ニコライ・グリアジンのランチア・イプシロン・ラリー2 HFインテグラーレ(左)と、アレハンドロ・カチョンのトヨタGRヤリス・ラリー2(右) 2026年WRC第7戦ラリージャパン 5月31日に大会最終日を迎えたWRC世界ラリー選手権第7戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2026』。サポートカテゴリーであるWRC2クラスには、伊ランチアのイプシロン・ラリー2 HFインテグラーレが初参戦し、見事ニコライ・グリアジンのドライブでクラス優勝を成し遂げた。
今回WRC2には1台のイプシロン・ラリー2 HFインテグラーレを持ち込んだランチア・コルセ。ドライバーのニコライ・グリアジンは、2024年大会で『頭文字D』カラーのシトロエンC3を走らせクラス優勝を飾った選手だ。2025年には惜敗を喫していたが、2026年は見事なリベンジを果たした。
■「最後まで戦い抜いた末の勝利は格別」カチョンとの激闘再来
今年は12台のラリー2マシンがエントリーしたWRC2クラスだが、グリアジンはアレハンドロ・カチョン(トヨタGRヤリス・ラリー2)との一騎打ちとなり、クラストップを入れ替えながらの白熱したタイムバトルを繰り広げたが、最終的にはパワーステージでのカチョンのスピンによって終局。最後のタイムコントロールを通過したのち、グリアジンはラリージャパンで達成したランチアでの初勝利を喜んだ。
「本当に嬉しい。日本でのランチアが走ったラリーは今回が初めてだったから、そんな中でもランチアのなかでひとつの伝説的な瞬間を創り出せたのは素晴らしいことだ」
「それと、日本には『こんなにも多くのランチアファンがいるのか』と驚いたし、嬉しかった。なんたって、デルタ・インテグラーレとすれ違ったくらいだからね。ヨーロッパでもランチアファンは多く見かけるが、日本ははるかに多かったから、いい成績が残せてうれしいよ」
グリアジンがデッドヒートを繰り広げたカチョンは2025年日本戦のウイナーであり、グリアジンが2位となって後塵を拝したライバルだ。今年もふたりの戦いとなったが、デイ2ではグリアジンがホイールに傷を負うほどの攻めた走りを見せ、締めくくりのデイ3ではカチョンが限界を超えてスピンを喫してしまった。それでもカチョンはクラッシュを回避してマシンをフィニッシュまで運び、クラス2位を守った。グリアジンは、同地でのリベンジ達成を次のように振り返った。
「アレハンドロとは本当に良い戦いができた。これまで彼と戦ってきたすべてのステージで、彼は印象的なスピードを見せてくれ、僕にプレッシャーをかけ続けてくれた」
「その分、彼に良いペースで応えなければならなかったし、そしてトップペースを目指そうとすると、必ずミスをしてしまうものだ。それは僕だったり、彼だったりした。ラリー中はずっとそんな感じだったよ」
「最終ステージで彼が大きなミスを犯して、それが大きな代償となった。おかげで自分は良いタイムが出せたけど、それでもつねにプッシュし続けなければならない状況だった」
「パワーステージも、僕とアレハンドロの差がほんのわずかになりそうだと分かっていたし、最初のアタックでうまく走れていたので、2回目も同じようにプッシュしようと決めた。だいたい、2.8秒くらいのギャップを守れるはずだと。アレハンドロのクラッシュもあったが、最後のタイムは良かったし、最終的にそれが報われて良かった。最後まで戦い抜いた末の勝利は格別だよ」
グリアジンは大会開幕前、イプシロンはターマック(舗装路)と相性の良いクルマであり、日本ラウンドにも自信をのぞかせていたが、今回はGRヤリスとのパフォーマンス差が拮抗していた。タイトなステージでの速さが上下するシーンや、路面コンディションの悪いシーンが目立つ場合でも、ともにタイムを稼ぎ合う対等のバトルを見せた。
最後にはドライバー同士の腕前がぶつかり合う純粋な勝負となったが、その激戦を勝ち抜くうえで、グリアジンは明確なテーマを持ってこのラリーに臨んでいたという。
「このレースでとくに意識していたのは、ペースノートの精度とコーナーの長さをしっかり理解することだった。日本のステージにはブラインドコーナーが多いから、路肩のカットは厳禁だし、とにかく集中力が必要なんだ」
「それに、ハンコックタイヤに過度な負荷をかけないようにすることも重要だった。パフォーマンス自体は安定しているけれど、どう負荷をかけるかで性格が変わるからね。ブレーキのかけ方からステアリングの切り方など、スムーズに走らせることをつねに意識していたよ」
また開幕前日の雨で濡れたステージが多かったデイ1や、ラリー1のマシンらが走ったことで汚れたステージなどでのタイムアタックの精度についても、「全体的に、タイムアタックの正確さが本当に重要だった。とくにグリップが低いコースでは、少しのミスが大きなタイムロスにつながる。どのステージでも自分を限界まで追い込む必要があったよ」振り返ったグリアジン。
そして、今回の勝利はチャンピオンシップに向けても大きな意味を持つ。
「これまで何度も勝利に近づきながら届かなかったレースが続いていたけれど、ようやく良い感情を味わうことができた。今回の結果はチャンピオンシップにとっても良いポイントになったし、モチベーションもさらに上がっている。上のクラスと近いタイムも出すことができたからね」
「まだシーズンは半分残されているし、グラベル(未舗装路)での性能も改善の余地がある。これからシーズン後半がどんな展開になるのか、楽しみにしているよ」
ランチアブランドとの初勝利を、多くのファンが集った日本で飾り、昨年の雪辱を果たしたグリアジン。イプシロン・ラリー2 HFインテグラーレのポテンシャルを証明した今、彼の視線はすでに次の戦いへと向けられている。
[オートスポーツweb 2026年05月31日]