
【写真】32名の子どもたちが舞台制作に挑戦!ネルケプランニング「夏休み!オン・ワークショップ2026」1日目の様子
◆初めての演劇挑戦に時間も忘れて夢中に
取材に入ったのは、ワークショップ初日の後半。稽古場では、参加者32名が大きな輪になって本読みの真っ最中だった。輪の中央には、講師を務める劇団おぼんろ主宰・末原拓馬ら講師陣の姿がある。今回のゴールは、本ワークショップのために末原が書き下ろした戯曲を最終日に発表することだ。全員がこの日初めて出会う仲間に物語、そしてセリフ。誰がどのセリフを担当するのか、講師陣やスタッフが調整を入れながら、全員が主人公の演劇を少しずつ立ち上げていく。その第一歩を、子どもたちは踏み出したばかりだ。
台本に出てくる漢字がまだ読めない小学校低学年の子たちは、スタッフや年上の参加者の力も借りながら、懸命に台本へメモを入れていく。子どもの輪の中には数人ごとにスタッフが入り、演劇に初めて触れる子どもたちが戸惑わないよう、丁寧にサポートしていた姿が印象的だ。休憩に入ると、どこからともなく子どもたちの「もう16時だよ〜」の声が聞こえる。時間を忘れるほど夢中になっていたのだろう。
休憩明けも、引き続き本読みが続く。実際に読み合わせてみた結果、ここはセリフを追加したほうがいい、ここは削ろう、と変更点が子どもたちに伝えられていく。その過程は、ワークショップといえど、実際に上演される舞台作品となんら変わりがない。キッズプロジェクトとはいえ、子ども向けにはしない。演劇を作るうえで大人や子どもという区別をせず、あくまで人と人とのやりとりを重ねて、おもしろい舞台を本気で作ろうとする。舞台制作を手掛けてきたネルケだからこその矜持が、稽古場の空気に滲んでいた。
◆歌の練習では体を動かしハイテンション!
そしてこのワークショップでは、舞台を創る経験だけでなく、誰かと何かを一緒に創るうえで大切なことも、しっかりと伝えていく。初日のこの日は、まだ全員が打ち解けておらず、どこかぎこちない雰囲気。声を出すことにも遠慮がちで、講師陣の声ばかりが響く時間帯もあった。すると、末原が「OKなら返事してね〜!」と明るく声をかける。次の指示からは、「はーい!」と子どもたちの声が聞こえ始めた。稽古場に子どもたちの声が広がると、ワークショップ自体の空気も、一段と和らいだものになっていった。
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劇中で歌う2曲の練習を終えると、続いては、冬のワークショップにも講師として参加していた振付家・演出家の美木マサオとともに、体を動かす時間へ。ここまで数時間、慣れないワークショップを頑張ってきた疲れも見せず、子どもたちはまるでいまワークショップが始まったのかと思うほど元気いっぱいに躍動する。音楽に合わせて体を動かしながら、美木は全員で手をつないでひとつの輪になるなど、自然とチームワークが高まる動きを取り入れていく。初めて出会った32名が、ひとつのカンパニーとなっていく種が、そこかしこに散りばめられているようだった。この種が最終日にどんな花を咲かせるのか、今から楽しみでならない。
この日のワークショップが終わると、終わりの会へ。プロジェクトリーダーを務めるネルケプランニングの下泉さやかは、「まず大事なのは挨拶」と繰り返し子どもたちに伝える。「明日も、到着したらまず挨拶をしよう。稽古場についたら『おはようございます』、帰るときは『お疲れさまでした』。挨拶をしてから、『着到板』を裏返してね」。いち役者として、稽古場での作法を丁寧に教えていく。こうした舞台のリアルを体験できるのも、舞台制作を手掛けてきたネルケのワークショップならではだろう。
こうして、ワークショップ初日は終了。約4時間、緊張しながら挑んだ子どもたちにとっては、きっと長い時間に感じられたことだろう。それでも、初めて出会った32名が同じ物語に向かって声を合わせ始めた今日は、きっと忘れられない一日になったはずだ。この小さな一歩が、数日後にどんな景色へとたどり着くのか。子どもたちの夏は、まだ始まったばかりだ。(取材・文・写真:双海しお)

