十三代目片岡仁左衛門(C)彼方舎 長編ドキュメンタリー映画『歌舞伎役者 十三代目片岡仁左衛門』(製作年:1992〜1994年、全6巻)が、5月16日から6月12日までの期間、全国の映画館で上映されることが決定した。十三代目片岡仁左衛門の三十三回忌と、監督を務めた羽田澄子の生誕100年を記念した特集上映となる。
【動画】映画『国宝』本予告 本作は、十五代目(当代)片岡仁左衛門の父であり、昭和後期から平成初期にかけて歌舞伎界を支えた名優・十三代目片岡仁左衛門丈の84歳から90歳までの姿を追ったドキュメンタリー映画。全6巻・計10時間46分におよぶ規格外の長編で、羽田監督が自由工房とともに製作した。
その長尺ゆえに上映機会は限られ、ソフト化や配信もされていないことから“伝説の作品”として語り継がれてきた。全巻上映は2018年、フランス・パリで開催された文化事業「ジャポニスム2018」以来で、国内の映画館での上映は17年ぶりとなる。
劇中では『寿曽我対面』『菅原伝授手習鑑』『恋飛脚大和往来』、そして最後の舞台となった『八陣守護城』などの貴重な舞台映像に加え、稽古風景や芸談も収録。芸に生涯を捧げた名優の姿と、その“品格”を余すことなく映し出している。
また、大ヒット中の映画『国宝』の原作者である作家・吉田修一氏が、本作を鑑賞し、小説執筆の参考にしたことも明かされている。吉田氏は羽田監督に宛てたメールで、稽古風景の臨場感や、視覚に頼らない世界の豊かさに深い感銘を受けたとつづっている。
上映は期間ごとに巻ごとに分けて実施され、最終週には全6作品を日替わりで上映。歌舞伎ファンはもちろん、映画『国宝』や『木挽町のあだ討ち』など歌舞伎を題材にした作品をきっかけに興味を持った観客にとっても、貴重な鑑賞機会となりそうだ。
吉田氏が羽田監督へ送ったメールは次のとおり。
羽田澄子様
この度は貴重な映像を貸していただき、心から感謝しております。
じっくりと撮影された稽古風景など、まるでその場で見学しているような臨場感でした。
実は、現在執筆中の「国宝」という作品にも目が不自由になる役者が登場しておりまして、とても参考になりました。「歌舞伎役者片岡仁左衛門」の中に映し出されていた、暖簾を揺らす風、嵯峨野の庭先で鳴くひぐらしの声、風鈴の音……きっとあれが目が不自由になった仁左衛門さんに見えていた美しい世界の姿なのだと思います。盲目の方が知る世界は暗黒ではなく、そこには三味線や鼓の音があり、鳥が鳴き、心地よい風が見える場所なのだろうと思います。
本当にありがとうございました。
吉田修一 拝
■上映スケジュール
5月16日〜5月22日:第1巻『若鮎の巻』(102分)/第2巻『人と芸の巻 上』(94分)
5月23日〜5月29日:第3巻『人と芸の巻 中』(101分)/第4巻『人と芸の巻 下』 (105分)
5月30日〜6月5日:第5巻『孫右衛門の巻』(86分)/第6巻『登仙の巻』(158分)
6月6日〜6月12日:上記全6作品を日替わり上映