『黒牢城』 (C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会現在公開中の映画『黒牢城』。約24万人のフォロワーを持つ歴史系インフルエンサー「石田三成-ZIBU」さんに、作品の時代背景や見どころを【前編】【後編】に分けてたっぷり語ってもらった。今回は【後編】をお届けする。
第166回直木賞と第12回山田風太郎賞をW受賞し、「このミステリーがすごい!」第1位ほか史上初4大ミステリー大賞を制覇した米澤穂信の傑作ミステリーを映画化した『黒牢城』。籠城作戦を決行する荒木村重を本木雅弘、牢に囚われた危険な天才軍師・黒田官兵衛を菅田将暉が演じる。
物語は戦国時代の「有岡城の戦い」が舞台になっているが、大河ドラマ「豊臣兄弟!」でも同じタイミングでこの場面が描かれたため、注目を集めている。
そこで今回、シネマカフェでは約24万人(2026年6月現在)のフォロワーを持つ歴史系インフルエンサー「石田三成-ZIBU」さんへのインタビューを実施! 前編ではこの「有岡城の戦い」の時代背景や登場する人物を解説していただき、後編では『黒牢城』の感想、見どころなどを“ネタバレあり”でたっぷり語っていただいた。
今回は“ネタバレあり”の後編をお届けする。
【※以下、『国牢城』原作&映画のネタバレを含む表現があります。ご注意ください。】
菅田将暉が竹中半兵衛&黒田官兵衛の“両兵衛”に
――『黒牢城』で描かれる本木雅弘さん演じる荒木村重は、どう映りましたか?
前回、下剋上の時代を生き抜いた“ザ・戦国武将”と申したが、ある種ダークな部分が非常によく出ていて、でもそれだけじゃない、ちゃんと教養を持っていて、茶器がなくなって悔しがっていたりして、ちょっと可愛げのある人物として描いているのがいいなって思いました。
そもそも荒木村重殿は、これまで主人公としてあまり描かれていない人物。それに、戦国ファンの方々からすると、大河ドラマとか時代劇とかで見ている村重殿っていうのは、悲しいシーンが結構多い。要は信長公から嫌がらせを受けて、饅頭を刀に突き刺して食わされるというようなシーンが逸話でもあって、そればかり描かれているイメージ。
でも今作の村重殿は、本当に下剋上の時代を生き抜いてきて、ちょっとダークさもあるけど奥方も大事にするし、家臣たちの心をつかもうと必死になっている。その人間らしさが、後で話す黒田官兵衛殿と2人で話している時は、一番出ている。表と裏の顔の使い分けが、いい武将、面白い武将だなって思いながら見ておりましたぞ。
――確かに、とてもカッコよく描かれていました。
映画では秀吉様や柴田勝家殿、明智光秀殿とか名前だけ出てくるわけだが、村重殿の描き方が凄くいいからこそ、他の織田家臣たちもすごく重厚でカッコいいのだろうなって想像してしまう……!
――菅田将暉さん演じる黒田官兵衛はどうでしたか?
いや、菅田将暉殿演じる官兵衛殿も本当によかった…!かっこよかった…!儂が試写会に行ったあとの(Xでの)ポストは官兵衛殿…!!
何ですかね、何考えているか分からない不気味さっていうのが、まず良かった。前回も申したように、官兵衛殿は外交官として非常に優秀だった。だから官兵衛殿の言葉にみんな騙されちゃう。言ってることを信じちゃダメなのかもしれないけど、信じるしかないなって思わせる不思議な魅力を菅田殿演じる官兵衛殿は備えていたなって。
でもだからといって本当に冷酷無比な人ってわけでもなく、息子の松寿丸がどうなっているのかを気にしたり、その松寿丸が亡くなったっと知って、すごい涙を流していたり。さっきの村重殿の話とも重なるわけだが、底知れぬ不気味さはあるものの、人間味もある官兵衛殿を菅田将暉殿がうまく演じていたと思う!
――その菅田将暉さんが『黒牢城』「豊臣兄弟!」で竹中半兵衛と黒田官兵衛の“両兵衛”を演じたことが話題になっています。
2人は対照的な描かれ方をすることが多くて、冷静・知的・病弱な半兵衛殿と、行動的・活発に色々と策を積極的に仕掛けていく、動きの官兵衛殿ってイメージ。だから同じタイミングで半兵衛殿、官兵衛殿を演じるっていうのが、儂も最初、「どっちの方が合うのかな?」と思ってたけど、いやもう、どっちもめちゃくちゃ似合ってる。演じ分けがすごくうまい!
そこが本当に役者としてすごいなって思うのもそうだし、さっきの松寿丸の話も。結局最後、松寿丸を後の時代まで生かすのが半兵衛殿なので。映画では描かれていないが、原作で官兵衛殿は、エピローグに、息子が亡くなったのも憂き世の理で、複雑に絡み合う悪因の果てであったかもしれないって落ち込んでいるところに、半兵衛殿の義弟がやってきて、「実は松寿丸殿は生きております」と言って松寿丸を出すシーンがある。そこで官兵衛殿は「半兵衛殿は憂き世で、一命をとして善因を施された」みたいな感じで泣きながら終わるっていう。
官兵衛殿が有岡城を出た後は、もう半兵衛殿は亡くなっているので会えないけど、半兵衛殿が松寿丸を救ったからこそ、官兵衛殿はこのあともずっと羽柴の元で頑張っていくわけなので。三成とはあまり仲良くはなかったけど…。松寿丸、のちの黒田長政は非常に優秀な武将として、福岡藩の藩祖として江戸時代までずっと続いていくことになるので。だから、半兵衛殿は官兵衛殿のその先を繋いだ人物だった。
――とても泣けるエピソードです。半兵衛と官兵衛にもともと友情などはあったのでしょうか?
なかなかその時代の史料でどうだったかということは分からず、不明な部分も多い。でもやはり、ちゃんと松寿丸を守っているところ。この後も時代がどんどん移り変わっていくわけだが、関ヶ原の合戦で黒田と竹中っていうのはずっと一緒に行動して、最初竹中は三成側(西軍)についたけど、黒田が東軍につくとなると、「じゃあ俺も東軍つく」となって、竹中も東軍の方に行ってしまう…やはり両家の関係というのはずっと続いていく。その起点とも言える出来事ですね。
次ページ:村重&官兵衛以外に、印象に残った登場人物は?
村重&官兵衛以外の注目人物
「大坂の陣で活躍」
――『黒牢城』では村重と官兵衛がコンビを組み、次々と謎を解いていくという今までにないストーリーになっています。物語にどういった印象・感想を持たれましたか?
本当に斬新っていうのは第一にあって、「戦国×ミステリー」ってどうなるの?って、最初から本当に未知だった。最初の謎って誠に小さいことから始まってくるわけだが、その小さいけどなんか不思議だなっていう、事件が終わった後もモヤモヤ感が残るような終わり方をする。そしてそれがまた次の謎に繋がって、その謎もまたモヤモヤ感があって。その時の犯人は分かったけど、前と同じように不可解な話じゃないかみたいなことがあって、それが最後の謎まで繋がっていくみたいな形で、小さい謎がだんだん大きくなっていく。
その大きい謎っていうのが、村重殿とか、この有岡城に籠ってる人たちの集団心理とか、そして当時の人々の信仰とか、緊迫した合戦の中に生きる人々の感情ですね。こういったところに結びついていくという。ある種この時代のミステリーだからこそ、この戦国時代っていうのを背景にしたからこそできるミステリーだと思った次第!
――2人以外に印象に残った登場人物やエピソードなどはありますか?
いや、もう皆よかった。でも強いて上げるとしたら、オダギリジョー殿が演じていた、郡十右衛門という人物。村重殿の懐刀として活躍していた人だが、この郡十右衛門は、戦国最後の合戦である大坂の陣、これで豊臣側の武将として大活躍する。大坂の陣といえば、真田信繁(幸村)が有名なれど、郡十右衛門も真田と同じくらいめちゃくちゃ活躍していて、豊臣方の代表として徳川と交渉に行ったりしているような人物で、この人の人生は実はまだまだ先がある。
だから、最後のシーンで、郡十右衛門が村重殿と一緒に城を脱出して、村重殿が郡十右衛門に対して、「お前はわしのところなんかで死ぬんじゃない」みたいな、「ちゃんとした主君のところで死ね」っていうシーンがあったと思うが、それがとても印象に残っておる。
――そのエピソードを知っているかいないかで全然違ってきますね。
そう! 郡十右衛門って、むしろ有岡城攻めより、その何十年も後の大坂の陣が一番の見せ所になるっていうような人物なので、そこを何か捉えてる伏線のような村重殿のセリフがいいなと。この後、大坂の陣で豊臣のために戦うのか…と思うと。
――これから『黒牢城』を観るという方に向け、面白さ・見どころをお願いします。
まず第一に、現代社会のミステリーと違うっていう大前提が面白いと思う。犯人の動機含めて、この時代を生きている人々の思想観だとか、死生観だとか、慣習だとか、あとは信仰の問題、そういうのがうまくドロドロに混ざり合っている。ただのミステリーではなくて、なぜ武士は信仰をするのか、では民衆にとっての信仰とは何かとか、信仰に寄る人たちだからこそ、不可解なミステリーが起きれば皆が皆不安になったり。戦国時代という、本当に明日生きるか死ぬか分からない時代だからこそ生まれてくる思想や考え方だったり、信仰に関する問題だったりっていうのが根底にあって、それがまさかのミステリーを解く手がかりになってくるという、ここが本当にうまくミックスしているのが一番面白い!!!
好きな作品はタイムリープ系
「西軍勝利のため」
――金曜ロードショー放送後に毎週作品の感想をポストされていますが、普段から映像作品をよく観ていますか?また好きな作品があればお教えてください。
やはり歴史ものをよく見ていて、大河ドラマはばっちり見ておる!三成が出てくるものはとりあえずチェックしていて、一番好きな作品は「天地人」なのだが、小栗旬殿の三成がすごい好き。
ほかにもタイムリープ系の作品が好き。西軍勝利を毎年目指しているわけなので、そのためには、まず時間を遡らなければいけない。関ヶ原の慶長5年の9月15日が何回も繰り返されているわけなので。何度も繰り返して戦うようなものを見て、今年こそ西軍勝利を達成できないかなと考えております。
――今年の関ヶ原の戦いも刻々と迫っています。ぜひ意気込みをお願いします。
関ヶ原も『黒牢城』と同じで謎だらけ! 味方がなぜこのタイミングで寝返るのか…!? だから、やはり人の心を学ばなければいけない。なのでまずは『黒牢城』を観る! そこで武将や民衆、この時代の人々の心を知ることによって、儂ももう少し勉強させて頂いて、これから味方をたくさん集め、賛同者を増やして、今年こそ西軍勝利に向けて頑張りたいと思います!!!
【石田三成-ZIBU-】
戦国武将「石田三成」に扮し、時事ネタと歴史を絡めた投稿で、現在(2026年6月時点)Xのフォロワーは約24万人。 NHK放送「天下人のスマホ」シリーズのスマホ画面監修、著書に「いざ関ヶ原 スマホを持った 石田三成」(KADOKAWA)、「#石田三成のつぶやき」(サンライズ出版)。
『黒牢城』は全国にて公開中。
(text:cinemacafe.net)