向井理、“中年の危機”は「そこまで感じていませんが」――44歳で挑む新たな舞台を倉持裕と語る

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2026年07月31日 19:10  クランクイン!

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クランクイン!

(左から)倉持裕、向井理
 2023年に上演された『リムジン』で初タッグを組んだ、作・演出の倉持裕と主演・向井理が、2026年10月、新作公演『ブランク』で再び顔を合わせる。今回の舞台は、とある小さな弁護士事務所。そこで繰り広げられる人間のエゴと救済のドラマが描かれる。上演台本の初稿が完成した今、創作の手応えや公演への期待について、倉持と向井の両名に話を聞いた。

【写真】2度目のタッグに期待大! 向井理×倉持裕、インタビューショット

■「それを描きたかった!」と思えるものを演技で見せてくれた

――公演サイトに作品のあらすじやお2人のコメントが記載されており、舞台『リムジン』での共作や、お互いの印象について書かれています。

倉持:はい。『リムジン』は、自分自身でも分からないこと、名前のついていない感情や心理を表現したいと考えていて、それらをどう役者に伝えれば良いか悩みました。でも、向井くんも、その妻役の水川あさみさんも、こちらが「それを描きたかった!」と思えるものを演技で見せてくれた。最初に作家の中にしかなかった概念を、あれほど瞬時に俳優がとらえてくれることは滅多にあることじゃなくて、新鮮な体験でした。

向井:僕も、台本をいただいた時点で「正解がないな」と感じていましたし、こうすれば合格点が取れるという明確な答えは、本番中もずっとなかったです。

倉持:自分でもさほど理解できていないことを形にしようと挑んだのが『リムジン』で、その挑戦的な試みにしっかり応えてくれた俳優、という印象でした。

向井:俳優同士でどうキャッチボールするか? によって、まったく違うものに見えてくると思います。会話劇ですし、台本だけでは分からない面白さがありますよね。紙に書かれた二次元の世界をどう立体化していくか? という作業は本当に楽しいですし、『リムジン』は意図していない発見が多かった作品なので、『ブランク』も、正解を探すのではなく、面白い試行錯誤ができれば良いなと。

■「ああ、こういう距離感で伝わっていくのだな」

――今お聞きできる範囲で、本作の解説をお願いします。

倉持:小さな法律事務所の人間模様を描いているので、基本シチュエーションコメディの要素もあります。それが全体を包んでいて、主軸になるのが、向井くん演じる弁護士と、西田尚美さん演じる清掃員の女の関係性。この2人の部分は心理劇になりそう。弁護士は、女が語ろうとしない数年間――、これがタイトルの『ブランク』に繋がるのですが、彼女はこの期間に服役していたのでは? と疑っているけれど、表面上は疑っていないふりをする。女は「疑われているな」と気づいているけれど、気づかないふりをする。2人が実際に交わす会話と、内心思っていることが異なり、それは観客から見ても分かることなので、サスペンス要素もあると思います。

――公演サイトのコメント内に「中年の危機」というフレーズがありました。これは本作を紐解く上でキーワードになり得ますか?

倉持:どうだろうなぁ……。ただ、「中年の危機」を心身の変化と捉えると、向井くん演じる主人公だけでなく、登場人物全員にそのようなことを書いています。何かしらの変化によって考え方が変わってきたり、予期せぬ衝動が起こったり、そういう「変化」が裏テーマのひとつ。その中で、主人公は加齢による変化を感じていて、肉体的にも精神的にも、違和感を抱えながら生きている。そういう時間を切り取った作品でもあります。

向井:僕自身は中年の危機をそこまで感じていませんが、誰しも経験することなので、それらは細かな動きなどに現れそう。僕は元々、日常の中から何かを感じてもらえるような会話劇が好きで、観るのも好きなので、個人的に距離感の近い劇場が好み。特に本多劇場は、観ても、やっても、すごくいい。ワンシチュエーションものの会話劇で、少しずつ何かを積み重ねていき、「疑っている/疑われている」の関係性を描くなら、劇場との相性は重要ですよね。『リムジン』でやらせていただいた時に、「ああ、こういう距離感で伝わっていくのだな」という実感があり、そういう劇場と作品はすごく素敵だと思いました。水切りの跳ね石のように飛んで行く。そういう作品には、とてもヒリヒリします。

■自分でも「すごく丁寧に書いた」と思える

――書き上がったばかりの初稿を、早速向井さんが読まれたとお聞きしました。

向井:まだ(印刷した)紙でじっくり読めていないのですが、印象として「すごく余白のある台本」なので、これを、商業演劇として、エンターテインメントとして、どのように成立させるか? という難しさがあります。台詞にも、ト書きにも、とにかく余白が多いので、演出でどんな形にもなりそうだし、みんなとのコミュニケーション次第かもしれません。僕と西田さんの会話が多いので、そこはすごく細やかなシーンになりそう。僕らも「観客にこういうメッセージを受け取って欲しい」みたいなことは特になく、不思議な魅力が感じられる作品になれば、と思います。この作品がどうでき上がっていくかを最初に観られるのが僕だと思っているので、そこはすごく楽しみです。

――倉持さん、初稿を書き終えた感想や手応えはいかがでしょう?

倉持:今読み返していますが、客観的に見て「丁寧に書いた」と思えるし、何度も書き直しながら進めて行ったので、自分としては、そんなに文句はないです。これから稽古・本番に臨む上で、台本の段階からこれだけ準備しておけば、落ち着いて闘うことはできるだろう、そんな気持ちもあります。不安を抱えた武器を用意したつもりはなく、しっかりと闘えるはず。

――ご自身にとって、意欲作と言えそう?

倉持:そうですね、今一番やりたいことではあります。『リムジン』の時と同じような気持ちで、自分の好きなことを優先させてもらい、必勝パターンとか、作劇のセオリーとか、そういうことを意識せず書いた台本ではあるので、それは怖いことでもあるけれど、だからこそ楽しみな作品です。

(取材・文:園田喬し 撮影:渡部孝弘)

 舞台『ブランク』は、10月3日から25日まで本多劇場(東京)、10月28日にJMSアステールプラザ大ホール(広島)、10月31日に名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール(愛知)、11月3日にりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場、11月7日に仙台銀行ホールイズミティ21大ホール(宮城)、11月10日に富山県民会館ホール、11月13日から15日まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)にて上演。
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