グループからソロに――北山宏光&セントチヒロ・チッチ「境遇が似ている」と意気投合 極寒で壊れていく夫婦役を熱演

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2026年06月28日 12:10  クランクイン!

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クランクイン!

北山宏光&加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)  クランクイン! 写真:山田健史
 『ミスミソウ』でJホラーに革新をもたらした内藤瑛亮監督による最新作『氷血』で、初共演を果たした北山宏光と加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)。雪に閉ざされた世界で、“白い怪異”に飲み込まれていく夫婦の恐怖と心の揺らぎを鮮やかに体現。背筋の凍るような戦慄の物語へと、観客を誘う。グループでの活動を経て、アーティスト、俳優として活動している2人は「境遇が似ている」と意気投合。雪に閉ざされた極寒の撮影秘話をはじめ、お互いから受けた刺激、恐怖に立ち向かう方法など、たっぷりと語り合った。

【写真】撮り下ろし満載 全身ホワイトで魅せる北山宏光&加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)

■ホラー苦手な北山&大好きな加藤 真逆の2人が夫婦を熱演!

――北山さんは、ホラー映画初主演。加藤さんもホラー作品に初出演を果たしました。本作のオファーを受けた感想を教えてください。

北山:映画に出演するのは、7年ぶりのことです。僕自身、環境を変えてから1本目の映画であり、ホラーというジャンルにも初挑戦ということで、新しいことに飛び込んでいくのはいいことだなと思って。とてもワクワクしました。脚本を読んだ時には、文章ベースではホラーの演出をはじめ、“どれくらいの雪なんだろう”と雪景色について想像がつかない部分もあり、まずは稔という人物が抱える恐ろしさをどこまで深く掘り下げられるか、トライしてみようと思いました。

加藤:私はもともとホラーが大好きで。

北山:僕はホラーが苦手で。タイプが逆なんだよね(笑)。

加藤:このお話をいただいた時は本当にうれしく、絶対に成し遂げたいと思いました。内藤監督作品のファンでもあったので、「今回はどんな作品なんだろう」とワクワクしながら脚本を読ませていただきました。ホラーが大好きな私ですが、ホラー作品の脚本を読むのは初めてで。読んでみると「あー!」「うー!」という叫び声やうめき声が飛び交っていて、「これはどうなるんだ!」と楽しみになりました。

――北山さんから“稔が抱えている恐ろしさ”というお話があったように、稔はやさしい夫に見えつつ、次第にその裏に潜む冷酷さや狂気をのぞかせていきます。彼の二面性を表現する上では、どのようなことを大事にしていましたか?

北山:二面性という意味では、内藤監督とは「何パーセント」という話をしながら、稔の心の動きについて考えていました。観客の方々が次第に“あれ?”という違和感を覚えていけるように、ある基準があるとすると、この段階ではそこから裏の顔を何パーセントくらいにじませてみよう、ここでは何パーセントくらい引いてみようと、少しずつ揺らしていく感じですね。

――稔の持つ恐ろしさにはとてもリアリティがあり、ゾクゾクしました。クライマックスに向けていろいろな表情を見せるキャラクターに、演じる面白さを感じた部分もありましたか。

北山:そうですね。とても楽しかったです。最終的に稔は…(ネタバレを気にして)言えないな(苦笑)! ただ初のホラー映画で、とてもいい経験をさせていただいたなと感じています。クランクアップを迎えたラストカットのシーンでは、特殊メイクにもトライさせていただいて。撮影の裏側を目にしても、みんながホラーというジャンルをどれだけエンタメとして完成させられるかと、いろいろなアイデアを絞っていました。ご覧いただく方にも、ぜひエンタメとして楽しんでいただきたいです。

――加藤さん演じる悠希も、健気で穏やかな笑顔を見せつつ、その美しさが恐ろしく、不穏なものに映る瞬間があります。ホラー好きとして、どのようなこだわりを込めていましたか。

加藤:撮影に入る前には、監督から「『ババドック 暗闇の魔物』を観ておいてほしい」と言われました。現場でも監督とたくさん話し合いながら、悠希の顔や首、腕の角度や、動かすスピードについても研究を重ねていました。すごく楽しかったです! これまでホラー好きとして作品を見てきた経験が、大活躍しました。悠希は基本的に孤独や弱さを抱えた役柄ですが、その先に彼女のある表情が見えてきます。ホラー好きの私としては、大好きなモードで。「これだ!」とうれしくなりました。


■極寒の会津ロケ…乗り越えられた秘訣は?


――真っ白な雪の風景がポイントとなる本作。お二人が雪に倒れ込むシーンや、雪深い道のりを進んでいくシーンもありました。2025年の2月、厳冬期の福島で行われた撮影は、雪や寒さとの戦いでもあったのではないでしょうか。

北山:ものすごい量の雪が積もるので、道路も見えなくなってしまうんです。撮影場所に行く時にも本来、曲がるべき道が雪で見えなくなっていたり、僕たちが芝居をしている間にも雪がどんどん積もっていくので、車両部の皆さんが雪かきをして帰り道を作ってくれたりして。

加藤:雪景色は本当に美しくて目には喜びがあるんですが、体は正直なので。どうやったら体が温まるのかという研究をしていました。

北山:そんなことをやっていたの?

加藤:毎日温かいスープを水筒に入れて、寒くなったらそれを飲んだり。薄着のシーンでは、体にホットジェルを塗るようにしていました。体がポカポカするんです。

北山:そういうのがあるんだ! 僕はやっていなかったので、すごく寒かった…。それ、早く教えて(笑)。

加藤:すみません(笑)。悠希が雪に倒れ込むシーンは本当に寒くて、体がガクガク、ブルブル震えて。悠希から出てくる声や表情も、すべてリアルな反応です。

北山:ずっと泊まり込みで撮影をしていたし、みんな一緒に雪国で生活しているような雰囲気もあって。言葉にはしなくとも、現場にはスタッフさんも含めて僕らも「撮り切るぞ!」という団結力があったような気がしています。

――厳しい寒さも団結力を高めたのですね。

加藤:「このスープ、美味しいよ!」って声を掛け合ったり。

北山:そうそう。「これ、あったかいよ!」とか「ここ、電波入るよ!」とかね。湖の上を歩くシーンは、僕たちもガチガチに震えていて。「子どもに耐えられる寒さなのかな」と心配していたんですが、(劇中の息子)晶は逃げずにやり遂げた。本当にすごいですよ。カットがかかった瞬間、「寒い、寒い!」って車の中に走って行きました(笑)。

――お話を伺っていても、撮影を楽しんだことが伝わります。夫婦役として共演した感想を教えてください。

加藤:北山さんは、みんなに分け隔てなく落ち着く空気をくれる方。だからこそ、一致団結できたんだと思います。そして役に入った瞬間、ガラッとその空気が変わる。その変化に、私も奮い立たされました。稔は役柄的にちょっと怖いところがあるので、カットがかかった後に、北山さんがおしゃべりをしてくださると安心するんですよね(笑)。寒くて辛い面もあったけれど、みんなで楽しみながら良いものを探求していくような日々でした。

北山:チッチの音楽シーンでの活躍ももちろん知っていたので、「どんな子なんだろう」と思いながら会ってみたら、猫のような方でした。人見知りで、まずは遠くからそっと様子を伺っているというか(笑)。最初はそんな感じだったけれど、僕らはどこか境遇が近いところもあって、一緒に撮影していくうちにいろいろなお話をさせてもらいました。お芝居で対峙(たいじ)しても、なんでもできる子なんだと驚きました。豊かな感性を、自らの肉体で表現する力がある。すごいなと思いました。


■北山宏光、ソロ活動3年目「強くなった」

――たしかにグループでの活動を経て、アーティスト、俳優として活動しているお二人は、歩んでいる道のりも近しいところがあるように感じます。ものづくりに向かう姿勢に共鳴する点や、刺激を受けることはありましたか。

加藤:曲作りのことや、お芝居にはどうやって向き合っているのかも教えていただきましたし、私はグループから一人になって不安な部分もあったので、そういうこともたくさん聞かせていただきました。

北山:チッチのライブも観に行かせてもらって、「これからどういったことをやり、何を作っていくんだろう」とワクワクしました。職業的に同じことをやっていても、アプローチの仕方や感性がいい意味でまったく違うので、すごく刺激をもらいます。

加藤:意気投合したのは、二人ともおいしい食べものが好きということですね(笑)。

北山:そう(笑)。いろいろなモチベーションになるのは、おいしいもの!

――グループから一人になる時の不安には、北山さんも共鳴できましたか。

北山:その時の僕には曲もなければ、仕事もない。何もない状態からのスタートでした。1年以上かけて丁寧に荷物を下ろしながら、20年くらいやり続けてきたことをゼロにして。そこから新たに始めるというのは大変なことでもありましたが、いろいろな縁がつながって今回もお話をいただくことができました。振り返ってみると、自分も強くなったのかなという気もしています。

――今、どのような充実感を味わっていますか。

北山:何かを作り出す時の楽しさ、辛さもあるけれど、すべてに血が通っている。自分の財産となるものが、増えていくのかなという気がしています。そして一人になったことで責任感も増したけれど、プロジェクトを動かすときのスピード感も速い。「こういうものがやりたい」という自分の感性と、実際に動き出して形にしていくスピード感。その距離は年々、近くなってきているように感じています。

加藤:その感覚、すごく分かります。今の私にはメンバーはいませんが、こういうことをやりたい、こういう曲が作りたいと思った時に、すぐに話せるチームがいます。またセルフプロデュースをしつつ、自分のやっていることを愛してくれるファンの方がいると思うと、自分を認めてもらえているんだという喜びもあります。今は、やりたいことがずっと湧き出てくるような感じがしています。

――そうした歩みの先で、大好きなホラー映画に出演する機会に恵まれたというのは、とてもステキなことですね。

加藤:好きなものがあること。そしてそれを「好き」と言い続けて、よかったなと思っています。

■加藤千尋、“おじいさん”からもらった金言を励みに邁進

――劇中の一家は、逃げ場のない恐怖へと巻き込まれていきます。お二人にとって、緊張感や恐怖に立ち向かう上で大事にしている考え方があれば教えてください。

北山:過去にも極度の緊張を覚える瞬間はたくさんありましたが、極論を言えば、死ぬわけではないから大丈夫…というか。「何を失っても怖くないぞ」と自分に言い聞かせながら、「恐怖なんてぶっ壊してやる」という気持ちで前に出ていくこともありました。そもそも僕たちがやっていることは尊くて美しいけれど、同時にくだらないことでもある。そんなふうに一歩引いて物事をフラットに捉えたり、応援してくれている人たちのことを考えたりするようにしています。

加藤:私は自分との戦いを怖がってしまうタイプなので、絶対に一人では生きていかないと決めています。一人で考え込むと頭も固くなるので、絶対に誰かに弱音を吐きます。人に頼るってとても大事なことだと思っていて。信頼できる人に打ち明けることで強くなれたり、誰かがくれた言葉が糧になることもあるので、抱え込まないようにしています。

――この時、とても支えられたなと感じる言葉はどのようなものでしょうか。

加藤:「グループから一人になるんだけれど、怖いんだよね」と同じカフェにいた70代くらいのおじいさんに話していたら、「大丈夫。あなたの二本足で立って、いつかイエスを見つけなさい」と言ってくれたことがあって。その言葉は、自分の中でずっと大事にしています。

北山:…70代くらいのおじいさんに!? どういう状況?

加藤:常連さんだったんです。

北山:なるほど、何度か話したことがある人なんだね。たしかにその言葉は、金言だね。僕は、錦織一清さんからかけてもらった言葉を、ずっと大事にしています。

若い頃に、舞台でアドリブをやって、それに対してお客さんが反応する…ということをやっていた時期があって。それを見た錦織さんが、「“今日の笑いを取る”ということはいいけれど、お客さんのチケットは初めての小遣いを握りしめて買ってくれたものかもしれないし、その日に向けて汗水垂らして働いて買ってくれたものかもしれない。そう考えると、まずは毎日ちゃんとクオリティの高いものを届けて、それをスタンダードにすることの方が正しくないか? リピーターももちろんだけど、その人たちだけのために芝居をするのではなく、その日しか観られない人、初めて観に来た人のために芝居をしよう」と言ってくださった。

舞台が何公演と続いたとしても同じ熱量で感動を届け、コンサートにしてもライブ感はもちろん大事だけれど、お客さんがどういう思いでチケットを握りしめて、ここに来ているのかをきちんと考えなければいけない。僕たちのやっている仕事は、応援してくれたり、観に来てくれる人たちがいて初めて成立するものなんだと、エンタメの真髄を教えていただきました。

(取材・文:成田おり枝 写真:山田健史)

 映画『氷血』は、7月3日より全国公開。

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