2026年F1第2戦中国GP スタートシーン メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チームのチーム代表を務めるトト・ウォルフは、F1においてハイブリッド化の恩恵を最も受けた人物のひとりと言えるかもしれないが、すでにその次なる章へと進む準備を整えた。FIA(国際自動車連盟)がF1の次のレギュレーションでV8エンジンを復活させることを検討するなか、ウォルフはこの構想を熱烈に支持する姿勢を打ち出し、内燃エンジンが再び主役となる未来を歓迎している。
現行のレギュレーション下でメルセデスが圧倒的な成功を収めてきたことを踏まえると、ウォルフのこの姿勢は興味深いものだ。2014年にターボ・ハイブリッド時代が幕を開けて以来、メルセデスは126勝を挙げ、コンストラクターズ選手権のタイトルを8回、ドライバーズ選手権のタイトルを7回獲得した。それでもなおウォルフは、F1の次の章がよりシンプルで、より本能的な興奮を呼び起こすものであるべきだと考えている。
■「純粋主義者」のメルセデス代表、V8エンジン復活計画を歓迎
FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、2030年または2031年からV8エンジンを復活させることを提案した。この計画では、内燃エンジンへの依存度が大幅に高まり、バッテリーに頼る割合を抑えることができる。ヴォルフにとって、その魅力は明らかだった。
「私は会長やステファノ(・ドメニカリ/F1のCEO)、そして他のエンジンメーカーと話し合いを行っている」とウォルフは『RacingNews365』に語った。
「今のエンジンは非常に複雑だが、我々はそれを理解し始めている。というのも、このエンジンによってレースが変わったからだ。ある人はオーバーテイクが多いからという理由で日曜日のレースを好むが、そうでない人もいる。しかし、結局は最も適応力のあるドライバーが勝つのだ」
「スタート前にグリッド上で10秒間エンジンを空吹かしするのには我慢ならない。まるで火災報知器のようだ」
「ルイス(・ハミルトン/スクーデリア・フェラーリHP)を見てみよう。彼は変化し、パフォーマンスも劇的に変わった。キミ(アンドレア・キミ・アントネッリ/メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム)も非常によくやっているし、他のドライバーたちは適応しなければならない」
「中長期的な視点、現時点で言えば今後3、4年の期間で見ると、我々はパフォーマンスの50%以上を担う内燃エンジンに回帰することになるだろう」
「ビン・スライエムは素晴らしいサウンドのV8エンジンと、限定的なバッテリーの使用を望んでいる。(内燃エンジンとバッテリーの出力比率は)80対20程度で、合計1000馬力といったところになるだろう」
「自然吸気(NA)になるかどうかはわからないが、F1は今そちらの方向へ向かおうとしていると思うし、純粋主義者として私はそれを歓迎する」
ウォルフの姿勢はこの最後の言葉に端的に表れている。メルセデスはハイブリッド技術を軸に現代F1での黄金時代を築き上げたが、彼自身はF1がより大きなエンジン音を響かせ、内燃エンジンを重視する方向へと進むことを好ましく思っているということだ。
■CEOは“わかりやすさ”重視の規則を望む
F1のCEOを務めるドメニカリもまた、将来のレギュレーションを適切なものにすることに集中しているが、彼は懐かしさを重視するよりも、次のレギュレーションをわかりやすいものにすることを重視している。ドメニカリは次世代のマシンについて、より軽く、理解しやすいものにして、持続可能な燃料や電動化といった要素を維持したいという。
「将来のレギュレーションに関する主な目標は、物事を可能な限りシンプルに保つことだと考えている。持続可能な燃料やもちろん電動化も採用し、より軽量なマシンをF1に導入すること、そして特定のモードにおいてドライバーが可能な限りハードにプッシュできる機会を維持することだ。なぜなら、これこそF1ドライバーたちが常に求めてきたことだからだ」
「その他の技術面については、FIAが適切な案を準備してくれるものと信頼している。今年の終わりまでには議論すべきパッケージを準備できるはずだ。我々には選択肢がふたつある」
「もし現行のサイクルが終わる2031年まで待つとしたら、FIAがまったく異なるレギュレーションを提示することを妨げるものは何もない。もちろん、チームがそれに参加したければ参加できるし、そうでなければ参加しないという選択肢もある。極端な言い方かもしれないが、その基本的な考え方は理解してもらえるだろう」
「そのことに先回りして対応するために何をするかについて合意を得られるのであれば、チームやメーカーとの間で適切な体制を構築する必要がある。したがって、これはシーズン終了までに我々全員の間で議論されることになるであろうもうひとつの課題だ」
「現在、いい話し合いが数多く進められている。ご想像の通り、それぞれの理由で様々な案が出ている。しかし年内には将来に向けた適切なパッケージを提示できる体制が整うはずだ」
FIA、F1、マニュファクチャラー、そしてチームによって、現在のサイクル終了後のことについて活発な議論が行われており、V8エンジンの復活という案は、ただの懐かしさを持つ夢物語ではなく、現実味のある可能性となりつつある。特筆すべきは、ハイブリッド時代において最も成功を収めたチームの代表のひとりが、この構想を強く支持しているということだ。
[オートスポーツweb 2026年08月18日]