2026年F1第8戦オーストリアGP 決勝スタートシーン 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は2026年第8戦オーストリアGPの戦いを振り返った。
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■低迷を経て、ついに今季2勝目を勝ち取ったラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選1番手/決勝1位
ジョージ・ラッセルはオーストリアで、ここ最近の低迷に終止符を打ち、アンドレア・キミ・アントネッリの勢いを止めるために完璧な週末を過ごす必要があった。結果という観点から見れば、間違いなくそれを成し遂げたと言える。
ポールポジションを獲得したラッセルは、スタートからフィニッシュまで事実上のレースリーダーであり続け、チームメイトより10ポイント多く獲得。3カ月と3週間にわたる未勝利期間にも終止符を打った。
ラッセル自身も、週末中に時には迷走していたことを認めている。金曜日にはアントネッリから0.6秒も差をつけられ、さらに日曜日のレースではチームメイトよりもタイヤ摩耗に苦しんだ。
しかし彼は必要なことを正確にやり遂げた。予選Q3でイエローフラッグが出た際には規則を完璧に読み取り、レースでは、フェルスタッペンがルイス・ハミルトンを抜き去る前に築いた6秒のリードが決定的な意味を持った。
もちろん、今後、修正していかなければならない自身の問題はある。しかしそれ以上に、ラッセルが今季2勝目から得た精神的な解放感は大きいだろう。アントネッリが明らかに優位に立ち、精神面でもラッセルを追い込んでいたタイミングで、メルセデス内における自身の存在感を再び示したのである。
今回の勝利は、ラッセルのシーズンの流れを変える可能性がある、極めて重要な結果といえるだろう。
■強いマシンを得たフェルスタッペンが今季最高位
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選5番手/決勝2位
オーストリアでようやくトップ争いが可能なマシンを手にしたマックス・フェルスタッペンは、ポールポジションと優勝をわずかな差で逃したものの、改めて自身の競争力の高さを証明した。
レッドブルが投入した大規模な空力アップグレードはRB22に劇的な効果をもたらした。予選最後のアタックでは、ターン9進入時、リヤウイングの問題でクラッシュしたものの、走り切っていればポールポジションを獲得していたと思われる。
幸運にもレッドブルには十分な新パーツが残されており、フェルスタッペンに完全なアップグレード仕様のマシンをレースに向けて用意することができた。その結果、彼はグリッド5番手から高い競争力を持ってレースを戦うことができた。
卓越したレース勘によって、序盤にシャルル・ルクレールとアントネッリを抜き去り、その後ハミルトンとの激しい攻防にも勝利した。3スティントすべての終盤で、ラッセルより速いペースを発揮していたフェルスタッペンだが、本人はレース後半にマシンリヤ部で何かがおかしくなり、進撃を妨げられたと考えている。
それでもアントネッリの追い上げを抑えるだけの余力は残しており、今季最高成績を手にするとともに、その実力を改めて世界に示した。
■ミスから見事に挽回したアントネッリ
アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス):予選4番手/決勝3位
オーストリアGPの重要な場面、つまりQ3終盤とレース序盤ではすべてがラッセルに味方し、アンドレア・キミ・アントネッリはその逆の立場に立たされた。
予選Q3終盤の黄旗についてダッシュ上の表示を読み違え、最後のアタックラップを中断してしまった。それは他ならぬアントネッリ本人のミスだ。本来であれば少なくとも2番手につけるペースはあっただけに、非常にもったいない判断だった。
そしてレースでは、自身で「最初の数周は興奮しすぎていた」と認めたように、3度もコースから外れ、序盤に抜いたルクレールとフェルスタッペンにポジションを奪われた。
最初のミディアムタイヤではアントネッリはあまり快適に走れていなかったが、ハードタイヤに履き替えると完全にコース上で最速のパフォーマンスを発揮した。
ラッセルが最初のピットストップを行った時点で、すでにチームメイトから6.6秒遅れていたアントネッリは、1スティント目を延長したことでさらに9秒を失った。一時は15秒以上の遅れを背負ったが、そこから驚異の追い上げを見せ、最終的にはチームメイトから2秒未満、フェルスタッペンからわずか0.3秒差でフィニッシュした。
序盤のミスを除けば、今回も非常に速く、そして安定したドライバーであることを証明した。もっと悪い結果になっていても不思議ではなかった週末から、貴重な15ポイントを持ち帰ったことは大きい。
■チームメイトが得意とするコースで大差をつけたピアストリ
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選7番手/決勝4位
オスカー・ピアストリは、バルセロナでの非常に苦しい週末から見事に立ち直った。彼は、マシンへの感覚が前戦とはまるで別物だったと語っている。
通常ならランド・ノリスを倒すのが非常に難しいサーキットであるにもかかわらず、FP1開始直後からピアストリは好調で、速く、そして安定したラップタイムを刻み続けた。
レース1周目にノリスを抜いたことは重要だったが、ルクレールを攻略するのは簡単ではなかった。そのためピアストリが5番手まで上がった時点では、トップ4は手の届かない存在に見えた。
しかし、ハミルトンが3ストップ戦略を採ったことで、ピアストリは彼の前を走り、最終スティントでは4位を脅かされることなく走り切った。
昨シーズンの大半でランキング首位に立っていたドライバーとしては、物足りない結果に映るかもしれない。しかしノリスが得意とするサーキットで、ピアストリは大差をつけてリードした。この結果は、彼の士気を大きく高めるものになるだろう。
■僚友の問題行動に乱されなかったローソン
リアム・ローソン(レーシングブルズ):予選9番手/決勝9位
リアム・ローソンは、FIA F2トップランナーのニコラ・ツォロフが来季レーシングブルズで自分のシートを奪う可能性があるという噂に対して、素晴らしい形で反応した。
オーストリアのFP1で岩佐歩夢が起用され、ローソンは欠場、才能豊かなアービッド・リンドブラッドに対して不利な状況で週末を開始した。しかし残りのフリー走行と予選でリンドブラッドを上回る速さを見せ、予選9番手という印象的な結果を残した。
レースでは2人のペースはほぼ互角で、フロント勢にトラブルがなかったこともあり、トップ10圏内の下位でフィニッシュした。一方、リンドブラッドがチームオーダーを無視したことによって発生したチーム内バトルが、ローソンの成熟度を試す場面となった。
チーム内で争う状況ではないと伝えられていたにもかかわらず、リンドブラッドが追い越したことに、ローソンが怒りを露わにしたのは当然だった。それでもローソンは、強引な動きや無謀なオーバーテイクをすることなく、チームが最後のピットストップで本来の順位に戻すことを待った。
再びF1でのキャリアを懸けて戦っているなかで、競争力と成熟さを示した週末となった。
[オートスポーツweb 2026年07月02日]