デイ2も総合首位で終えたサミ・パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2026年WRC第9戦ラリー・エストニア 2026年WRC世界ラリー選手権第9戦『ラリー・エストニア』は7月19日(土)、デイ2のSS8からSS16までの計9本(総距離約150km)が行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位でデイ2を終えた。
2番手にはTGR-WRTのオリバー・ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が25.0秒差、3番手にはヒョンデ・シェル・モービスWRTのアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)が52.1秒差でつけた。チームメイトのティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)は54.0秒差の4番手で、ヒョンデ同門の3番手争いはわずか1.9秒差のままデイ2を終えた。
また、日本の勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)はデイ1のリタイアにより全ステージで最先頭の出走順を担い、厳しい条件の中でデイ2を走り抜いた。
デイ2は今大会最大の難関となる約150kmの長丁場だ。午前はタルトゥ北部のペイプシ湖周辺の採石場と深い森のテクニカルセクションが混在する4本のステージ、午後は南部オテパー地域の超高速ロングステージ4本と、サービスパーク隣接のターマックで行われるスーパーSSで構成された。路面は終日完全ドライで、気温の上昇とともにタイヤへの熱的負担が深刻な課題となった。
前日の結果順で出走順が決まる本大会では、成績下位のドライバーほど先にコースへ送り出され、ルーズグラベルを掃き飛ばす不利な役割を担う。デイ1にリタイアした勝田は全9ステージを最先頭でスタートするという最も不利な立場に置かれた。勝田は次戦フィンランドに向けたテストモードと割り切り、グリップが得られない中でのマシンの挙動確認に専念した。
デイ2のオープニングSS8『Peipsiääre 1』は、採石場のセクションを抜けて木々が両脇に迫る狭い森のテクニカルセクションへと続く構成だ。全くグリップが得られないルーズグラベルの路面で、最先頭の勝田はアイスリンクを走るようにマシンを滑らせながらコースを切り開いた。
このSS8ではMスポーツ・フォードWRTのジョシュ・マッカーリーン(フォード・プーマ・ラリー1)に悲劇が訪れた。ステージ中盤の13.4km地点で電気系トラブルによりマシンをストップ。9分半以上のタイムを失い、上位争いから一気に脱落する事態となった。パヤリはデイ1の7SS連続ウィンに続いてSS8も全体ベストをマーク、連続ステージウィン記録を8へと更新した。
続くSS9『Mustvee 1』(10.67km)でもルーズグラベルのクリーニング効果によるタイム差が絶大だった。パヤリはSS1からの連続ステージウィン記録をついに9へと積み上げる。セスクスはステージ終盤で右フロントタイヤをデラミネーション(側面損傷)させ、最後の3kmで約6秒を失ってエバンスに総合順位を逆転された。
午前ループ最終のSS10『Peipsiääre 2』(24.39km)を前に、マッカーリーンはエキゾーストマニホールドの損傷が確認されデイリタイアが決定した。そのSS10でパヤリの9SS連続ウィン記録がついに止まる。ソルベルグが3.3秒差でトップタイムを記録し、今大会初のステージウィンを奪取したのだ。パヤリはステージ2番手にとどまったものの、リードは14.3秒のままで午前の3本を締めくくった。
SS11『Mustvee 2』(10.67km)では再走で形成された深い轍がドライバーたちを苦しめる展開となった。ソルベルグが2連続ステージウィンでパヤリに迫る一方、フルモーは残り5km付近でパンクに見舞われた。タイヤへのダメージを最小限に抑える精密なコントロールで走り切り、3番手の座を辛くも死守する。午前ループを終えてパヤリのリードは14.1秒で、一行はミッドデイ・サービスへと向かった。
ミッドデイ・サービスではタイヤ戦略が明確に分かれた。高い路面温度を見越したトヨタ陣営5台がハードタイヤ3本とソフトタイヤ2本のミックスパッケージを選択したのに対し、ヒョンデとMスポーツはソフトタイヤのみで午後の長丁場に挑んだ。
午後の舞台はオテパー地域へ移り、SS12『Kambja 1』(23.74km)から再スタートした。1走目のためルーズグラベルが路面を覆い、1番手スタートの勝田が再び路面掃除役を担い続ける。このステージでは中間スプリット(5.61km地点)で7台が10分の1秒まで同一タイムを記録するという、WRCの歴史でも稀有な超接戦が繰り広げられた。しかし後半で力強く抜け出したのはパヤリで、ステージウィンを奪還してソルベルグとのリードを18.1秒に広げた。
SS13『Otepää 1』(15.16km)ではヒョンデ同門の内なる戦いが激化した。アンダーステアに苦しんでいたヌービルがサービスでのセッティング変更を機に覚醒し、フルモーを3.9秒上回るタイムで3番手への猛追を開始する。フルモーはジャンプの踏み切りでマシンの姿勢を乱して土手に激突しかけたが、奇跡的に走り切って3番手をキープ。パヤリはこのSSも全体ベストをマークし、リードを21.4秒へと着実に広げた。
SS14『Kambja 2』(23.79km)の2走目は、露出した硬い岩盤がタイヤを激しく削る消耗戦だ。ヌービルが好タイムを続けてフルモーとの差を詰め続ける中、首位のパヤリに一瞬の冷や汗が流れた。高速コーナーでのオーバーランにより右リアを路傍の岩に接触させたが、ダメージは塗装の剥げにとどまった。パヤリはそのままソルベルグを4.4秒上回るステージウィンでリード差を25.8秒へと広げた。
SS15『Otepää 2』(15.16km)でヒョンデ同門の3番手争いが最高潮に達した。セッティング変更が完璧に機能したヌービルがデイ2で初のステージウィンを奪取。フルモーを4.2秒上回る圧倒的なタイムで総合タイム差を一気に1.9秒まで縮め、最終SSに向けた緊張感は極限に達する。首位争いではパヤリとソルベルグが7分40秒8で完全同タイムを記録し、2台の差は25.8秒のまま最終SSへと向かった。
デイ2の締めくくりはサービスパーク隣接のターマックに設けられたスーパーSS、SS16『Tartu vald』(1.76km)だ。グラベルタイヤで舗装路を走る特性から全車がアンダーステアに悩む中、ソルベルグがラウンドアバウトでのクリーンなドーナツターンを決めてステージベストをマーク。フルモーとヌービルは1分46秒5という10分の1秒まで同一タイムを記録し、2台の総合差は1.9秒のまま最終日へと持ち越された。パヤリはリスクを避けるクレバーな走りに徹し、無傷で首位の座を守り切った。
デイ2終了時点の総合順位はパヤリ(2時間8分34秒0)、ソルベルグ(+25.0秒)、フルモー(+52.1秒)、ヌービル(+54.0秒)、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)(+1分32秒8)の順だ。 パヤリはデイ2の9ステージのうちSS10を除く8ステージで全体ベストをマーク。圧倒的なパフォーマンスでリードを25秒以上に広げ、最終日を首位で迎える。
翌日のデイ3(最終日)は日本時間17時5分スタートのSS17『Kääriku 1』から始まり、パワーステージSS18(19時15分)まで全2本・約50kmの超高速スプリントで争われる。フルモーとヌービルのわずか1.9秒差による3番手の決戦が、最終日最大の見どころの1つとなる。
[オートスポーツweb 2026年07月19日]