「公務員だから、自分だけは大丈夫だと…」37歳男性が妻に隠れて2年で1500万円の借金、“残高28円”で自己破産するまで

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2026年06月01日 09:30  日刊SPA!

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消費者白書によると、2024年の多重債務に関する相談件数は、財務局等で6552件、消費生活センター等で2万4213件にのぼった。安定した職業や収入がある人でも、その信用力ゆえに借入のハードルが下がり、多重債務へ転落するケースはある。見えにくい借金が膨らむ背景について、財務コンサルタントの見解もあわせて見ていきたい。
◆安定職が招いた小さな油断

「公務員だから、自分だけは大丈夫だと思っていました」

自己破産を経験した赤塚文隆さん(仮名・37歳)は、そう言って力なく笑う。

22歳で地方市役所に採用されて以来、赤塚さんは真面目に公務員としてのキャリアを積み上げてきた。安定した職と毎月の給与。世間的な信用も高く、自分の人生が大きく崩れることなど想像もしていなかったという。

転機は、結婚した30歳の頃だった。

家計は妻に任せ、赤塚さんは家賃や光熱費、保育料などの引き落とし分を差し引いた残額を妻に送金する形で生活していた。自由に使えるお金は月3万円の小遣いだけ。妻も働いており、月20万円弱の収入があったため、世帯収入は月50万円弱。家計としての貯蓄も100万円ほどあり、当時は「多少のことがあっても自分たちは大丈夫だろう」と思っていた。

そんな頃、赤塚さんはボートレースのネット投票に手を出した。スマホひとつで舟券が買える手軽さにのめり込み、退勤途中の駅のホームや、布団の中でも指を動かす日が続いた。

最初は1レース1000〜3000円程度。だが、競輪にも手を広げると、こちらはクレジットカードで車券が買える。現金が減らないため、「使っている」という感覚そのものが薄れていったという。

「小遣いの範囲で楽しんでいるつもりが、気づけば全然足りなくなっていました。勝てば取り戻せるし、少額なら大丈夫だろうと、自分に都合よく考えていたんです」

小遣いでは足りなくなると、赤塚さんはカードを増やしていった。すると驚くほどあっさり審査が通る。初回から限度額100万円のカードが複数社で発行され、銀行カードローンは200万円、消費者金融でも150万円の枠が下りた。

「公務員だから絶対に落ちない。その感覚が、自分をどんどんおかしくしていったんだと思います」

最初のうちは、たまに大きく勝つこともあった。1日の最高勝ち額は120万円。その成功体験が、「次も取り返せる」という錯覚を強めた。だが、その一方で、負ける日は一気に負ける。1日で50万円近く溶かしたこともある。それでも赤塚さんは、「次のボーナスで返せばいい」「いざとなれば退職金がある」「大穴を当てれば全部チャラだ」と自分に言い聞かせていた。

◆ 2年で1500万円に膨らんだ借金

借金は、わずか2年ほどで一気に膨らんだ。「家族に知られる前に取り返さなければ」という焦りが、さらに賭け金を吊り上げた。A社から借りてB社に返し、C社の枠が空けばまたB社に回す。そんな自転車操業を繰り返すうちに、借入先はクレジットカード、カードローン、消費者金融、後払いアプリまで合わせて10社に及んだ。気づけば借金総額は約1500万円、毎月の返済額は15万円に達していた。

それでも妻にすぐ気づかれなかったのは、赤塚さん自身がいくつもの細工を重ねていたからだ。給与の振込先を複数指定できる制度を使い、返済に必要な金額を自分が管理する別口座に振り込ませる。ボーナスも同じように返済分を先に確保する。さらに「給与明細は電子化された」と嘘をつき、現物を見せない。勝ったときは返済に回し、別の会社から借りて延命する。そうやって、家族だけでなく、自分自身にも「まだ大丈夫だ」と思い込ませていた。

「もうまずい」と赤塚さんが自覚したのは、子どもの保育料が口座残高不足で引き落とせなかった通知を見たときだった。手取り30万円の給料は返済で半分が消え、スマホに表示された残高は「28円」。その数字を見た瞬間、全身の血の気が引いたという。

「帰宅しても妻の顔が見られませんでした。風呂場で湯船に沈んだまま、ただ天井を見ていました。あの時、ようやく終わったと思いました」

ある晩、子どもを寝かしつけた後、赤塚さんはとうとう妻に打ち明けた。

「ギャンブルで借金がある」
「1500万」

妻は泣きも怒りもしなかった。ただ、表情から一切の感情が抜け落ちた、あの“無”の顔が今も忘れられないという。

自己破産の手続きに入ったのは35歳のときだった。市役所も退職した。今振り返ると、最大の誤算は「公務員の信用力」を「自分の稼ぐ力」と勘違いしていたことだったと赤塚さんは話す。

「安定している職業だと思っていたのに、その信用が、逆に借金のハードルを下げてしまいました。借りられることと、返せることはまったく別だったんだと、全部失ってから気づきました」

◆<解説>信用力が借金を深刻化させる

一見すると、公務員という立場は「堅実さ」や「安定」の象徴に見える。だが実際には、その信用力の高さが借入のハードルを下げ、かえって多重債務を深刻化させることもある。財務コンサルタントの桜井潤一氏は、こうしたケースは実務でも起きていると話す。

「公務員や大企業勤務の方は、借入枠が大きく、審査も通りやすい。そのため、気づかないうちに借入が膨らんでいくことがあります。よくある流れは、小さな借入から始まり、リボ払いに移り、複数社から借りるようになり、借り換えを重ねるうちに総額が見えなくなる、というものです」

今回のケースもまさにそれだった。最初は小遣いの延長だったはずの賭け金が、クレジットカードとローンによって際限なく膨らみ、最後には本人すら全体像を把握しきれない状態へと転がり落ちていった。

桜井氏は、こうした人たちに共通する危険な思い込みがあると指摘する。

「『安定しているから返せる』『限度額は使っていいお金だ』『いずれ調整できる』。そうした発想が借金を深刻化させます。ですが、“借りられる力”と“返せる力”はまったく別物です」

さらにこのケースでは、借金そのものだけでなく、発覚の遅れが傷を深くした。家計を配偶者が管理していても、別口座や複数の借入先を使って資金を回していれば、表面化までに時間がかかる。では、家庭でそれを防ぐには何が必要なのか。

◆見えない借金を防ぐ家計ルール

桜井氏は、「見える化」と「ルール」だと断言する。

「すべての口座や借入を、月1回でもいいので共有すること。借入やリボ払いは事前相談制にすること。そして、自由に使えるお金の範囲を明確にしておくことが大切です」

そのうえで、もうひとつ重要なのが、家族の中での“申告ルール”だという。

「早く言えば責めない、隠したら問題にする。この線引きを最初から作っておくことです。問題は借金そのもの以上に、発覚が遅れることにあります」

借金は、数字が膨らんだ時点で破綻するのではない。見て見ぬふりをし、言い出せず、家族の目からも隠れ続けた時に、取り返しのつかないところまで進んでしまうのだ。

安定職の信用は、本来なら生活を守るためのものだ。だが、それを「借りても大丈夫」という根拠にすり替えた瞬間、安心は最も危うい落とし穴へと変わるのである。

桜井潤一
ユニバーサルバンク代表。財務コンサルタント。早稲田大学卒業後、大手銀行に24年間勤務。2020年株式会社ユニバーサルバンク設立。富裕層の資産運用から、数十億の法人融資まで1,000社以上の審査と支援を経験。「銀行を超えた銀行を創る」という思いから2020年独立、「株式会社ユニバーサルバンク」設立。3,000万円以上の自己投資をして起業初年度から年商1億5,000万円のビジネススクールを経営、提供するセミナーも6,000人以上が受講。「真に豊かな人生を送れる人を増やしたい」という想いから、財務×ビジネス×資産形成を融合したReal Wealth®︎プログラムを開発

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