【レビュー】"ドラゴンの王女"の面影宿すミリー・オールコックと"宇宙最凶のロボ"モモアが駆け抜ける、タフで型破りな『スーパーガール』

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2026年06月28日 16:00  cinemacafe.net

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『スーパーガール』© & TM DC © 2026 WBEI
スーパーマンにバットマン、そしてジョーカーも…。次々と現れるスーパーヒーローやヴィランの映画。 

人気キャラクターや人気シリーズを仕切り直してリブートを繰り返す近年の映画界で、スーパーヒーロー映画も飽和状態といわれ、もう“お腹いっぱい”という方は多いはず。そんななかにあって、6月26日(金)から『スーパーガール』が日米同時公開された。

昨年公開された“最高の犬映画”の1つ、ジェームズ・ガン監督の『スーパーマン』のラスト数秒にほろ酔いで登場したスーパーガールが主人公だ。『スーパーマン』で話題を読んだ、あの遊び好きで賢い(?)“スーパードッグ”・クリプトの飼い主である。

これまでの予告編やポスタービジュアルでも紹介されてきたように、今回のスーパーガールはかなり異質だ。ブロンドのサラサラヘアと赤いマントをなびかせ、健康的で明るく、素直でキュート。品行方正、清廉潔白、頑張り屋さんなところが可愛い! というキャラじゃない。

映画批評サイト「ロッテントマト」での本作の評価は、批評家スコアが57%フレッシュ(6月27日現在)と渋い数値ではあるものの、主演のミリー・オールコックには「圧倒的」「新しいスーパーガール」と絶賛が集まっている。

「ゲーム・オブ・スローンズ」のスピンオフ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」で注目を集めたミリー・オールコックには大いに期待していたが、間違いなかった。これまでのイメージとは大きく異なる、ミリー・オールコックのスーパーガールに出会えるだけで、本作を観る価値は十分にある。

1984年の映画『スーパーガール』で当時新人だったヘレン・スレイターが演じたスーパーガール。TVシリーズ「ヤング・スーパーマン」(2001〜2011)ではローラ・ヴァンダーヴォートが演じ、メリッサ・ベノイストが演じた「SUPERGIRL/スーパーガール」(2015〜2021)は大人気作品となった。そして製作事情から残念ながら『ザ・フラッシュ』(2023)の特別出演だけにとどまったサッシャ・カジェに続き、ミリー・オールコックは史上5人目のスーパーガールとなる。

※以下、一部物語の展開に言及する表現がございます。ご注意ください。
スーパーガールことカーラは、従兄のスーパーマンことクラーク・ケント(デイビッド・コレンスウェット)と同様に、地球ではパワーの源である“黄色い太陽”を浴びることで、アルコールに酔うことすらできないほど生命力がみなぎり、その能力を最大限に発揮できる。

なのに本作のカーラは“赤い太陽”が輝く別の惑星で、パーティー三昧の日々を送っている。1人きりではない。隣には、故郷のクリプトン星を出たときからの“相棒”で親友の愛犬クリプトがいる。

地球にいるスーパーマンから連絡が来ても、カーラは実にそっけない。「いつ戻ってくる?」とか「さみしくないか」とか、そんな言葉しか口にしないからだ。彼女たちが生まれたクリプトン星はすでに崩壊しており、いまや故郷といえるのは地球しかない。にも関わらず、本作のカーラは、ほぼ地球にはいない。

“赤い太陽”の惑星で、思う存分に酔って羽目を外す。それが23歳の誕生日を迎えるカーラの日常なのだ。

クリプトと暮らす宇宙船は、ベージュとオレンジが基調のレトロな雰囲気で、その内部はトレーラーハウスのよう。従兄の活躍を讃える新聞やら空き瓶が散乱していて、スーパーガールのスーツは床に放ったまま。レコードプレーヤーやコーヒーメーカー、ヘッドフォンなど地球で気に入ったものを持ち込み、好きなものだけに囲まれた空間。まるで、彼女自身を守る繭に抱かれているようにも見える。

そんな平穏を、宇宙の略奪者集団ブリガンズのクレム(マティアス・スーナールツ)が襲い、クリプトが毒に侵されてしまう。解毒剤を持つのはクレムのみ。残された時間はわずか3日間。「絶対に助けるからね」とカーラは、クレムたちに家族を殺された少女ルーシー(イヴ・リドリー)とともにその行方を追うことになる。

ところが、この2人がなかなか噛み合わない。クレムを追うという同じ目的で行動をともにしても、ルーシーは生真面目で真っ直ぐすぎるし、カーラはちょっと自信過剰で身勝手すぎるのだ。

ただ、こうしたカーラのキャラクターにはちゃんと理由があった。赤ちゃんのころに地球に送られ、ケント夫妻の愛情をたっぷり受けて伸び伸びと育った純朴なスーパーマンとの決定的な違いだ。

カーラがクリプトと一緒に地球にやってきたのは、滅びゆく故郷の星で死にゆく人々を目の当たりにしながら14年間も過ごした後。大切なものをあまりに多く失ったせいで、喪失感や絶望、悲嘆にとらわれていた。新しい環境にも馴染めず殻にこもるカーラの唯一の心の拠りどころとなり、毎日笑わせてくれたのがクリプトだったのだ。

また、ある日突然、つつましく生きてきた何の罪もない家族をクレムたちに無惨に殺されたルーシーは復讐に燃えていた。勇敢で、家族の剣を手に機転を利かせて立ち回ることができるルーシーは、カーラに守られてばかりのか弱い少女ではなかった。

やがて、最初は噛み合わなかったバディは“世界”を救うためではなく、痛みを共有したお互いを救うために闘うことになるのだ。

鋼のように頑丈な身体と怪力、目から熱線を放ち、透視もできるスーパーガール。スーパーマンと同じチート級パワーを発揮する機会が、散々じらされたなかで、ついにきた!というシークエンスはやはり痛快だ。

カーラはこのスーパーパワーをどう駆使していくのか。クライマックスで答えを見つけたときには、熱い感情が込み上げてくる。タフで型破りなスーパーガールがさらに好きになるはずだ。

2人の追跡劇や退廃的な惑星の雰囲気、そしてクライマックスの砂ぼこりが巻き上がる街でのバトルは、海外レビューにも上がっているようにジェームズ・ガンの『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』シリーズと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の世界観を混ぜ合わせたようなテイストだ。

「うちのワンコに何してくれるの!?」という『ジョン・ウィック』のような動機もあり、女性ヒーロー最強級の圧倒的パワーの持ち主だけに、ワンダーウーマンや(他社ながら)キャプテン・マーベルと共闘したらどうなるだろう、とワクワクする考えもよぎる。

本作で製作総指揮をつとめたジェームズ・ガンは、ミリー・オールコックを「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」での演技を見てスーパーガール役に推したという。

同作で演じたのは少女時代のレイニラ・ターガリエン、炎で全てを焼き尽くすチート級の強さを誇るドラゴンを有するターガリエン家の王女だ。かつて「ゲーム・オブ・スローンズ」でエミリア・クラークが演じて大ブレイクした、“ドラゴンの母”デナーリスの祖先にあたる。

政略結婚よりも、ドラゴンに乗って闘うことを好む王女は、最大の理解者を奪われて自分の使命を見失ったまま生きてきた。やがては壮絶な痛みと怒りを抱えながら、女性であるがゆえに欲しても得られなかった王座をドラゴンにものを言わせて自ら獲りにいく運命を辿る。

少々向こう見ずながらも気骨があり、自らの力で進む道を選ぶところなどはカーラの中にレイニラを見出す瞬間がある。

一方、イヴ・リドリーが演じたルーシーには、その生真面目さや高潔さに「ゲーム・オブ・スローンズ」でターガリエン家と対になるスターク家をつい重ねてしまった。

そして忘れてはならないのが、「ゲーム・オブ・スローンズ」にも出演していたジェイソン・モモアが喜々として演じる宇宙最凶の賞金稼ぎ・ロボだ。

懸賞金のかかったターゲット以外には興味がないのかと思いきや、そこはモモア! アクアマンも素晴らしかったが、ワイルドで豪胆な魅力的なアンチヒーローを見事に体現。ロボの粗野な振る舞いにのぞく、隠しきれない優しさが大好きだ。葉巻をくわえながら空飛ぶバイク「スペースホグ」を駆って登場するたびに、劇場の興奮をかっさらうに違いない。

こうしたキャストたちの好演に“救われている”本作。カーラは無事にクリプトを救うことができるのか。誰よりも痛みを知る彼女は最後に、どんな決断をするのか。見届けてみてほしい。

『スーパーガール』は全国にて公開中。





(上原礼子)

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