【コラム】開幕仕様のままヨーロッパラウンドへ。入賞の喜びと、アストンマーティン&ホンダの問題点が浮き彫りになった苦境

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2026年06月19日 22:00  AUTOSPORT web

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2026年F1第7戦バルセロナ・カタルーニャGP ランス・ストロール&フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
 2026年F1第6戦モナコGPでは10位入賞を果たした一方で、第7戦バルセロナ・カタルーニャGPでは圧倒的最下位で2台リタイア。アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームとホンダはヨーロッパラウンド開幕の2連戦で、天国と地獄を味わうことになった。ただし、その明暗はクッキリと分かれていたわけではなく、ほぼすべてが『暗』だった。

 AMR26が苦手とする高速コーナーと、RA626Hが苦手とする長いストレートがないだけに、モナコではこれまで以上の戦いができるのではないかという淡い期待を、チーム自身が抱いていた。しかし実際には真逆で、モナコだからこそマシンの問題点が浮き彫りになってしまった。

 低速コーナーで「これまでに経験したことがないミッドコーナーでの酷いアンダーステア」に苦しみ、マシンが曲がらず。ブレーキング時には「ダウンシフトとエンジンブレーキの一貫性のなさ」に苦しみ、スロットルを閉じてブレーキングをしてもエンジンブレーキが思いのほか掛からず、パーシャルでスロットルを踏み続けているような感覚に見舞われることもあれば、エンジンブレーキが激しく効いてリヤがロックして引きずられるようなこともあった。

 どちらにも共通して言えるのは、コーナーごと、ラップごとに挙動が異なり、一貫していないこと。もしアンダーステアでもブレーキング時の不安定さでも、常に悪いのであればそれに合わせて限界で走ることはできる。しかし挙動が毎回異なるのであれば、ドライバーは限界ギリギリまで攻めていくことができない。マージンを残さず限界まで攻めていれば、想定と異なる挙動を見せた瞬間にマシンは前か後ろか右か左に飛んで行ってしまうからだ。

 それがFP1のヌーベルシケインでのフェルナンド・アロンソのクラッシュであり、決勝の最終コーナーでのランス・ストロールのクラッシュでもあった。ガードレールに囲まれミリ単位の正確性が求められるモナコだからこそ、その一貫性のなさが大きなリスクになり、ドライバーたちが攻められず、いつも以上にパフォーマンスを落とすことになってしまった。Q3進出どころかQ1突破もならず、キャデラックに0.602秒もの差を付けられて最下位に沈んでしまった。

「モナコは特殊なサーキットだから速く走ることができるんじゃないかと期待していたけど、セットアップの問題ではなくもっとマシンの根本的な問題だからね。車高や前後のサスペンションを変えるだけではどうにもならない問題を抱えている。ブレーキングやダウンシフトに自信を持って走ることができないし、フロントグリップもなくてフロントが路面に食いつかない状態では、モナコではウォールギリギリまで正確なドライビングで攻めていくことなんてできないんだ。まったくもってマシンに自信を持って走ることができなかったよ」(アロンソ)

 アンダーステアについては、これまでのサーキットでは出たことのない異常なアンダーだったといい、モナコ特有の路面、速度域、メカニカル面の仕様によるものだった可能性が高いものの、最後まで原因は特定できなかった。

 ブレーキング時の挙動については、第4戦マイアミGP以降に着実に改善してはいるものの、まだ完璧とは言えなかった。ギヤボックスやそれと連携するパワーユニット側の制御の不完全さが浮き彫りにされたかたちだった。

 ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアはこう語る。

「ひとつは、ブレーキング時にドライバーがダウンシフトした際に、リヤがロックしないようにすること。そこはギヤボックス側の制御と、パワーユニット側がギヤボックスの求めるトルクをきちんと出してダウンシフトに対してエンジン回転を追従させてロックしないようにしなければなりません」

 難しいのは、2026年型パワーユニットではパーシャル回生と呼ばれる発電方法が、従来よりも多用されるようになったということだ。

「コーナーへのエントリーでは、スロットルは抜いていてスロットルオフの状態でもエンジンはほぼ全開のフル回転に近い状態で(MGU-Kの制動で)発電をしていて、そのなかでエンジンのトルクが多少でも上下してしまうと、ドライバーとしてはコーナリング中にリヤが押されたり引き込まれたりするように感じます。そうなるとモナコではマージンを持って走らざるを得ないので、それをいかに安定させて同じトルクでターンインできるようにしてあげられるかというのが重要で、そこをトライしている状況です」

 このパーシャル回生は立ち上がり時にも行われる。そのMGU-Kの制動力に対し、ICEが安定したトルクを発生しなければドライバーが安心して踏んでいけない。その大元にあるのは、ICEの非力さと燃焼セッティングの未成熟だ。

「トルクが安定しないということは、燃焼が安定していないということです。課題は、我々のICEの燃焼が安定していないことが原因で毎回安定したトルクが出ないというものでした。マイアミGPまではそれをどうすればいいのかというのを模索している状態でしたが、マイアミGP以降はこの方向性に行けばよくなるというというのが見つかって、その方向性でチューニングをどんどん進めていっていて、解決しなければならない課題は縮まってきてはいます。縮まってきてはいるんですが、まだ完全にゼロにはできていなくて、他のサーキットであればこのくらいの範囲に収まっていれば大丈夫なのが、モナコではもっと高いレベルが求められる(から問題点がより克明になった)というのが大きな違いだと思います」

 このドライバビリティの課題は、バルセロナ・カタルーニャGPでも露呈した。ターン1やターン4、ターン10などハードブレーキングも多く、なおかつブレーキングを残しながら100〜150km/hの速度でターンインしていくコーナーも多い。

 そしてダウンフォースが求められる中速・高速コーナーも多い。その結果、マシン本来の性能が丸裸にされ、トップから104.142%にもなる3.133秒差、キャデラックにも1.213秒もの差を付けられた。アストンマーティンだけが圧倒的な最下位だった。

 ライバルたちが着々とアップデートを投入してマシンパッケージ自体を進化させてきたのに対し、アストンマーティンは開幕戦仕様のパッケージのまま問題点の解消にリソースを奪われてきた。マイアミ以降の特殊なサーキットでは覆い隠されていたその差が、マシンの総合力が問われるバルセロナではっきりと露呈した。遅くなったのではなく、ずっと遅かった。覆い隠せていたものが、はっきりと見えただけのことだ。

 モナコでは入賞を果たしたとは言え、想像以上に厳しい現実が見えたヨーロッパラウンド開幕2連戦だった。それは、これから続くヨーロッパラウンドを示唆するものでもある。

[オートスポーツweb 2026年06月19日]

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