フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパに参戦する中村紀庵ベルタ 日本人の母とスロバキア人の父のもとに生まれ、幼少期からイギリスへ拠点を移してレースキャリアを歩み、FIA-F4を経て今季はFIAフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権(FIA FREC)へシリーズ参戦。開幕のレッドブルリンクでは初優勝も飾った中村紀庵ベルタに、彼自身やアカデミーのことについて聞いた。
──日本人の血が流れる中村選手ですが、これまでその生活や活動をイギリスを拠点にして進めてこられたと聞いています。日本のファンへあなたのことについて教えていただけますか?中村紀庵ベルタ(以下中村):僕はイギリスで生まれ、千葉県の松戸市で幼少期に約6年間育ちました。その後家族でイギリスに再び移住し、それ以来イギリス在住です。今年はウイリアムズF1ドライバーアカデミーのサポートを受けて、プレマ・レーシングからフォーミュラ・リージョナルに参戦しています。
僕のレーシングキャリアのためにも英語を学ぶべく『イギリスで育つ方が良い』との母の考えで、イギリスへ一家で移住をしたのですが、それはとても良い判断だったと思います。しかし、イギリスでの生活は日本とはまったく違う経験で文化も違い、日本での生活が恋しい時もあるので、毎年帰省しています。
──もともとはアルピーヌの育成ドライバーだったあなたが、今季はウイリアムズの育成プログラムに加わった経緯を教えてください。中村:2023年にプレマと初めて契約し、イタリアとヨーロッパでFIA-F4に参戦しました。2024年にはアルピーヌF1アカデミーに所属して両FIA-F4に継続参戦していましたが、2025年にはアルピーヌを離れ、今季はウイリアムズF1アカデミーに加入しました。ウイリアムズとの育成プログラムの内容について話し合いをする中で、展望や希望などが一致したために、最終的にアルピーヌを離脱し、ウイリアムズのサポートを得てレーシングドライバーとしての研鑽を積む機会を得て、今季のFIA FRECの開幕を迎えました。
──FIA-F4とフォーミュラ・リージョナルとでは、ひと段階ステップアップした車両やレースとなるかと思いますが、違いを教えてください。中村:FIA-F4とリージョナルを比べると、リージョナルの方がエンジンのポテンシャルが強力でダウンフォースも少し大きいですし、レースのレベルもF4よりもさらに高くなり、コンペティティブになりました。特に感じるのはやはりタイヤのグリップレベルとエンジンですね。
FIA-F4の時とは違ったチームやドライバーたちと競うことになりますし、サーキットも違います。僕にとっての初めての経験となるサーキットを走るので、困難なことも出てくるかもしれませんが、そのチャレンジをとても楽しみにしていますし、ワクワクしています。
──ところで、ウイリアムズF1のドライバーアカデミーのシャツを着た男性がレースに帯同されていますが、彼はどんなサポートをしてくれているのでしょうか? また、レースウイーク以外にはどのようなプログラムで日々のサポートを受けておられるのでしょうか?中村:サーキットではセッション前の準備など、現場で僕がレースに集中できるような環境をつくり、サポートしてくれています。ウイリアムズF1アカデミーでは、レースウイーク以外のサポートも非常に良く、精神的なサポートだけではなく、私が日頃のトレーニングや食事面などですべてが正しく行っているかどうかということを確認し、指導していただいています。
メンタルサポートも充実していて、メンタルコーチや栄養士と一緒にすべてのドライバーをサポートしてくれてとても心強く感じています。僕たち育成ドライバーが、フィジカル、メンタル、健康や栄養面で万全な準備を日頃から包括的にサポートをする体制が整っています。
育成ドライバーが参戦するカテゴリに合わせて、個々に合った準備を整えてくれていて、ステップアップとなる次のカテゴリーで活躍できる準備ができているかを確認するために身体能力テストも行います。なぜなら、育成ドライバーとして現在参戦中のレースに集中しながらも、常に次のカテゴリに飛び込めるように準備しておくことが目標だからです。
ウイリアムズのようなしっかりと育成プログラムが確立されているチームに所属し、プロフェッショナルな専門家たちに囲まれ環境で、レーシングドライバーへ成長するための準備のすべてを教示し、整えて指導してくださるので、育成ドライバーのひとりとしてF1チームの一員であることに大きな自信を持つことができています。
──現在18歳ですが、イギリスでは高校生なのでしょうか?中村:日本とイギリスでは少し学校のシステムが違うのですが、日本で言えば高校生の年齢で、来年に大学生になる年齢です。レーシングドライバーとしてのキャリアを積むと同時に、大学への進学を希望しています。
レーシングドライバーという職業は一般の生活とはまったく違うので、もしも大学進学が叶うのならば両方を経験できるのは素晴らしいことですし、レーシングドライバーになる上でさまざまな知性や教養は必要と考えています。そして、大学へ進学することは母の願いでもあります。
[オートスポーツweb 2026年04月30日]