
金融・決済事業を強化しているNTTドコモが、傘下の企業を束ねたNTTドコモ・フィナンシャルグループ(以下、ドコモFG)を7月1日に始動させた。純粋な持株会社ではなく、同社自身もdカードやd払い、iDなどの決済事業をドコモから承継。傘下には住信SBIネット銀行(8月3日からはドコモSMTBネット銀行)やマネックス証券、ドコモ・ファイナンス、ドコモ・インシュアランスといった銀行、証券、保険を担う企業がそろった格好だ。
ドコモFGの社長には、ドコモの財務部長やNTTで副社長を務めた廣井孝史氏が就任した。通信事業が主力のドコモから切り離すことで、より金融事業に柔軟な対応をしつつ、ガバナンスを強化するのが狙いだ。企業同士を束ねることで、金融同士のシナジー効果を高める目的もある。ドコモFG発足にあたり、それを証明する新サービスも導入する。一方で、早くから金融に着手していた他社と違い、通信との融合は道半ばだ。そんなドコモの新体制を読み解いていく。
●リアルな接点を銀行、証券でフル活用するドコモFG
「決済にとどまらない、デジタル金融サービスを統合的にお客さまに提供する体制が整った」――こう語ったのは、ドコモFGで代表取締役社長を務める廣井氏だ。GOLD、PLATINUMといった上位カードの加入者が1200万を超え、d払いのコード決済ユーザーも7500万を突破したドコモFGだが、ここに傘下の住信SBIネット銀行やマネックス証券、ドコモ・ファイナンスを集結させ、それぞれを連携させていく構えだ。
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手始めに、「d NEOBANK」としてサービスを提供してきた住信SBIネット銀行のブランド名を、社名変更に伴い、「ドコモの銀行」に刷新する。ここには、「ドコモのお店で銀行のサービスを受けられることを分かりやすくする」(住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏)狙いがある。ドコモの銀行にブランドを変更して、ドコモショップとの連携も強化していく。
廣井氏によると、「新たに銀行サービスのラインセンスを取得した一部店舗において、8月から銀行口座の開設と初期設定をサポートする」という。さらに、「ネット銀行に関するサービスのスマホ教室なども実施していきたい」(同)という。ドコモは1月にマネックス証券の口座開設サポートをドコモショップで実施していたが、銀行はそれ以上の勢いで対応店舗を増やしていく。
円山氏によると、現在、198店舗が確定しており、住信SBIネット銀行のFC店舗と合わせて「270店舗以上で私どもの銀行の口座開設や預金の受け入れが行えるようになる」。さらに、5年をかけて、この店舗数をトータルで1500まで拡大していく計画だ。「既にドコモショップのオーナーの方からはご賛同をいただいているため、早ければ年度内に1000店舗の達成も実現できる」(同)とペースは速い。
ドコモショップを急ピッチで増やす背景には、住信SBIネット銀行の成功体験があるという。円山氏は、「住宅ローンでは既にナンバー1になっているが、ネットは全体の5%。残りはリアルの店舗で、これがわれわれの成功の方程式だった」と明かす。ドコモFGの傘下に入ることで、「同じことが預金でもできると確信している」という。ドコモがグループ全体で持つ、リアルな接点を活用することで、金融事業全体を強化していこうとしているというわけだ。
もともとドコモFGは、業界内で一定のポジションを築いている会社の集合体といえる。住信SBIネット銀行は、預金残高の規模でネット銀行の2位につけており、住宅ローンの融資実行額や残高はネット銀行トップ。後者については、三菱UFJ銀行や三井住友銀行といったメガバンクに匹敵する規模を持ち、現在、取扱額は2025年に11兆円を超えている。
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マネックス証券も、SBI証券や楽天証券には及ばないが、口座数は6月末時点で300万弱まで拡大しておりネット証券業界では3位の規模。さらに、ドコモ傘下に入ってから、新規口座開設数を大きく伸ばしている。ドコモFG自身が手掛けるdカードも、GOLD、PLATINUMの割合が非常に高く、その数は1100万を超えている。この点は、キャリア系の金融サービスの中でも強みになる。
●最大4.5%還元のグループ連携と、データを武器にする「金融AI」構想
グループ内で、相互送客を図る動きも強化する。1つ目が、dカードとドコモの銀行の連携だ。dカードの引き落とし口座をドコモの銀行に設定し、8月20日から開始されるdアカウントでの連携を実施すると、9月から、dカードを使ったスマホ決済(dカードを支払先に設定したd払い、Apple PayやGoogle Payのタッチ決済、iDのいずれも対象)のポイント還元率が基本の1%から3%にアップする。
この特典は初年度が対象だが、13カ月目以降はdカードの利用額に応じて還元率が変わる。最大はdカードPLATINUMで前々月16日から前月15日までの1カ月間の利用額が50万円以上だった場合の2%。dカードGOLD、GOLD Uで同額を支払った際には、1%のポイント還元が追加される形だ。50万円を下回ると一気に還元率が落ちてしまう点は気になるところだが、dカードとドコモの銀行の連携を進める効果はありそうだ。
ドコモFG傘下の企業同士の連携も、ポイント還元で強化していく。枠組みは上記と同じで、dカードのスマホ決済にマネックス証券での取引分を上乗せするというもの。dアカウント連携を完了させ、8月下旬以降の対応を予定しているドコモの銀行からマネックスへの自動入金(スイープ)設定を行い、かつdカード積立とd払い残高積立の合計約定金額が月3万円以上の場合、最大で4.5%まで還元率が上がる。
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店舗やポイントでの連携を進めていくドコモFGだが、もう1つのアプローチが金融AIだ。現時点ではサービス開始のタイミングや機能などの詳細は明かされておらず、構想に近い発表だったが、廣井氏は、その特徴を「年齢や資産額といった属性だけでは分からない価値観やライフスタイルを最初から理解したAIが、お客さまをサポートする」と語る。
アプリは、ドコモFGが提供するものとして開発する予定で、近々失効しそうな「期間・用途限定ポイント」の残高に基づいたおすすめの使い方を教えてくれたり、ライフステージに合わせて運用残高を増やすかどうかを相談できたりといった内容になるようだ。また、前月の“推し活”での支出や、クーポンの活用状況を教えてくれるといった機能も備わることがうかがえる。
ドコモは、dアカウントに多様なユーザーデータを保持しており、それを活用することでユーザーのライフスタイルをあらかじめ推定し、理解できる。こうした機能は、ドコモが投入を予定するAIエージェントアプリの「SyncMe」にも搭載される予定で、現在、モニターを募って試験サービスを提供している。金融AIが目指す機能を見る限り、利用しているデータやコンセプトはSyncMeに近い。グループの金融サービスに特化させている点が、大きな違いといえそうだ。
●通信との融合にキャッチアップできるか、BaaS起点のプラットフォーム提供には強みも
ただ、ドコモFGは発足したばかりで、ゼロからauじぶん銀行を立ち上げた他、クレジットカードや決済事業をauフィナンシャルサービスに合流させたKDDIと比べると、グループ同士の連携は道半ばだ。ソフトバンクは金融事業の再編を2025年に実施したばかりだが、PayPay銀行(当時はジャパンネット銀行)やPayPayカード(当時はワイジェイカード)はそれぞれグループ入りしてから時間がたっており、サービス連携も進んでいる。
また、本体である通信事業との連携もまだ手薄だ。例えば、KDDIはau、UQ mobileのユーザーに「auモバイル優遇割」として住宅ローンの金利引き下げを行っている。ソフトバンクも、PayPay銀行で近いサービスを提供中だ。KDDIは「auバリューリンク マネ活2」をはじめとした料金プランで、au PAYへの還元の条件にauじぶん銀行を含めている他、預金残高に応じた還元も実施しており、通信と金融の融合が料金面で進んでいる。
「ポイ活プラン」のように、dカードやd払いとの連携は進んでいるが、スピード感をもって、こうした取り組みを銀行や証券に広げていけるかが重要になりそうだ。
対法人でも、通信や銀行、クレジットカードをしっかり連携させていく必要がある。住信SBIネット銀行はBaaSを推進しており、NEOBANKという形で他社がそれぞれのブランドを冠し、いわばバーチャルな銀行を開設している。
ドコモFGでは、これを「スマートライフプラットフォーム」としてパッケージ化し、銀行だけでなく、ローンやNISA、保険、dカード、d払いなどを他社に提供していく方針だ。「事業機会やポートフォリオを多様化させたいニーズがあれば、われわれの他に、(親会社のドコモの)通信サービスもホワイトレーベルとして提供することが可能」(同)というように、通信サービスの提供も視野に入っているという。
座組ができる前だが、日本航空が始めた「JALモバイル powered by ahamo」も、こうした事例の1つといえそうだ。NEOBANKとしてBaaSを提供している企業は多いが、ここにドコモの回線もパッケージに含めて売り込んでいければ、より収益性も高まり、本業である通信事業にとってもプラスになる。各種金融、決済サービスだけでなく、通信までまとめて「as a Service」として提供できる企業は少ない。この分野で住信SBIネット銀行が先行していることは、ドコモFGだけでなく、ドコモ全体にとっても大きな強みになるかもしれない。
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