2026年F1第9戦イギリスGP FIA会見 フレデリック・バスール代表(フェラーリ)
F1発祥の地でふたりのチーム代表が舌戦を繰り広げた。メルセデスのトト・ウォルフ代表とフェラーリのフレデリック・バスール代表だ。
発端はF1第9戦イギリスGPの前の週に行われた第8戦オーストリアGPのレース後の定例会見で、ウォルフがフェラーリのアップデートを次のように皮肉ったことだった。
「我々はマクラーレンとレッドブルと同様にモントリオールで大きなアップデートを投入して、その後のレースでは数えるくらいのわずかなアップデートにとどまっていた。例外があるとしたらフェラーリで、大規模なアップデートを何度も行っている。まるで資金もリソースも無限にあるみたいだ。ルールはみんな同じはずなのに……少なくともそうであってほしい」
するとイギリスGPの金曜日に行われた国際自動車連盟(FIA)の公式会見に出席したバスールは、すぐさまこう反論した。
「トトからそんな発言が出るなんて……皮肉だとしても度が過ぎている。レッドブルやメルセデスがアップデートに成功すると、彼らは天才扱いされる。でも、フェラーリが開発をすると、不正をしていると言われる。もちろん、冗談で言ったと信じたいが、我々はほかのチームより決して多くのパーツを持ち込んでいるわけではない。たとえ、多くのアップデートを持ち込んだとしても、それはこの世界ではアップデートの定石であることは誰もがわかっているはずだ。同じアップデートでも最後の2レースで0.2秒ほど速くなるより、最初の5レースで0.2秒ずつ速くなるほうがパフォーマンスの効率がいいからだ」
するとウォルフがすぐさま反論した。
「フレッド(バスールの愛称)はメディアの『見出し』だけを読むのをやめて、私の発言の『中身』をきちんと読むべき。そうすれば、私が何を言ったのか正しく理解できるはずだ。私は決して彼らが不正をしているなんて言っていない。ただ、これだけ多くのアップデートを序盤から投入したら、シーズン後半は苦しくなるだろうという、コストキャップの事実を述べただけだ」
このようにチーム代表同士がメディアを通して舌戦を繰り広げることは珍しくない。記憶に新しいところではウォルフと元レッドブルのチーム代表だったクリスチャン・ホーナーも犬猿の仲だった。チャンピオンシップ争いをしているチーム代表はメディアを利用してライバルを揺さぶるのは常套手段だからだ。
そのホーナーが昨年のイギリスGP後に解任されたとき、ウォルフはこう言っていた。
「彼の発言は物議を醸し、それによって我々との間に亀裂も生じたが、このスポーツの主要人物のひとりだった。彼はドライバーに匹敵するほどの存在感があった。そのような人物はいまはもはや私しか残っていない絶滅危惧種となってしまった。もしかしたら、フレッドもそうかもしれない」
ウォルフにとって、バスールはホーナーが去った後に残された友人であり、今シーズンのチャンピオンシップを戦う最高のライバル。メルセデスがチャンピオンシップ争いを演じるのは2021年以来、5年ぶりのことであり、久しぶり舌戦を楽しんでいるように感じる。
これに対して、2023年からフェラーリのチーム代表となったバスールがチャンピオンシップ争いを経験するのは、今回が初めて。ウォルフとの舌戦にもまだ余裕がないように見える。
つまり、今シーズンのF1は、このふたりの関係の今後にかかっている。ふたりの仲が良好になるようなことがあれば、それはメルセデスかフェラーリがチャンピオンシップ争いを大きくリードするとき。逆に舌戦が今後も継続していけば、チャンピオンシップ争いは混沌としていくだろう。
[オートスポーツweb 2026年07月10日]