KCMGで走る山下健太(8号車)と野中誠太(9号車) 2026スーパーフォーミュラ第4戦/第5戦鈴鹿 全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)に参戦するKCMGは、今季よりイギリスのレーシングチームであるハイテックGPとのコラボレーションのもと、シーズンを戦っている。5月23日(土)に開幕した第4・5戦鈴鹿に向け、チームの山下健太と野中誠太は、ハイテックのファクトリーにあるシミュレーターに取り組んで調整を行ってきたという。金曜日のFP2後、作業の内容についてふたりに話を聞いた。
■シミュレーターでも「少しでも新しいことを取り入れられる」
SFはシーズン中の自由なテスト走行が厳しく制限されており、カテゴリー専用のシミュレーターも国内に多く存在するわけではないと言われている。そのためドライバーが実走行以外で準備できる手段はかぎられており、大会前に充分な走行を行うことが難しいのが現状だ。
そうしたなかで、イギリスを拠点にヨーロッパのシングルシーターに挑戦し続けているハイテックと組んでいるKCMGは、鈴鹿大会前に提携の一環として本国のファクトリーが持つ本格的なシミュレーターを使用したのだという。
山下は、初めて体験したハイテックの設備についてこう語る。
「F1やWECのチームで見るような、大きいディスプレイとモノコックが備わったタイプのシミュレーターでした。自分もWECやTRDの設備を経験していますが、規模感としては同じレベルですし、向こうの最新技術を使っている設備だったと思います」
シミュレーターでは、ハイテック側が用意したセットアップをベースにショートランを繰り返し、ドライビングと車両の方向性を確認。ただし、KCMGの現場で山下の8号車を仕上げている、田坂泰啓チーフエンジニアのアプローチとは必ずしも一致しない部分もあるほか、基本的には持ち込みセットアップにハイテックの見解が強く反映されているわけではないのだという。
「実際のところ、ハイテックとKCMGではやっていることが全然違うので、シミュレーターで試したセットアップが今回の鈴鹿でそのまま活用できているわけではありません。ただ、セットアップ以外の部分では、ドライビングの癖を細かく指摘されました」
「ヨーロッパは、マシンよりもドライバーファーストは傾向があって、僕の場合は『アクセルとブレーキの“両踏み”の傾向がある』など、そういう癖を指摘されました。30歳になってドライビングを変えるのは簡単じゃないですけど、何度も同じコースを走ってきたなかで少しでも新しいことを取り入れられるというか、言われたことを直せたのは良い経験でしたね」
一方、野中も同じくハイテックのシミュレーターで事前作業を行った。ショートランを中心に100周を超える走行をこなし、ドライビングとセットアップの確認を進めたという。
「朝から夕方まで、作業時間は6〜7時間くらいです。ショートランを何本もやって、ドライビングを見てもらって、セットアップも試して……という流れでした」
「山下選手とは入れ替わりのかたちで作業したので、僕は山下選手のデータとも照らし合わせながら進めていました。ほかにもルーク・ブラウニング(REALIZE KONDO RACING)選手も同じシミュレーターに取り組んでいたので、そのふたりの良いところも勉強することができたのですが、今日のFPの感じだと、うまくいっているとは言えない状況です」
野中が乗る9号車は、ハイテック所属のヤッシャ・オルマン氏がチーフエンジニアを務めているため、山下の8号車よりもシミュレーターで検証された成果がマシンに反映されやすいといえる。とはいえ、山下の8号車とセットのコンセプトが変わっていくことで、難しさが生じている部分もあるようだ。
「ハイテックとKCMGのやり方は全然違うので、同じチームで2台が違う方向性になることもあります。本当は2台体制の良さを活かして、お互いの良いところを取り入れたいのですが、そううまくはいっていないですね」
さらに野中は、スポット参戦が続く立場ならではのプレッシャーも抱えている。当初フルシーズン出走が見込まれていたカッレ・ロバンペラが欠場となったことで、開幕戦から代役としての起用が続いているが、次戦以降のシートはつねに未定の状況だ。
「『これが最後かもしれない』という、メンタリティーで走るということ自体、考えれば考えるほど良くないとは思っています。もちろん、目の前のことに対して最大限パフォーマンスを発揮することに集中はしたい。それでも、これまでになかったような体制で取り組むことも一筋縄ではいかない部分があって、気持ちのコントロールはすごく難しいです」と困惑を示す野中。
「これから先、ずっと乗れる保証はありませんし、基本的に自分は乗れない立場だとも思っています。それでも、結果を見られていることも承知の上で、この経験は必ずプラスになると信じ、目の前のレースで集中するしかないと受け入れて、最大限のパフォーマンスを出せるよう頑張りたいです」
ハイテックとの技術連携によって、これまでSFでは得られなかった事前準備の幅が広がっているKCMG。その環境をどう活かすかは、移籍初年度の山下とスポット参戦が続く野中という異なる立場のふたりにとって、ともに今季の戦い方を左右する重要な要素になりつつある。
[オートスポーツweb 2026年05月23日]