なぜ今、大人世代向けロックイベントなのか 福岡ソフトバンクホークス・後藤社長と『BURRN!』編集長・広瀬和生氏が語る「THE GREATEST ROCK FUKUOKA」の狙い

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2026年08月19日 18:30  オリコンニュース

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『BURRN!』編集長・広瀬和生氏、福岡ソフトバンクホークス・後藤芳光社長
 福岡ソフトバンクホークスは、同球団主催のロックイベント「THE GREATEST ROCK FUKUOKA」(愛称:FUKU ROCK、8月29日開催)の公式サイトにて、後藤芳光社長とハードロック/ヘヴィ・メタル専門誌『BURRN!』編集長・広瀬和生氏との対談記事を公開した。

【動画】伝説のロックバンド、JOURNEYが福岡を熱くする

 同記事では、みずほPayPayドーム福岡を舞台に初開催される本格ロックイベントについて、なぜ今「大人世代向け」のロックイベントを立ち上げたのか、その背景や狙いが語られている。ジャーニー、ナイトレンジャー、LOUDNESS、RED WARRIORS、HOUND DOG、BAND-MAIDという豪華ラインナップを引っ提げ、「野球以外のエンターテインメント」に本気で挑むホークス。同フェスの企画背景と狙い、見どころを聞いた対談の内容を紹介する。

■ かつて洋楽の大物がいた福岡、いま何が起きているのか
――まず、今回「大人世代向けのロックイベント」を新たに立ち上げられた理由からお聞かせください。

【後藤】「福岡ドーム」という名前だった頃、実は洋楽の大物がよく来ていたんです。ボン・ジョヴィ、ビリー・ジョエル、マドンナ、マイケル・ジャクソン……そういう時代があった。でも最近は特に、洋楽アーティストを福岡に呼べなくなってしまって。

【広瀬】僕もボン・ジョヴィ、観に行きましたよ。

【後藤】そうなんですよ。今、海外のアーティストが来日しても、滞在するのは本当に短い。東京、大阪だけで帰ってしまうのが当たり前になっている。東京で連続して公演すればコストはその分、按分できますが、福岡で1日だけだと、ステージコストを丸ごと1日で背負うことになる。チケット価格も高騰していますし、海外と日本のエンターテインメントのプライシングにはまだギャップがあるんですよね。

――なるほど、コスト構造の問題が大きいと。
【後藤】野球でも同じ話があって。ワールドシリーズを観に行こうと思って、アメリカの友人に『いくらくらい払えばチケットを買える?』と聞いたら、『1万ドルくらい払えば、そこそこいい席が取れるよ』って、平気で言うんです。日本円にすると150万円くらいです。それくらい、日本と海外ではチケット価格に対する感覚にギャップがある。ただ、高額でもドームがいっぱいになる例はある。サザンやミスチルが来ると、50代から70代くらいの、購買力も時間もある世代が動くんです。そういうマーケットにもっとアクセスしたい、訴求したいという思いがありました。自分自身がロック好きというのはもちろんありますが、なかなかそういう機会がないので、チャレンジしてみたら面白いんじゃないかと。

【広瀬】素晴らしいですよね、なかなかできることじゃない。企画力と行動力、そして資本力がある会社じゃないと絶対にできないので、本当に意義のある試みだと思います。

■ 「大人世代向け」という選択 海外の3世代文化を目指して
――広瀬さんから見て、今回のような「大人世代に向けたロックイベント」には、どんな意義があると思われますか?また、若年層中心のイベントとの違いは?
【広瀬】若年層向けのイベントは、どうしてもJ-POP、J-ROCK中心になってしまいます。一方で、50代からの世代は70年代、80年代のロックを聴いて育っている。行動力もありますし、そういう層に向けてやるのは本当に意味があることです。日本では何かとチケット代が「高い、高い」と言われますが、海外と比べればまだまだ。それが当たり前になれば、ロック界はもっと盛り上がる。今、洋楽が元気がない中で、70年代、80年代を聴いてきたリスナー層が「俺たちの時代はこうだった」と盛り上げていく。海外では3世代で一緒にコンサートに行くのが当たり前ですが、日本の現状はそうなっていない。少しでも海外のような形に近づいていってほしいという理想があって、今回のソフトバンクホークスさんの試みは非常にありがたいです。早くやらないと、みんな年を取ってしまいますから。ジャーニーもフェアウェルツアーを掲げていますし、切実な問題なんです。

■ 「球団経営」ではなく「エンターテインメント事業」という視点
――今回のようなロックイベントは、球団経営にとってどういう意味を持つのでしょうか?
【後藤】球団経営という狭い視点ではなく、我々ソフトバンクホークスは「エンターテインメントで世界一になる」ことを目指している会社です。みずほPayPayドーム福岡を野球で使うのは年間100日にも満たない。残りの250日以上は、ほかのことに使えるわけです。これを使わないのは、企業として収益機会を失っているのと同じ。だからこそ、エンターテインメントに対して強い意識を持って取り組みたいんです。あと、音楽と野球には共通点があって。たとえば、音楽のコンサートは、演者とオーディエンスという構造がありますが、オーディエンスの中にも「楽器をいじったことがあるプレイヤー系の人間」と「純粋なオーディエンス」の2パターンがいる。これは実は、野球もまったく同じなんです。野球も演者は選手たちで、オーディエンスについては、何かしら野球をやったことがある人たちと、純粋に見て楽しむ人たちがいる。ビジネス的に見れば、両方とも同じラインで捉えられる部分があるんじゃないかと。あとは、365日という限られた時間をもって、球場という場をどう有効に使うかという観点で、野球シーズンは野球を重視し、逆にオフシーズンは音楽を中心としたエンターテインメントで徹底的に盛り上げていきたいんです。

【広瀬】プレイヤー経験者と純粋なオーディエンスがいるというのは、目から鱗ですね。僕も小学校から中学校、リトルリーグ、シニアリーグと硬式野球をやっていましたから、そのつながりはよく分かります。せっかくの球場、ドームがあるなら、エンターテインメントに使うのが一番。今なかなか来ない海外アーティストをそこでやってもらうというのは、すごく意義があると思います。

【後藤】そうなんですよ。ただ、大物を実際に招聘できるかどうかは、正直悩みどころで。円安というのが、いま一番の悩みですね。福岡の良さをいろんなミュージシャンに理解してもらって、一肌脱いでもらえるような存在が出てきてくれないか。そのために我々に何ができるか、これからも考えていきたいと思っています。

■ あえての洋楽×邦楽ミックス その理由
――ジャーニーがヘッドライナーということですが、後藤さんご自身、ジャーニーの音楽に個人的な思い入れはありますか?
【後藤】自分の中で「これ」というバンドをひとつに絞るのは難しいですね。いろんな音楽を聴きますが、ジャーニーは、日本人の感性に響くようなメロディーラインを作れるバンドだと思っています。ボーカルのスティーブ・ペリーがいないのは残念ですが、それでも象徴的なバンドです。

――今回、日本のバンドと海外のバンドが一緒に出演するというのは、なかなかない試みですよね。海外バンドだけにしようとは思いませんでしたか?
【後藤】正直、最初は洋楽一本で行くべきかとも思いました。ただ、チームのメンバーといろいろ話す中で、1回目から洋楽だけでラインナップを揃えるのはかなり難しいという結論になって。邦楽を組み合わせることで、より幅広い集客が期待できると考えました。我々の世代が求める形をどこまで実現できるか、というのが正直なところで。1回目は一定レベルの集客力を維持したいという思いもありましたし、洋楽のプレイヤーたちと一緒にやることを楽しめる日本のミュージシャンがいれば、フェス自体がより盛り上がるはずだと。

【広瀬】そもそも「洋楽・邦楽」という言葉自体、50年代、60年代から使われている古い区分ですよね。世界的な情報の壁がなくなっているこの時代に、いまだに音楽業界にその壁があるのはおかしい。今回の試みが、その壁を壊すひとつのきっかけになればと思います。海外の主流アーティストが、必ずしも日本で人気があるとは限りません。せっかくの大物を呼んでも集客に結びつかなければ意味がない。それなら、RED WARRIORSやHOUND DOGのような、日本で知名度の高いアーティストを組み合わせる方が、1回目としては理にかなっていると思います。

【後藤】今回はRED WARRIORS、HOUND DOGという知名度の高いバンドに出演いただけますが、個人的にも、日本を代表するギタリストであるLOUDNESSの高崎晃さんが最初のラインナップにいないのはおかしいという思いがありました。

■ なぜ福岡なのか 「音楽の街」の誇りと危機感
――福岡という土地で開催することの意義については、どうお考えですか?
【後藤】福岡は、一人ひとりが音楽への思いが強い人たちが集まっているエリアだという印象があります。福岡出身のミュージシャンも多いですよね。天神に「照和」という古いライブハウスがあって、みんなそこから外の世界へ飛び立っていった。福岡に住む人たちは、「福岡は音楽の街なんだ」という自負をみんな持っているんです。だからこそ、最近ミュージシャンが福岡に来なくなっている状況を、僕自身は深刻な問題だと感じています。福岡の人たちは優しいので、盛り上がらなくなってきている現状も、ある意味受け入れてしまっているところがある。そこに対して、僕らは「そうじゃないんだ」というメッセージを出していきたいんです。

【広瀬】もともと「めんたいロック」という言葉があったくらい、福岡は音楽の街ですからね。以前はアーティストが北海道から九州まで回るのが当たり前でしたが、今はそれがなくなってしまった。そこに一石を投じるというか、「福岡でもやるよ」という意欲がみんなに伝われば、福岡から始まるということ自体が、大きなインパクトになると思うんです。東京ドームや京セラドームでやるのは、ある意味当たり前。そうではなく、みずほPayPayドーム福岡でやる、というところがすごい。それに、1回やって終わりというケースも多い中で、継続的にやっていくというお話でしたから、非常に頼もしいですね。

【後藤】今からそのつもりでいます。3年計画で、このフェスが少しずつ世の中に認知されていけばうれしいですね。まずはこの企画自体がロックファンの目に触れて、「行ってみよう」と思ってもらえるのが一番。1回目なので、福岡というだけで足踏みしてしまう方も、特に東京の方には多いと思います。それでも、1回やってみてその様子が伝われば、「これなら行けばよかった」と思ってもらえるようになる。来年はもっと楽しいフェスにできるように、ラインナップにもこだわっていけたらいいなと思っています。

■ ブランドより「福岡」を前面に
――同イベントの公式サイトのデザインを見ても、ソフトバンクホークスという名前をあまり前面に出していない印象を受けます。
【後藤】ソフトバンクホークスという事業体は、いわば“黒子”でいいと思っています。会社名を表に出す必要はない。大事なのは「福岡でやる」ということ、そして「みずほPayPayドーム福岡でやる」ということ。そこにフォーカスしてもらえれば。とにかく「福岡といえばロック」と言われるような時代を、これから楽しみにしていきたいですね。

■ 見どころ、そしてファンへのメッセージ
――当日、おふたりが楽しみにしているポイントを教えてください。
【広瀬】ジャーニー、ナイトレンジャー、LOUDNESS、RED WARRIORS、HOUND DOG、そしてBAND-MAIDまで出演する。大人のみなさんに、心ゆくまで楽しんでほしいですね。ジャーニーは今、フェアウェルツアーの真っ最中。東京公演も単独でありますが、それでも福岡に来てくれるということ自体が大きい。ナイトレンジャーも「もう来ない」と言われていた中で来てくれる。HOUND DOGも日本のロックシーンを長年支えてきた存在ですし、本当にうれしいラインナップです。

【後藤】実は、BAND-MAIDにどうしても出演してほしかったんですけど、その理由のひとつは、僕らの世代には、女性バンドが少ないからなんです。その点でも、とても楽しみにしています。

――最後に、FUKU ROCKを楽しみにしているファン、そしてこれから興味を持ってくれる方々へメッセージをお願いします。
【後藤】ようやく福岡でも、本格的なロックイベントをスタートできます。それをファンのみなさんにお届けできることが、何よりうれしいです。ぜひ本イベントの1回目となる今回を楽しみに来てみてほしい。自分の中のロック魂を揺さぶられるような1日を、楽しんでもらえたらと思います。

【プロフィール】
後藤 芳光(ごとう・よしみつ)
1963年2月15日生まれ、神奈川県出身。神奈川県立湘南高等学校、一橋大学社会学部卒業後、安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)入行。2000年にソフトバンク株式会社(現・ソフトバンクグループ株式会社)入社。財務部長、常務執行役員などを経て、現在、取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISO。2013年10月から、福岡ソフトバンクホークス株式会社 代表取締役社長 CEO 兼 オーナー代行を務める。

広瀬 和生(ひろせ・かずお)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒業。ビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)勤務を経て、1987年にシンコーミュージック・エンタテイメント『BURRN!』編集部へ。1994年1月号より同誌編集長を務める。落語評論家としても活動し、『この落語家を聴け!』『21世紀落語史』など著書多数。「新ニッポンの話芸」をはじめ落語会のプロデュースも手がける。


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