ハンガロリンクでアストンマーティンの2021年型マシン『AMR21』をテストしたジェシカ・ホーキンス(2023年)
アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームのドライバーアンバサダー兼ヘッド・オブ・F1アカデミーを務めるジェシカ・ホーキンスは、才能ある女性ドライバーと世界選手権の間に生物学的な障壁など存在しないと主張した。かつてWシリーズ(編注:2019年から2022年に開催された女性ドライバーのみで争う選手権)に参戦したホーキンスは、女性ドライバーがF1のグリッドに並ぶのは時間の問題であり、数年以内に実現する可能性があると信じている。
F1は、女性ドライバーのみで争われるF1アカデミーを通して、女性ドライバーを育成することに資金を投入している。このような考えを明かしたホーキンスはF1アカデミーについて、カートでの成功と最高レベルで戦う真のチャンスを結びつけることができるような、これまで欠けていた要素を提供する可能性があると考えている。
■「首の負担を感じたのは、女性だからではない」
ホーキンスは、F1マシンが人体にどのような負荷をかけるかを熟知している。ホーキンスは2023年にハンガロリンクでアストンマーティンの2021年型マシン『AMR21』を走らせ、女性ドライバーとして約5年ぶりに現代のF1マシンをドライブした。彼女はレース距離の約半分を走行し、首への負担を実感したが、その経験が女性には身体的に不利な部分があることを示したという見方を否定した。
ポッドキャスト番組『Road to Success』のなかで、ホーキンスは「女性にはF1で戦うのに十分な強さがあると、私は間違いなく確信しています」と語った。
「自分でレース距離の半分を走ってみて、私はレース距離を完走することもできただろうと確信しています」
「首は本当に大変でした。でも、誰であれ初めてF1マシンに乗れば、首には負担がかかります。それは私が女性だからというわけではありません」
「それに、それまでFIA F2や、その前のFIA F3でレースをしていたわけではありません。F1ドライバーでさえ、1年ぶりにマシンに乗れば、おそらくその日の終わりには首の痛みを感じるはずです。ですから、(首の痛みを感じたのは)女性だからではありません。首に問題がなければ、レース距離を走り切ることもできたでしょう」
これは、このスポーツにおいて長年繰り返されてきた異議に対する鋭い反論である。ホーキンスにとって、問うべきは「女性が身体的にF1に耐えられるかどうか」ではなく、シートを獲得するために必要なスキルや経験を積む機会が十分に与えられているかどうか」ということだ。そして彼女は、その状況が変わっていくと見ている。
■状況を変える力を持つF1アカデミー
ホーキンスは、自身のキャリアのなかで女性ドライバーがF1でレースをする姿を見られると思うかと問われ、きっぱりとこう答えた。
「あと数年かかると思います。それでも、必ず実現すると信じています」
「もしここで『そんなことは起こらない』と言ったら、私は自分自身を偽ることになります。私は実現すると信じていますからね。もし『ノー』と言えば、それは私がこれまで信じてきたすべてのことに反することになります」
またホーキンスはF1アカデミーについて、状況を一変させる可能性を秘めたものと捉えている。なぜなら、彼女がキャリアをスタートさせた頃には存在しなかった、競争力のある道のりが、今の若い女性ドライバーたちには開かれているからだ。
「今は状況が違います。F1アカデミーを見てみれば、私があの年齢の頃には、あんなことは夢にも思いませんでした。それに、ほんの数年前までどんな状況だったのか、今のドライバーのなかには実感していない人もいるかもしれません。この選手権には、ドライバーを真に飛躍させる力があると思います」
「参戦しても、うまくいかずに脱落してしまうドライバーもいるでしょう。一方で、成功を収めるドライバーも出てくるはずです。そして成功を収めたドライバーは、上のステージへ進み、F1のシートやモータースポーツ界でのチャンスを争うにふさわしい実力を持っているのです」
彼女の最後の発言は非常に重要だ。ホーキンスは、F1アカデミーが女性ドライバーにF1のグリッドを保証すべきだと言っているのではなく、女性ドライバーがF1にふさわしいと証明できる環境をF1アカデミーなら整えられると考えているのだ。
次なる女性ドライバーの登場を何十年も待ち続けてきたF1にとって、ホーキンスのメッセージは楽観的であると同時に、挑戦的でもある。つまり、身体的な理由という言い訳は、もはや通用しなくなっているということだ。
[オートスポーツweb 2026年08月14日]