【#佐藤優のシン世界地図探索161】米中の「建設的戦略安定関係」とは何なのか?

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2026年05月22日 07:10  週プレNEWS

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トランプと習近平は大手打ち式を敢行(写真:AFP=時事)


トランプと習近平は大手打ち式を敢行(写真:AFP=時事)


ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――5月14日から16日に北京で開催された米中首脳会談。ここで米中が合意した「建設的戦略安定関係」とはいったい何なんですか?

佐藤 「軍事同盟にはならないんだけど仲良くしていきましょう」という話ですよ。

――以前言及していた米露中の"協商"ですね。

佐藤 そうです。だから、台湾海峡有事とは関係しません。もっとも、台湾問題でもあえて事を起こそうとは米中共に考えていないと思います。

――米中間には色々な問題があるけど、建設的に戦略安定関係を築いてとにかく波風が立たないようにしましょう、と?

佐藤 平たく言うと「金持ち喧嘩せず」ということです。それが双方にとって得なんですよ。お互い手を出さす、自分たちの縄張りを耕すことに力を入れましょう、と。

――帝国同士の関係は分かりました。帝国が華やかだった19世紀から20世紀になる頃、その大国に囲まれた小国はどうやって生き延びたんですか?

佐藤 大国と喧嘩しないことです。そういう形で皆、生き残ってきました。

――でなければ生き残れないと......。しかし、トランプ米大統領は色んな国に喧嘩を売っていますが、それに安易に与(くみ)しないということですね。

佐藤 そういうことです。アメリカも中国もロシアも「金持ち喧嘩せず」なんです。だって、中露間でも米中でも、特に死活的利益をかけて争っていることはないんですから。

――だから「三国協商」なんですね。

佐藤 はい。

――で、その大国、米中露に囲まれた日本は、リアリズムのある外交にチェンジしていかないとならない。

佐藤 そういうことです。米中露という大国と敵対してはなりません。

――となると、自衛官が中国大使館に侵入して大使に直訴した事件がありましたが、あの対中国への対応はマズいですよね。

佐藤 この前の日本に出現した軍神ですね。以前も指摘しましたが、あれはマズいですよ。

――中国は国内の人民をまとめるために、絶えず外に敵を作らないとならない。

佐藤 はい。

――これまでは台湾をめぐって、アメリカと中国は対立し挑発し合ってていました。しかし、それが手打ちとなった。となると、中国にとって近くていじめやすい国で残っているのは日本ですよね。

佐藤 そういうことになると思います。

――となると、どう回避すればいいんですか? 高市首相の戦艦発言に関しては詫びを入れる?

佐藤 高市さんに謝る気はないでしょうね。

――ですよね。

佐藤 だから、これは流れに任せるしかないでしょう。

――佐藤さんは以前、「偶発的な中国との小さな戦争、戦闘はあり得る」とおっしゃっていました。その危機は高まったんじゃないですか?

佐藤 いえ、それは逆に高市さんは引っ込むんじゃないでしょうか。なぜなら、米国は中国と事を構えないと、はっきりさせているからです。そうしたら、中国を刺激しないようにします。もちろん、そこにはトランプの面子を立てる意味もあります。

なので本来は、与那国や石垣の島嶼防衛強化などは米国を刺激する可能性があるから、少し控えめにしないといけないんですよ。しかし、乗りかかった船だし利権もあるため、いまさら引くわけにいきません。

だから、防衛は強化するけど極力、中国とは摩擦を起こさない方針となります。となると結局、ビビって何もしなくなるんじゃないですか。

――中国というより、トランプを怒らせないためなんですね。しかし、米中のこの建設的戦略安定関係は米中にとってはいいですけど、日本にとっては配慮して色々と細かくやらないといけない面倒な事が次々と起こってくるわけですね。

佐藤 そういうことです。しかし、戦争に巻き込まれる可能性は減りますよね。だって、日本は単独で戦争はできないわけですから。

――そうなんですけど、高市幕府の戦艦発言は本当に痛い。

佐藤 痛いんだけど、撤回はしませんから。あれは与件でやらないといけない、そういうもんだと。だから、高市政権の間は中国との関係は改善しません。

重要なのは、その間にトランプとの関係でどのような流れがでできるかということと、さらに米中間の流れがどうなるかということです。

――つまり、トランプだから何かあるわけですよね?

佐藤 あります。ただ、米国と中国との関係は安定する方向に変わり、喧嘩とか悪い方向にはなりません。だって、中国と喧嘩する理由がないんですから。

――たしかに米中間にはないです。

佐藤 強いて言えば、台湾パッシングが起きるかもしれません。トランプの台湾への関心が急速に失せちゃっているわけだから。

――トランプ閣下は、ウクライナと同じくらい台湾には関心がなくなっています。

佐藤 台湾に関しては、むしろ中国のほうが国民党に手を突っ込み始めていますからね。時間をかけていけば、中国と仲良くやっていこうという勢力が台湾国内で伸びてくるんじゃないの、というくらいだと思いますよ。

――たしかに。

佐藤 皆、「2027年までに大変なことになる」とか言っていますが、本当にそうなのかな?と思いますよね。

――台湾国会は野党の反対で、防衛関係特別予算が6兆2800億円から4割近くまで削減されましたしね。だから中国としては、台湾が熟れた柿となって落ちてくるのを待っているだけでいいと。

佐藤 そういうことですね。習近平はいま何歳でしたっけ?

――72才です。

佐藤 中国人は仙人みたいに長生きするので、少なくとも95歳くらいまでは生きるでしょうね。

――あと25年くらいは待てます。

佐藤 そうしたら、台湾問題の解決は2050年に設定すればいいんです。

――アメリカの政治日程マラソンは4年。中国は50、100、150年で動いていると。

佐藤 そうですね。

――しかし、たった3日間、北京で米中会談しただけで、極東を含めた太平洋の西側は平和になりましたね。

佐藤 なりました。だから、大手打ち式ですね。

――だからこそ、小さい国がちょこちょこといらんことしたらアカンと。

佐藤 そうです。気を付けないといけないのは、「なあ、高市さんよ、習近平と仲直りしてくれんかの?」とトランプから言われないようにすることです。そのためにも「いや、仲は悪くないですよ」という雰囲気にいつもしておくことですね。

次回へ続く。次回の配信は5月29日(金)を予定しています。

取材・文/小峯隆生

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