オープニングラップのシケインで起きた混乱 2026スーパーフォーミュラ第5戦鈴鹿 5月24日、三重県の鈴鹿サーキットで全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の予選・決勝が行われた。
前日とは一転、安定したコンディションの下で行われた決勝は、ポールポジションからスタートした福住仁嶺(NTT docomo Business ROOKIE)が、岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)との歴史に残る終盤のバトルを制し、チームにとっての初優勝を遂げた。
ここでは、決勝後に行われた取材セッション『ミックスゾーン』でのドライバーたちの声をお届けする。
●牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 予選3番手/決勝6位
前日の不調から一転、予選で3番手を獲得し、決勝4周目のSCリスタートでは岩佐をかわして2番手に浮上。以降、首位の福住を追う展開となったが、牧野としてはそこからすでに違和感があったという。
「抜けたけど……正直その時点で“あ、これキツいな”と思っていました。福住選手と比べるとミニマムまでのペース差が大きすぎて」
追いつけないと把握した牧野陣営はミニマムの8周目にピットイン。“ウラ”でペース向上を図った。
「引っ張っても何も起きないので、とりあえずはタイヤ替えてどうなるか賭けたんですけど……全然ダメでした。結局何もできなかったです」
「タイヤを替えてすぐ、グリップが高い状態でもキツかった。稼がないといけないタイミングだったのに、全然タイムを稼げないし、落ち幅も大きい。坪井(翔)選手が3周後にピットに入って、抜かれたあとに『あそこまで離される?』っていうぐらいのペース差がありました」
ペースが足りなかったという観点では、予選と決勝で抱えている問題は近いともいえるが、決勝では“ごまかし”が効かないと牧野。
「予選はギリごまかせる。でも決勝はその弱点が全部出る。今日のレースで改めてそう感じました」
フロア破損なども疑ったが、マシンの外観上は、ペース不足の原因となりそうな問題も見当たらないという。
「パッと見は大丈夫そうだったし……正直、何が起きているのか自分でも把握しきれていません。ここまでペースがないこともなかなかありませんし、明らかに遅かった」と、原因不明のペース不足という重い課題を残した週末となってしまった。
●阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 予選6番手/決勝4位
スタートこそ順位を落としたものの、抜き返しやリスタート後のオーバーテイクで流れを取り戻し、ミニマム勢がピットに入った後の単独ペースも安定していた阪口。
「トップ3を追えるほどではありませんでしたが、近いところまでは行けたと思います。内容としては力強かったですね」
タイヤ交換後もアウトラップで1台を抑え込み、最終的に坪井を従える4位フィニッシュ。大きな混乱のないレースで実力どおりの4位を獲得した。今季の好調について、阪口は「自分のクルマを一歩引いて見られるようになった」ことを要因に挙げる。
「今はグッとフォーカスして考えることを抑えて、一歩引いて自分たちのクルマの動きやデータを見ることができています。それが今の強みというか、調子の良さにつながっているのかなと」
2021年にCERUMO・INGINGでフルタイムドライバーとしてデビューしてから、今年で6年目を迎えているが、今組んでいる渡邊信太郎チーフエンジニアとは3年目のシーズンとなる。同じチームで積み上げてきた経験も大きく、コミュニケーションにも変化があるようだ。
「信太郎さんと一緒に3年間やってきて、クルマの理解が深まったこともありますし、僕が『こう感じた』とフィードバックした際の、表現の度合いを測るのがすごくうまくなってきて、より信頼して任せられるようになりました」
週末の組み立てにも、その落ち着きは表れていた。フリープラクティスではタイムこそ伸び悩んでも、阪口は慌てなかった。
「フリーのタイムは遅かったんですけど、クルマには速さがありそうだったので、ドシッと構えて大会に入ることができました。昨日の第4戦も雨が降らなければ3位か4位くらいのレースだったと思いますし、今日もほぼ同じ感触でした」
2日続けて2列目争いに絡めたことは、昨年からの前進として確かな手ごたえとなっている様子。
「昨年なら8番手くらいの位置でしたからね。今のスーパーフォーミュラで一列半もポジションを上げるのは本当に大変」
「その準備をエンジニアとメカニックの皆さんがしっかりとやってくれているおかげで、今年はつねにこの順位で戦うことができています。あともう一列、頑張りたいです」
●小林可夢偉(KDDI TGMGP TGR-DC) 予選13番手/決勝10位
予選では好タイムを記録しながらも、僅差でQ2進出を逃した可夢偉。決勝では最終盤まで引っ張る作戦で28周目にピットイン。最終的に10位に入ってチーム初ポイントを記録した。
作戦に関しては、ピットウインドウが開いたタイミングで、前方を走っていたライバルたちがピットストップをしたことで、前方がクリアになったことが大きかった模様。「クリーンエアだったというのと、周りというか裏側とのペースと比べても遜色なかったので、あの時点ではタイヤがタレるところまで引っ張ろうと思いました」と可夢偉。
ピットアウト後はフレッシュタイヤのグリップを活かし、1分39秒864のファステストラップを最終ラップに記録した。
「決勝では前半からペースが良かったことは確かですし、予選もAグループとBグループの差が激しかったというか、坪井とか仁嶺を上回らないとQ2に行けないという状況で、かなりハードルは高いグループでした。惜しくも7番手で、あと1ポジションでしたけど、そこらへんも含めて流れとしては出せるものは出せたかなと思います」と、今回のマシンパフォーマンスに関しては手応えを掴んでいる様子だった。
この可夢偉の10位フィニッシュにより、昨年は新体制で苦戦を強いられたKDDI TGMGP TGR-DCが待望のチーム初入賞を達成した。
「チームにとって初ポイントです。今年、チームのパフォーマンスを上げるべくKDDIに移籍して3イベント目。たかが1ポイントかもしれませんが、チームにとっては貴重な1ポイント。パフォーマンスが上がってきているというのを確認できた内容のレースだったと思います」
「まだまだやりたいことがあるものの、走行時間が足りないところもあり、走れば走るほど色んな学びがあり、勉強して成長して、シーズン中盤にはしっかり上の方で争えるようにしたいです」と、後半戦に向けた豊富を語った。
●笹原右京(REALIZE KONDO RACING) 予選19番手/決勝リタイア
2戦連続で途中リタイアを喫した笹原。実は初日のFP1から振動の問題に悩まされていたとのこと。FP2での最後のグループ分け走行でも途中にピットに入ったほか、土日の決勝とも途中にピットインしてリタイアとなった。
「基本的に起きていることは変わりないです、簡単にいうとバイブレーションですね」と笹原。
「これはオフの鈴鹿テストから起きていて、それが変わっていない状態。もてぎとオートポリスでも多少は起きていましたが、あまり目立っていなかったというか、特にもてぎでは違う問題を抱えてしまっていたので、(振動問題が)隠れてしまっていた印象です」
今週末の鈴鹿では振動の症状が悪化したのことで「とにかく今週はFP1のファーストアウティングを終えた時点から、バイブレーションが凄くて、ドライバーの視点からいくと前が見えないくらい。FP1が終わった時点で頭が痛くて、(第5戦後も)さっきまでトレーナーさんにケアしてもらっていました」と、本人もいつもの元気さが少しないような雰囲気だった。
「チームも直そうと一生懸命取り組んでくれているんですけど、なかなか改善せず。レースがキツくて、ちゃんと走れていない状態です。チームと話し合ってリタイアするという決断になって、夜通しいろいろ見てくれたのですが、今朝も症状は正直変わりなく……決勝も変わりなく、という感じです」
第5戦では、一度ピットインして修復を試み、再度コースインするも状況は改善せず再びガレージへ。今のところ、根本的な原因は掴めていない様子だ。
●野尻智紀(TEAM MUGEN AUTOBACS) 予選12番手/決勝11位
午前の予選はデグナーカーブ2つ目立ち上がりでの4輪脱輪によるタイム抹消が響き、Q2最下位の12番手となった野尻。本人も「完全に自分の責任」と語る。
「不必要といえば不必要だったのかもしれませんが、それぐらい攻めないと前にも並べないという中でのアタックだったので、残念でしたね。5番手くらいには並べたと思いますし、あそこで残せていれば全然違う1日になった」と悔しさをにじませる。
決勝ではスタートこそ悪くなかったものの、集団走行で生まれた乱流の影響で一気にパフォーマンスを落とし、数台に抜かれることに。
さらにAstemoシケインでのアクシデント回避(※本記事メイン写真)でも順位を落とすことになり、11位までの挽回が精いっぱいだった様子。ただし、それ以外のペースは決して悪くなかったという。
「結果には出ていませんが、レース自体に手応えはありました。データの見方を少し変えたことで、良くなっている部分が見えてきました」
「昨年最終戦はなんとかフロントロウに並べたりはしてましたけど、ルーキーテストと開幕前テストを見ても、かなりパフォーマンスは低かったので、そこから考えると大きな進歩はしてるのかなとは思っています」
シーズン後半戦に向けては、6月30〜7月1日に開催される富士テストを重要なポイントと位置づけた。
「まだクルマの方向性が完全に固まったわけではありませんが、少しずつ良くなっているのは確かです。自分のいるべき位置で戦えるように富士テストで頑張るしかないですね」
[オートスポーツweb 2026年05月26日]