「気温28度でも7人救急搬送」の衝撃。なぜ学校は運動会の“コピペ事故”を繰り返してしまうのか

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2026年06月01日 21:20  All About

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春の運動会シーズンに、気温28℃でも集団搬送が起きる熱中症。身体が暑さに慣れていない時期の危険性と、学校が判断基準にすべき「暑さ指数(WBGT)」の重要性を解説。なぜ同じような「コピペ事故」が学校で繰り返されるのかを考えます。(画像:PIXTA)
春や秋の過ごしやすい季節に開催されることが多い運動会。しかし、近年の異常気象もあり、親としてどうしても心配になるのが「熱中症」のリスクです。

予定していた日の気温が高くなったとき、学校側がどのような基準で実施や中止を判断しているのか、具体的な指針や対策が示されていたほうが保護者の皆さんも安心できるのではないでしょうか。

All Aboutの子育て・教育ガイド、鈴木邦明氏の著書『言い方・伝え方でこんなに変わる 保護者の相談・クレーム対応100』(学事出版)から、毎年のようにどこかの学校で起きてしまう熱中症事故の盲点と、これからの学校の安全管理の在り方について考えます。

【Q:保護者からの相談】

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「まもなく運動会ですが、最近は6月でもかなり暑い日があります。学校の練習や当日の熱中症対策は本当に大丈夫なのでしょうか? 中止や延期にする明確な基準はあるのか不安です」
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【A:子育て・教育ガイド 鈴木邦明氏の解説】

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熱中症への不安は当然のものです。学校側は、教師の経験則や「これくらい大丈夫だろう」という非科学的な判断ではなく、医学的根拠に基づいた客観的な基準で実施の可否を判断する必要があります。

実は、熱中症は40℃に迫るような真夏だけでなく、身体が暑さに慣れていない5月の「20℃台後半」でも、集団搬送などの重大な事故が起きる危険性があるのです。
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「最高気温28.2℃」でも7人が救急搬送された現実

過去に、熊本市の中学校で体育祭の練習中、熱中症と見られる症状で7人の生徒が救急搬送されるという事故が起こったことがありました。その日は5月で、熊本市の最高気温は28.2℃だったそうです。その条件だけ聞けば、事故の発生を意外に感じた方も多いのではないでしょうか。

熱中症は、40℃に迫るような真夏の本当に暑い時期にだけ起こるものではありません。身体が暑さに慣れていない5月、6月も、真夏同様に危険な時期だとされています。30℃を少し越える程度の気温であっても、身体が暑さに慣れていない場合は熱中症になることもあるのです。

「暑熱順化」をご存じでしょうか。身体が暑さに慣れていくことを意味する言葉です。少しずつ暑熱順化することで、子どもの身体は熱中症になりにくい状態になります。

熊本市の事例もそうですが、単に「真夏日じゃないから大丈夫だろう」という数字だけの先入観で判断するのではなく、こうした身体のメカニズムを理解しておく必要があります。もちろん運動会当日だけでなく、日々の練習中から注意を払うことが不可欠です。

「暑さ指数(WBGT)」という客観的なブレーキ

では、学校は何を基準に判断すべきなのでしょうか。

ひとことで「温度」といっても乾球温度、湿球温度、黒球温度などさまざまな観測方法がありますが、今、熱中症リスクを総合的に判断するための指標として重要視されているのが「湿球黒球温度(WBGT値)」、いわゆる「暑さ指数」です。

暑さ指数は気温だけでなく、湿度や風速、地面からの照り返し(輻射熱)なども交えて算出される温度です。日本スポーツ協会は、この暑さ指数が31℃以上の場合は、スポーツ活動を「原則中止」することを求めています。

この暑さ指数は、今や市販の計測器でも簡単に測れますし、スマートフォンアプリや気象庁のウェブサイトなどでも誰もが確認することが可能です。学校側もこれらを用いて、運動会の開催可否といった熱中症対策を行っていくのが望ましいと言えます。

「数値を守る」だけで終わらせない現場の対応力

しかし、それだけではまだ対策として十分とは言えません。

例えば、暑さ指数の基準に従って運動会や練習を中止したとしましょう。しかし、中止しさえすれば絶対に熱中症が防げるわけではありません。子どもの体調や体力には個人差があるからです。

熱中症には、急激に悪化する前にいくつかの前兆が見られる場合があります。数値の基準を守ることだけに満足せず、現場で子どもの様子や顔色をきめ細かく確認し、おかしな前兆があればすぐに保健室で休ませたり、保護者を呼んだり、医療機関の診療を受けさせたりといった「次への具体的な対応」までセットで考えていくことが重要なのです。

なぜ何度も同じ事故が……「コピペ事故」の教訓

学校での熱中症事故は残念ながら後を絶ちません。毎年のように、似たような事故が何度も起こることから、ネットなどで「コピペ事故」と揶揄(やゆ)されることもあるようです。過去の事例から学びつつ、専門的な知見のもとで判断していくことが、学校現場に今まさに求められています。

そして保護者の側も、単に学校任せにするのではなく、「今日は暑さ指数が高いから気をつけようね」と家庭で声をかけたり、水筒やタオルの準備を整えたりと、客観的な目を持って一緒に子どもたちの安全を見守っていく。

そんなお互いの意識の歩み寄りが、子どもたちが安心して輝ける、本当に安全な運動会を作る一歩になるのだと私は信じています。

鈴木 邦明プロフィール

神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。
(文:鈴木邦明(子育て・教育ガイド))

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