SSDの性能と信頼性を下支えする“コントローラー”の最新動向をチェック 変わり種やPCIe 6.0を見据えた動きも

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2026年06月18日 12:10  ITmedia PC USER

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PS5037-E37Tを搭載するM.2 SSDのサンプル品

 台湾・台北市で行われる「COMPUTEX TAIPEI」というと、どうしてもPC本体やPCパーツに目が行きがちだが、これらを支える半導体(チップ)に関するブースも少なからず設置されている。この点で「COMPUTEX TAIPEI 2026」も例外ではなかった。


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 価格の高騰が続いているSSD(Solid State Drive)に関連する展示ブースを見て回ると、今回はPCI Express 5.0(PCIe 5.0)対応のメインストリーム製品向けのSSDコントローラーの進化や、製品メーカーによる新たなユースケースの提案が交差する、見どころの多い内容となった。


 この記事ではSSDコントローラーの最新トレンドをレポートする。


●PCIe 5.0対応SSDのスイートスポットは「毎秒48億転送(4800MT/s)」に


 SSDコントローラーメーカーにおける最大のトレンドは、PCIe 5.0対応のメインストリームモデル向け製品の拡充だ。各社の戦略の核となっているのが「4チャンネル構成のまま、「毎秒48億転送(4800MT/s)の高速NANDフラッシュに対応する」というアプローチを取っている。


 なぜ、「4チャンネル構成」と「4800MT/sの高速NANDフラッシュ」の組み合わせが“スイートスポット”となるのか。それはNANDフラッシュの「速度」と「チャンネル数」、そしてSSD内部における「オーバーヘッド」の関係から説明ができる。


 SSDでデータの読み書きが行われる際には、純粋な「データ」に加えて、その誤りを訂正するための「ECCパリティー」や、管理情報を格納する「予備領域」もセットで転送されている。近年の高密度/高速な3D NANDでは、強力なエラー訂正も欠かせず、この予備領域の比率が10〜15%に達することも珍しくない。


 これにコマンド処理などの通信オーバーヘッドなどの要因が重なることで、直近のPCIe 5.0対応SSDでは、NANDの理論上の最高速度から約25〜30%もの実効ロスが発生してしまうのが現実だ。


 例えば、従来のメインストリームモデル向けSSDコントローラー(4チャンネル×毎秒36億転送)の場合、NAND側の理論帯域は毎秒14.4GBだが、オーバーヘッドを差し引いた実効速度は毎秒10GB前後にとどまってしまう。実際に、この構成の現行SSD(PHISON Electronicsの「PS5031-E31T」コントローラーの搭載モデルなど)で読み書きの速度をテストをすると、シーケンシャルの結果は毎秒10GB前後になる。


 もし、速度を稼ぐためにチャンネル数を2倍の8チャンネルに増やせば、4レーンのPCIe 5.0バスにおいて実効速度を極限まで引き出せるようになる(毎秒約14.5GB)。しかし、その分だけ消費電力とコストが跳ね上がってしまい、排熱面の制約が大きいノートPCへの搭載は難しくなってしまう。


 加えて、8チャンネルのままNANDを毎秒48億転送に高速化すると、理論帯域が毎秒38.4GBとなり、今度は4レーンのPCI Express 5.0バスの理論最高速度(毎秒16GB)を大幅に超過してしまう。言い換えればオーバースペックすぎる状況だ。


 そこで導き出された“最適解”が、この段の冒頭で触れた「4チャンネル構成のまま、毎秒48億転送のNANDに対応する」という手法だ。これにより、NAND側の理論帯域を毎秒19.2GBに広げることができる。オーバーヘッドが30%ほど発生するものの、それを差し引いても実効速度は毎秒14GB超となり、4レーンのPCIe 5.0バスの理論性能をフルに引き出せるようになる。


 忘れてはならないのは、この「毎秒48億転送」という速度はコントローラーメーカー単独で達成したわけではないという点だ。キオクシアが開発した毎秒48億転送(Toggle DDR 6.0)対応の次世代NAND「第9世代BiCS FLASH」を始めとして、フラッシュメモリの着実な技術進化もあって、初めて実用化される。


 つまり、コントローラーメーカーとNANDメーカーがエコシステムとして歩調を合わせ、次世代NANDのポテンシャルをいち早く引き出す形で協調して完成させたのが今回の新しい設計なのだ。


 「速度」「コスト」「消費電力」の全てを最適化できる“新設計”にいち早く対応し、今回のCOMPUTEX TAIPEIで実製品としてアピールできたのは、クライアントPC向けSSDコントローラー市場をけん引し続けるPHISON ElectronicsとSilicon Motionの2社だ。


 一方で、これまでローエンドのPCI Express 4.0(PCIe 4.0)規格にとどまっていたRealtek Semiconductorがコストパフォーマンスを武器にPCIe 5.0のエントリーSSDコントローラー市場についに参入し、InnoGritは次世代のサーバ向けPCI Express 6.0(PCIe 6.0)対応SSDコントローラーに注力するなど、各社の戦略の違いがより明確になる展示となった。


●PHISON Electronics:クライアントPC向けSSDコントローラーも注力


 PHISON Electronicsのブースでは、主力展示こそデータセンターやAI(人工知能)向けSSDのコントローラーに移りつつあったが、クライアント向けソリューションにおいてもトップメーカーとしての“層”の厚さを見せていた。


PS5037-E37T:毎秒48億転送対応次世代メインストリーム


 「PS5037-E37T」は、PCIe 5.0 x4(4レーン)対応クライアント向けSSDコントローラーのメインストリームモデルだ。1月の「CES 2026」で初披露されたもので、DRAMレス/4チャンネル構成でありながら。最大毎秒48億転送の高速NANDに対応し、シーケンシャルリードは最大毎秒14.9GB、シーケンシャルライトは最大毎秒13GBを実現している。


 特筆すべきはその電力効率だ。ブースには消費電力を表示した図が展示されており、シーケンシャルアクセスのフルロード時でもSSD全体の消費電力が最大約4.5W(コントローラー単体では2.3W未満)に抑えられているという。


 これにより、一般的なM.2 2280サイズだけでなく、2242/2230といった小型フォームファクターにも対応可能となり、ノートPCやポータブルゲーミングデバイスへの搭載を現実的なものにしている。


  ブースで担当者に話を聞いたところ、本製品は2026年第3四半期にエンジニアリングサンプル(ES)の出荷を開始し、2026年末までには量産準備が整う予定だという。


 なお、毎秒36億転送に対応する現行のクライアントSSD向けコントローラー「PS5031-E31T」については、より低価格なPCIe 5.0対応SSD向けに併売するという。2025年に発売された「PS5028-E28」についても、ワークステーション/小型サーバ向けSSD向けとして継続販売するとのことだ。


PASCARI:PCIe 6.0対応リファレンスデザイン


 エンタープライズ向けの展示として、次世代規格となるPCI Express 6.0に対応した「PASCARI」ブランドのSSDリファレンスデザイン基板(E1.SやE3.Sフォームファクター)もいち早く披露し、データセンター領域における技術力の高さをうかがわせた。


●Silicon Motion:AI PCへの最適化をアピール


 Silicon Motionでも、PCIe 5.0対応SSDコントローラーの毎秒48億転送対応新製品を投入しつつ、エッジデバイス(AI PC)に向けた最適化をアピールしていた。


SM2524XT:PS5037-E37Tの有力な対抗製品


 「SM2524XT」は、COMPUTEX TAIPEI 2026に合わせて発表されたPCIe 5.0 x4対応SSDコントローラーの新モデルで、TSMCの6nmプロセスで製造される。DRAMレス仕様で、PHISON ElectronicsのPS5037-E37Tへの“対抗馬”という位置付けだ。


 本製品も4チャンネル構成で最大毎秒48億転送のNANDに対応しており、シーケンシャルリードは最大毎秒14GBに達する。さらに注目すべきは、ランダムアクセスが最大250万IOPSと、後述するDRAM搭載ハイエンドモデル「SM2508」に匹敵する点だ。DRAMレスでありながらこれほどの高いパフォーマンスを実現しつつ、アクティブ時のコントローラー単体の消費電力は最大2.5Wに抑えている。


 Silicon MotionのPCIe 5.0世代における機能的な目玉として「SCA(Separate Command Address)」アーキテクチャの導入がアピールされている。これはNANDフラッシュのインタフェース規格「ONFi 5.2」などで追加された標準機能を活用し、コマンドとアドレスをデータバスと分離して送信する技術だ。


 同社ではSCAによるハードウェアレベルの低遅延化に加えて、ファームウェアの最適化、SLCキャッシュの専用割り当てなどを組み合わせることで、AI推論などで多発する細分化されたデータアクセス(KVキャッシュなど)の応答性を向上することで「AI PC向け」に相応しい最適化を実現している。


SM2508:DRAM搭載のハイエンドコントローラー


 SM2508は、2024年にリリースされたPCIe 5.0 x4対応SSDコントローラーで、DRAM(キャッシュメモリ)としてDDR4/LPDDR4メモリを搭載できる。8チャンネル構成で毎秒36億転送のNANDに対応しており、シーケンシャルリードで最大毎秒14.5GB、シーケンシャルライトで最大毎秒14GB、ランダムアクセスは最大250万IOPSを実現しながら、アクティブ時の消費電力を最大3.5Wに抑えたことが特徴だ。


SM2504XT:毎秒36億転送対応メインストリームモデル


 「SM2504XT」は、毎秒36億転送対応のNANDに対応したPCIe 5.0対応DRAMレスSSDコントローラーだ。こちらもメインストリームSSD向けの既存製品だが、SM2524XTの下位モデルという位置づけで販売が継続される。


 余談だが、本製品でも先述のSCAアーキテクチャには対応している。


SM2324:USB4 Gen 3x2対応のポータブルSSDコントローラー


 少し変わり種だが、Silicon MotionではUSB4 Gen 3x2(USB4 Version 1.0/USB 40Gbps)に対応する「SM2324」というポータブルSSD向けSSDコントローラーも販売している。


 本製品は4チャンネル構成で最大毎秒4000MBのリード/ライト性能を有している。また、電源制御に欠かせない「USB PD(Power Delivery)コントローラー」を内包しているため、USB4対応SSDをワンチップで構築できることが最大の特徴だ。


 チップ自体は既に量産体制に入っており、搭載製品は2026年末までに登場する見込みだという。


●Realtek Semiconductor:コスパや付加価値で勝負


 SSDコントローラーのトップ2社は、対応するNANDの速度を引き上げるという“正攻法”で勝負を仕掛けている。それに対し、Realtek Semiconductorはコストパフォーマンスを重視したコントローラーや独自の付加価値を付与したコントローラーで明確な差別化を図っている。


RTS5781:エントリークラスのPCIe 5.0対応SSD向けに開発


 PC向け内蔵SSD用コントローラーとしては、PCIe 5.0x4対応の新型「RTS5781」を中心に展示していた。これはDRAMレス仕様で、4チャンネル構成の毎秒36億転送NANDに対応している。理論上の最大リード/ライト速度は毎秒1万MB(毎秒10GB)で、ランダムアクセスは140万IOPSとなる予定だ。


 担当者にインタビューした限り、本製品はまだ“開発中”で、チップの完成は2026年末を見込んでいるという。スペック的にはPHISON ElectronicsのPS5031-E31Tなどと同等で、コストパフォーマンスの良さを武器に、2027年以降PCIe 5.0のエントリークラスSSD市場へ食い込んでいくことが予想される。


RM1220:“いろんな機能”をてんこ盛りできるUSB SSD向けコントローラー


 「RM1220」はUSB 3.2 Gen 2x2対応のSSDコントローラー……なのだが、今回のCOMPUTEXでは“付加価値”にフォーカスした展示で目を引いていた。


 まず目を引いたのはNFCやE Ink(電子ペーパー)を組み合わせたソリューションだ。PCに接続しなくてもストレージの空き容量や健康状態、使用時間といった情報をE Inkに表示したり、専用アプリを入れたNFC対応スマートフォンから画像を転送できたりするという。


 また、RM1220を搭載するSSDに、自社のBluetooth 5.2コントローラーSoC「RTL8762ESF」を搭載することでBluetooth連携機能を追加するというデモ展示も興味深いものだった。


 この展示では「スマホとBluetooth通信できている間のみSSDのアクセスロックを解除する」「iOSの『探す(Find My)』機能で紛失したSSDを捜索する」といった、セキュリティと利便性を両立する新しい提案をしていた。


PC周辺機器/ネットワーク機器用コントローラーも展示


 RealTek Semiconductorは、SSDコントローラーに限らず、さまざまなSoC/コントローラーチップを取り扱っている。


 「RTL9151AS」は新製品の1つで、1つのPCI Expressバス接続から「有線LAN(2.5GBASE-T)」「USB 3.2 Gen 2(USB 10Gbps)」「Serial ATA」といった入出力ポートをまとめて増設できるマルチI/Oブリッジだ。PCに複数のポート増設したい場合に使える。


 「RTL8261D」は、10GbEに対応する新型のシングルポートPHY(物理層)チップだ。従来製品と比較して消費電力が抑えられており、100mの光ケーブルを使った場合でも消費電力が1.46Wだという。ただ、担当者としては「まだ満足していない」とのことで、さらなる消費電力の抑制を目指すという。


●InnoGrit:PCIe 6.0対応コントローラーを披露


 データセンター/サーバ向けに特化したSSDコントローラーを手掛けるInnoGritは、4レーンのPCI Express 6.0(PCIe 6.0)対応コントローラーを披露していた。


Crestone IG5686:PCIe 6.0 x4対応で超ハイパフォーマンスを実現


 「Crestone IG5686」はPCIe 6.0 x4対応の次世代SSDコントローラーだ。NVMe 2.3に準拠し、NAND容量は256TBまでサポートする。


 シーケンシャルリードは最大毎秒28GB、シーケンシャルライトは最大毎秒22GB、ランダムアクセスはリード700万IOPS、ライト500万IOPSと、現状のPCIe 5.0 x4対応SSDコントローラーよりも高いスペックを実現しているそうだ。


 COMPUTEX TAIPEI 2026では、製品としてのSSDにも興味深い製品が複数あった。詳細は別記事で紹介する予定だ。



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