
毎年バルセロナで開催されるMWC(Mobile World Congress)は、世界中のスマートフォンメーカーが最新技術を展示、競い合う場だ。MWC Barcelona 2026でも数多くの新製品や新技術が披露されたが、カメラ周りのトレンドを眺めていると、業界全体がある1つの方向へ向かっていることに気づいた。それは「スペックの追求」から「撮影体験の進化」へのシフトだった。
●カメラメーカーとのコラボや外付けレンズでの機能拡張が進む
大手メーカーの動きを見ると、その傾向は特に顕著だ。Xiaomiはライカとのコラボレーションをさらに深化させ、「Leitzphone powered by Xiaomi」という、ライカブランドを前面に打ち出した新機種を投入してきた。かつては日本のソフトバンクでのみ販売していた「ライカのスマホ」が新たなパートナーと共についにグローバル向けにも投入される。
ライカ創業者のエルンスト・ライツの名を冠したこの端末には、カメラレンズのような回転式リングダイヤルが搭載されており、専用のフレーム設計やデザインなどをはじめ、ハードウェアレベルでの共同設計がうかがえる仕上がりだった。ソフトウェアでも専用テーマやフォント、ライカのカメラの写りを再現するフィルターが用意される。
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カメラのハードウェアは同時にグローバル展開されたXiaomi 17 Ultraと共通している。ダイナミックレンジを拡張させた新しい1型センサーを採用したメインカメラ。2億画素の望遠カメラにLeica APOの光学基準を持つ75〜100mm光学ズームを搭載しており、望遠性能への本気度が伝わってくる。
Huaweiは最新のMate 80シリーズを展示。このうちMWC直前に発表された「Mate 80 Pro」のグローバル版に注目が集まった。グローバル版はEMUI15を採用し、Androidアプリが動作する。カメラ面ではXMAGEによるチューニングが特徴で、従来のイメージングと最新のAI処理を融合させた新しい体験が可能と説明された。本機種はアクセサリーメーカーのTILTAとコラボしたカメラグリップ、外付け望遠レンズを用意しているが、会場内での展示はなかった。
外付けレンズによる撮影体験の拡張という路線では、vivoのアプローチが会場で目を引いた。今回のMWCで初お披露目されたvivo X300 Ultraには、ZeissとのAPO光学基準で共同設計された400mm相当の外付けテレコンバーター「vivo Zeiss Telephoto Extender Gen 2 Ultra」が用意されており、ビデオ向けのSmallRig製カメラケージと合わせた本格的な撮影システムを提案していた。このレンズはデジタルクロップと組み合わせると1600mm超望遠相当の撮影も可能だという。
vivoは長らくカメラ強化のラグシップモデルを中国以外で投入しておらず、今回のvivo X300 Ultraは4年ぶりにグローバル市場向けの投入を公表した。特に「Ultra」を冠するグレードの投入は初となるので、Xiaomi 17 Ultraと並ぶライバルになりそうだ。
OPPOはブース展示こそなかったものの、MediaTekブースにてFind X9 Proにテレコンバーターレンズを装着しての望遠撮影を体験できた。
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また、次世代フラグシップのFind X9 Ultraのグローバル展開をSNSで予告。こちらもカメラフラグシップを4年ぶりに中国以外でも展開する方針で、「Ultra」を冠する機種の展開は初めて。ハッセルブラッド協業による高性能なカメラシステムを世界市場に持ち込む姿勢を示した。
Honorは、フラグシップのMagic 8 Pro向けにアクセサリーメーカーのTelesineと組んだ外付けレンズキットを展示。専用グリップと200mm相当のテレコンバーターを組み合わせることで、一眼カメラに近いズーム体験を実現するアクセサリーエコシステムを展示した。
動画撮影への注力も2026年の大きなテーマだった。サムスンはMWC直前のGalaxy Unpackedで話題になったGalaxy S26シリーズの「Horizon Lock」(日本向け:水平ロック)機能を会場でもアピール。ソフトウェアによる水平ロック機能で、360度回転させても水平が保たれる動画が撮れるという、ジンバル不要の安定化を実現している。
Honorはさらに攻めた展示を見せた。「Robot Phone」と呼ばれる端末には2億画素センサーを搭載した4Dof(4自由度)ジンバルシステムが内蔵されており、AIが被写体を追跡しながら自動でカメラが動く。音楽に合わせてカメラが揺れる様子はなかなかシュールではあったが、独自性もあって会場には終日人だかりができていた。
●撮影体験の差別化で工夫を凝らす中堅勢にも注目
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一方で、中小メーカーの動きも面白い。ミッドレンジ帯を主戦場とするTECNOは、新機種の「CAMON 50 Ultra 5G」を引っ提げてMWCに乗り込んできた。評価機関のDXOMARKの協力を仰ぎ(※)、600ドル以下のスマートフォンとして最高スコアとなる146点を獲得。コスパ路線でも画質を追求していることを示した。
TECNOは撮影体験の向上に際し、カメラ性能を点数化し、ベンチマーク結果として公表するDXOMARKの協力を仰いだ。発表の場には同社CEO Fr?d?ric GUICHARD氏が登壇し、CAMON 50シリーズの画像処理で重視したポイントを説明した。
AI Auto ZoomをはじめとするAI技術をソフトウェア面で磨き上げ、ハードウェアの限界をカバーする発想は、コストの制約でハードウェアの強化が難しいことを踏まえると、理にかなっている。
その一方で、画像処理のノウハウで他社に劣る部分を、外部の評価機関から助言を得て改善させることは、ユーザー体験向上の近道ではあるものの、自社ブランディングを向上させる点ではマイナスに働くだろう。直近2世代で外部機関の協力を受けたので、そろそろ自社ブランディングやカメラブランドとの共創にも力を入れてほしいところだ。
また、TECNOでは磁力で最大10種類のモジュールを取り付けられるモジュール式スマートフォンのコンセプトも展示。3つ折りスマホや薄型スマホなどのコンセプトも多く展示するなど、将来への技術投資の姿勢はしかと感じられた。
さらにユニークな存在だったのがUlefoneだ。上位ブランドRugOneの新機種「Xsnap 7 Pro」は、Insta360 GOシリーズにインスパイアされた、取り外し可能なアクションカメラモジュールを内蔵した世界初のスマートフォンとして注目を集めた。
取り外したカメラはWi-Fi通信にて動作する。ヘルメットや自転車に取り付けて単体撮影ができ、本体に戻すと充電しながら撮影した映像の転送もできる仕組みだ。大手とは全く異なる路線で高付加価値を狙う姿勢に、したたかな生存戦略を感じた。
この他にもLAGINIOからは「アクションカメラ」にスマートフォンの機能を組み込んだ「Eagle 1」という商品も登場。こちらはコンパクトな本体に三脚用のネジ穴を用意するなど、スマートフォンよりもカメラに近い使い方を想定している。
メーカーもあくまでスマートフォンよりは「5G通信機能を備えたアクションカメラ」という立ち位置で、既存のスマートフォンとの2台持ちなども視野に入れているとした。
●カメラの性能だけでなく「撮影体験」を重視した製品が主流になるか
現地を歩いて感じたのは、カメラを巡る競争が「カタログの数値」から「撮影体験」へと明確に移行しつつある、ということだ。Xiaomiにはライカ、vivoにはZeiss、OPPOにはハッセルブラッドという具合に、大手各社がカメラの名門ブランドと組み、単なるスペックではなく「このメーカーで撮ると、こういう絵が出来上がる」というブランディングで撮影体験をアピールしていた。
アクセサリーのエコシステム充実も大きな流れで、スマホが「カメラシステムの中核」として機能し始めている様子は、スチルカメラを使ってきた身としても新鮮だった。XiaomiのPhotography Kitというアプローチに始まり、今ではvivo、OPPO、Huawei、HONORもアクセサリーメーカーと提携してカメラグリップなどの製品を用意している。
一方で、vivoやOPPOが注力する外付けのテレコンバーターレンズによる望遠性能向上は、スマートフォンで重要な可搬性とトレードオフの関係になる。画質はよくなっても、レンズが大きく持ち運びが面倒となれば、スマホカメラの最大の利点である「手軽さ」は失われる。
スマートフォンの限界を拡張させるアイテムとして、望遠レンズを組み合わせるカメラのような体験は面白いが、恒常的なトレンドになるかどうかは今後の動向や消費者ニーズ次第になるかと考える。
また、中堅メーカーはTECNOのようにAIを取り入れつつ、外部機関のアドバイスを受けて改善する、Ulefoneのように個性的なハードウェアで勝負するなど、大手勢とは異なる手法で撮影体験の向上を図った製品が印象的だった。
スマホのカメラはもはや単なる記録ツールではない。各社がどんな「撮る体験」を届けようとしているのか。その問いへの答えが、これからの製品選びの軸になっていくのだろうと、肌身で感じた取材だった。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
・X:https://twitter.com/Hayaponlog
・Webサイト:https://hayaponlog.com/
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