚愕(きょうがく)でした。ある日のけいこでは、せりふの後に「思わない?」って軽々と足してきて、その場にいた全員が「思います」とうなずいてしまう空気に(笑い)。思わず笑っちゃうと「笑わないで聞いてもらっていい?」。キャラクターの表現力がハンパない。舞台に立つ者の覚悟と、見る人の心を一瞬でつかむ“愛され力”のすべてを軽々とクリアしていて、宝塚で培ったものと、ご本人のスペシャルな愛嬌(あいきょう)の力を実感します。


◆真飛聖(まとぶ・せい)


1976年(昭51)10月13日、神奈川県生まれ。95年、宝塚歌劇団に入団し、星組に配属。05年、花組に組替えとなり、07年にトップスター就任。11年に退団後、舞台、映画、ドラマなど幅広く活躍。主な出演に、映画「レンタル・ファミリー」「ミッドナイトスワン」、ドラマ「相棒」「その女、ジルバ」「DOPE 麻薬取締部特捜課」など。身長167センチ。

    ランキングエンタメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定