すっかり元気です 橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。
そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は体調管理について綴ります(以下、宇野さんによる寄稿)。
◆“強制断食道場入り”していたゴールデンウィーク
禅語に、「無一物(むいちもつ)」という言葉があります。
大型連休、この言葉を頭に浮かべながら、腹痛と共に過ごす羽目になりました。
皆様、ご機嫌よう。気が付けば6月。2026年の半ばですね。え? 本当? 桜並木はすっかり新緑となりました。ゴールデンウィークにお出かけしたという方も多いのでは?
わたくしはと言えば、胃と腸をダブルで壊し、外出どころか、自分の部屋で強制断食道場入りしておりました。
いやあ。アラフォーって、無理はいけません。今回はそんなのたうちまわった結果心に刻んだ「己のトリセツ」の話です。
◆嫌な予感が大当たり!宝くじならよかったのに
芸能界の片隅にいたわりに、平穏かつ、健康主義で生きてまいりました。その理由のひとつに「赤信号がものすごく点灯する」というのがございます。
「あれ、なんかこの人危ない」「ここ、ダメだ」「これ、体調崩すな」こういうシグナルに非常に敏感なのです。いとこ曰く「ものすごく正確なセンサーがある」そう。
失敗することもありますが、子役から大人になるにつれていろいろ見てきた結果でしょうか。
特に己の体調に関しては、仕事に穴をあけることは許されないので、不調はすぐに感じ取るタイプでした。もともと小柄だったこともあり、無理するとすぐに体調を崩す、かわいいかよわいナオミチャンで。なお、主観であり現実とは異なる場合がございます。
それはさておき、わたくし、今年は年初から結構頑張って過ごしておりました。新たな環境に身を置き、なんだかんだと忙しくて……。GWは休もうと考えていた、その矢先。
胃袋から、「シクシク」という声。嫌な予感がする……。
食欲がなくなる、ということはあまりないのですが、どうもだるい、胃袋の様子がおかしい。これはいかんと早めに寝ましたが、夜中に飛び起きてトイレにGo。
「これはダメだ!!」
眠れはしましたが、体調の悪さにおののき、翌日病院へ。いやな予感が大当たりでした。当たるなら宝くじがいいよう!
◆絶食となり、空腹との戦いがスタート
翌朝、豪雨の中病院に飛び込むと、体温計を渡されました。自覚はないけど、熱もあったみたいで、隔離診察へ。
思い当たる節は疲れ、冷え、そして、前日に食べたかなり賞味期限の切れたチョコケーキ。へろへろでも口は回るので、とうとうと語る私にお医者さんの一言。
「思い当たる節いっぱいあるねえ」
ぐうの音も出ない。そして、とどめの一言。
「2、3日は絶食して、ひたすらおとなしくしていてください」
ガガーーン。
翌日は友人と出かける予定だったのに、今絶食って言った? わたくしって食いしん坊なんですけど? パスタとか食べたいんですけど?
頭の中は不満が渦巻いていますが、何しろ熱は出ているし、体はしんどい。飴と、水分以外は禁止。それからゆっくり消化の良いもの食べていくという指示はごもっともです。
友人に謝罪とキャンセルの連絡をし、薬を流し込んでベッドに倒れこみました。
◆素揚げした夏野菜をたっぷり添えたカレーの夢を見る
ひたすらに、寝ました。だってそれしかできないわけで。スマホも見られないほど消耗していたので、寝る、寝る、横になる、寝る。
人間って大人になってもこんなに寝れるんだと思いました。疲れも相当溜まっていたんでしょう。
あめちゃんとポカリを流し込みつつ、トイレと部屋を往復する以外は重力に逆らうこともなく、横になっていました。
びっくりするくらい、食べ物の夢ばっかり、見る……。
もっとも強烈だったのは、オクラとナス、トマト、かぼちゃを素揚げにして添えてある、お肉のたっぷり入った夏野菜カレーの夢。ああ、おいしかったなあ……。起きた時の情けなさと空腹といったらなかったです。
こういうときって初恋の人とか出てくるんじゃないんですの?オール食べ物! 今回使っている写真は、ほとんど過去に食べて、夢に出てきたものシリーズです。
体調の心配をして母が連絡をくれましたが、返信がすべて「おなかすいた」しか言えなかった。いやはや、己の食い意地をなめくさっておりました。
禅語に「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」という言葉がありまして、「無一物」として、お茶の稽古や茶会でよく軸がかかっています。
ざっくり言いますと「本来は何もないのだ」という意味なのですが、「人間は無……しょせん欲望を宿した器に過ぎない……」という、のたうちまわりながら謎の境地に至り、なおかつ、おなかがすいていました。
こんな大型連休の過ごし方は初めてです。
◆自分自身のトリセツを持とう
空腹と爆睡を繰り返す日々で、自分の取扱説明書を持つことの大事さをつくづく感じました。
何があると嬉しくて、楽しくて、幸せで、元気なのか。
逆に何がダメで、イヤで、ムリなのか。
私の場合は、睡眠不足や空腹がダメ。苦手な家事や連絡の先延ばしがイヤで、一回の確認でミスを見つけることがムリです。
ぐっすり眠って、おいしいもの食べて、本や漫画を読んでいれば楽しいし元気。大好きな友人と会ったり、編み物をしたり、旅行に行ったりすることも大好きです。
「すぐ幸せになれることは何か」
「ダメ、イヤ、ムリをどう解決ないしは、しのぐか」
を自分と相談し、編み出しておくことをおすすめします。
私の場合、ミスの発見が苦手なので、エッセイなどの原稿は必ず一晩おいて、翌朝読み直してから送信するようにしています。
そのほか、連絡はとにかくスマホ握ったら真っ先にするとか、帰宅して座ったらダラダラしてしまうので、鞄からスマホを出す前に夕飯の支度などを済ませるといった対策をとっています。
◆あなたのトリセツはどうなっていますか
西野カナさんが『トリセツ』という、自分のトリセツを相手に説明する名曲を作られています。
大人になったからこそ、自分のトリセツを己が知っていることが、人生を、健康を左右する、と肝に銘じた、ゴールデンウィークでした。
まあ、肝(肝臓)というよりは胃腸なんですが……。
<文/宇野なおみ>
【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中