「ゴミ袋を開けたら、あなたの名前が…」身に覚えのないルール違反で“犯人扱い”された外国人留学生の困惑

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2026年06月05日 16:20  日刊SPA!

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※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
騒音、駐車・駐輪、ペット、共用部の使い方——。集合住宅での近隣トラブルは、日常の小さな違和感から始まることが多い。なかでも「ごみ出し」は、曜日や時間、分別ルールが地域ごとにも細かく異なるため、非常に難しい問題のひとつだ。
近年は外国人が暮らす賃貸マンションも珍しくない。言葉や生活習慣の違いから、ルールがうまく伝わらず、住民同士の摩擦につながるケースもある。一方で、「外国人だから」というだけで疑いの目を向けられてしまう人もいる。ごみ出しをめぐる近隣トラブルの実情を聞いた。

◆深夜のごみ集積所に置かれた3つの袋

日付が変わってから仕事を終えて帰宅する途中、佐藤裕紀さん(仮名)はいつものように、自分が暮らす古い賃貸マンションのごみ集積所を横目で見た。

「またか……」

そこにはすでに、大きなごみ袋が3つ、どさりと積み上げられていた。時計の針は午前2時台を指していた。

佐藤さんの住む地域では、燃えるごみの収集は火曜日と金曜日の週2回。カラス対策のため、ごみは「当日の朝に出す」ことが決められている。その夜は木曜日。正確には日付が変わって金曜日になっていたが、「朝」とはほど遠い深夜である。

ごみ集積所にはコンクリートの囲いがあり、黄色い細かな網と物干し竿で作られた手製のカラスよけも備えられていた。しかし、それも十分には機能していなかった。

「深夜に出されたごみ袋が、朝にはカラスに荒らされていることもありました。中身が道路に散らばっていると、誰かが片づけなければいけない。正直、かなりストレスでした」

佐藤さんがそのマンションに越してきてから3年が経つ頃、ルールを無視したごみ出しが急に増えたという。

◆外国人の住民が捨てている現場を発見

ある深夜、佐藤さんはとうとう、ごみを捨てている当人たちを目撃した。

「マンションの駐車場のほうから、2人の男性が歩いてきたんです。楽しそうに談笑していましたが、その言葉は日本語ではありませんでした」

街灯の光の下で見えた彼らの顔立ちは、東南アジア系のようにも見えたという。

「平然とした様子でごみ袋を捨てていました。片方がこちらを見た気もしましたが、怖くてとっさに視線をそらしてしまいました」

その後も、佐藤さんは5〜6回ほど同じような現場を目撃した。やがて気づいたのは、その男性たちが、エレベーターでときどき見かける住人らしき人物たちだったということだ。

「作業着を着て、朝早い時間に駐車場の車へ仲間たちと乗り込んで出かけていくんです。この賃貸マンションも、おそらく彼らの雇い主が借り上げて、寮のように使っているのではないかと思いました」

自室でパソコンに向かっていると、外国語で楽しそうに話しながら廊下を通り過ぎていく声が聞こえることもあったという。

◆意を決して注意したが…

彼らに悪気はなく、日本語が読めないためにルールを理解できていないだけかもしれない——。そう考えた佐藤さんは、恐怖心を抑えながらも、ごみを捨てる現場で意を決して声をかけた。

「あのう、すみません。こんばんは」

しかし、仲間内で談笑していたときとはまるで別人のように、彼らは真顔で無言のまま佐藤さんを見つめ返したという。

「それ、ごみ袋ですよね。夜中に出すといけないそうですよ。カラスや野良猫が来るんです。わかりますか」

返答はなかった。日本語が通じていないのかもしれない。そう判断した佐藤さんは、今度は英語で話しかけた。

「心臓はものすごくバクバクしていました。相手が怒るかもしれないし、言葉も通じるかわからない。かなり怖かったです」

相手は相変わらず一言も発さず、少し首をかしげるような動作をした。その後、彼らの言葉でぼそぼそと何かを呟き、ごみ袋をどさっと置いて、そのまま去っていった。

「エントランスから一緒にエレベーターに乗るのも気まずくて、彼らが先にエレベーターに消えるのを、ただ見ているしかありませんでした」

不適切なごみ出しは、その後もしばらく続いた。そんなある夜、佐藤さんはごみ集積所の近くで、四本足の動物を見かけた。

「最初は犬かと思ったんですが、よく見たらキツネだったんです」

ルールを無視したごみ出しは、カラスや野良猫だけでなく、野生動物までも引き寄せていた。佐藤さんは驚きと同時に、「これは本当にまずい」と感じたという。

ただ、その問題は意外な形で終わりを迎えた。

「駐車場で、私の車の2台隣に止まっていた大きな車が、ある日からなくなったんです。それと同じ頃から、外国語で談笑する声も聞こえなくなりました」

おそらく工事の現場が変わるか、寮として使っていた部屋を引き払ったのだろう。ごみ出しの問題は、注意や管理会社の対応によって解決したというより、“自然消滅”に近い形で収まった。

「正直、ホッとしました。でも、同時にモヤモヤも残りました。もしまた同じことが起きたら、自分が直接注意するのは危ない気もしますし、管理会社や雇い主がちゃんと説明してくれないと、住民同士で揉めるだけだと思いました」

◆身に覚えのないルール違反を疑われて困惑

一方で、ごみ出しをめぐるトラブルでは、「外国人というだけでルール違反を疑われる」ケースもある。

香港から来日し、京都で暮らす留学生のエンさん(仮名)は、身に覚えのないごみ出しのルール違反を注意されたことがあるという。

エンさんは、来日前から「日本のルールはとても細かい」と聞いていた。そのため、入居時に渡されたごみの分別や曜日、共用部の使い方に関する書類を何度も読み返し、きちんと守るよう徹底していたという。

「特に京都のごみ出しは厳しいと感じました。カラス対策のためか、前夜のうちにごみを出すことは固く禁じられていました」

実際にエンさんも、誰かが夜間に出したごみ袋がカラスに破られ、中身が道路にまで散乱している光景を目撃したことがある。

「だからこそ、自分は絶対にルールを守ろうと思っていました」

◆大家から突然「あなたの名前が入った書類が出てきた」

ところがある日、エンさんは大家から直接声をかけられた。

通常、外国人入居者への連絡は保証会社を介して行われる。日本語が不自由な住人もいるため、トラブルがあれば、まず保証会社の担当者から電話が来る仕組みになっていた。しかし、そのときは大家がわざわざ彼女の部屋までやってきたという。

「指定外の場所にごみを出した人物がいるという苦情でした。そして、『袋を開けて中を確認したら、あなたの名前が入った書類が出てきた』と言われたんです」

エンさんには、その場所にごみを置いた記憶は一切なかった。

「間違いなく自分ではありませんでした。でも、強く否定すると、『外国人が変に言い訳をしている』と受け取られて、話がこじれる可能性もあると思ったんです。だから、『気をつけます、すみません』と頭を下げました」

それ以来、エンさんはごみを出す際、紙類は必ず細かくちぎり、名前や住所が読める部分は黒いマーカーで塗りつぶしてから捨てるようになったという。

「ルールを破る人がいるかぎり、ルールを守る側がますます息苦しくなるんですよね」

エンさんは、外国人の住民のなかにごみ出しのルールを守らない人がいることも否定しない。

「同じマンションに、深夜の騒音なども含めてルールを守らない外国人がいます。だから、大家さんが疑いたくなる気持ちもわからなくはありません。でも、きちんと守っている人まで同じように見られるのはつらいです」

ごみ出しのルールは、住んでいるマンションや地域ごとに細かく異なり、日本語を読める日本人でさえ迷うことがある。まして、言葉や生活習慣が異なる外国人にとっては、よりわかりにくい部分もあるだろう。

外国語対応の案内や、入居時の丁寧な説明、雇い主や管理会社によるルール周知が欠かせない。住民同士が直接注意し合えば、感情的な対立や誤解につながることもある。ごみ出しは、近隣の信頼関係を左右する問題なのだ。

<取材・文/日刊SPA!編集部、藤山ムツキ>

【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

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