イーユン・リー『自然のものはただ育つ』がピューリッツァー賞受賞 二人の息子を自死で失った作家のノンフィクション

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2026年05月11日 06:00  リアルサウンド

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『自然のものはただ育つ』イーユン・リー(河出書房新社)

 イーユン・リーによる『Things in Nature Merely Grow』(Farrar, Straus and Giroux/2025年5月刊)、邦題『自然のものはただ育つ』(河出書房新社)が2026年ピューリッツァー賞、回想録・自伝部門を受賞した。


【画像】息子二人を自死で失った絶望を綴った回想録『自然のものはただ育つ』


 日本語版は『自然のものはただ育つ』(篠森ゆりこ訳)として、河出書房新社から2025年11月18日に刊行。20年に及ぶ作家生活の中でイーユン・リーは数々の名だたる賞を受賞してきた。本作は10代の息子二人を自死で失ったあとに記した衝撃のノンフィクションであり、初のノンフィクション邦訳刊行として注目された。


「夫と私は二人の子どもをもうけ、二人とも亡くした。2017年に16歳のヴィンセント、そして2024年に19歳のジェームズ。どちらも自死を選び、どちらも自宅からそう遠くない場所で亡くなった」


「私の悲哀に終わりはいらない。……悲しみとは言葉であり省略化であり、その言葉よりはるかに大きなものの単純化にほかならない」


 本書で著者は、苦しみや悲しみを乗り越えようとはしていない。むしろ「奈落の底」を住処とし、苦しみとうまく付き合っていこうとしている。人は苦しみ上手になれるという。自分が書いたもので慰めを見出してもらえるならありがたく思うけれども、同じ体験をした人々や悲しみにくれる人々を励ます内容ではないとも述べている。苦しみや悲しみはひとそれぞれであり、どの人の「奈落の底」も違っているものだから。しかしながら、大切な人を失った経験をもつ人なら、本書の内容に深く共感し、多くの示唆が得られるだろう。全米各紙が絶賛し、全米図書賞ノンフィクション部門をはじめ、いくつもの文学賞の候補作にもなった作品となっている。


■著者紹介
著者:イーユン・リー Yiyun Li
1972年、北京生まれ。北京大学に入学し、生物学を専攻。卒業後の1996年にアメリカに留学し、アイオワ大学大学院で免疫学を研究していたが、進路を変更し同大学院の創作科に編入、英語で執筆するようになる。2005年に短編集『千年の祈り』を刊行し、フランク・オコナー国際短編賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞などを受賞。続いて2009年、初の長編『さすらう者たち』を発表。その他の著書に『独りでいるより優しくて』『理由のない場所』『もう行かなくては』『ガチョウの本』、短編集『黄金の少年、エメラルドの少女』『水曜生まれの子』などがある。これまでにPEN/マラマッド賞を受賞、PEN/フォークナー賞、PEN/シーン・スタイン賞など数々の賞を受賞。現在、プリンストン大学で創作を教えながら、執筆を続けている。


■訳者:篠森ゆりこ Yuriko Shinomori
翻訳家。訳書に、イーユン・リー『千年の祈り』『さすらう者たち』『黄金の少年、エメラルドの少女』『独りでいるより優しくて』『理由のない場所』『もう行かなくては』『ガチョウの本』、クリス・アンダーソン『ロングテール』、マリリン・ロビンソン『ハウスキーピング』など。著書に『ハリエット・タブマン──彼女の言葉でたどる生涯』がある。


(文=リアルサウンド ブック編集部)



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