《充の母親の顔が映らなかった理由は?》『Tシャツが乾くまで』の“伏線”を専門家が徹底考察…『失楽園』脚本家が明かす“不倫ドラマ”の描き方

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2026年08月28日 06:20  web女性自身

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《あのセリフの意味は?》
《あれもこれも伏線?》



現在放送中の連続ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)が、主婦を中心に話題を呼び、SNSでも毎週放送後に考察が投稿され熱い議論が繰り広げられている。



瀬尾咲子(蒼井優・41)と充(松山ケンイチ・41)と、園田樹生(中島歩・37)とあずさ(夏帆・35)の2組の夫婦の関係性が、ある事故を境に壊れていく過程を描く。



コインランドリーでたあいない会話を重ねる男女は不倫か。家族の絆、失踪、過去の影――見る者に“家族とは何か”“不倫とは”を改めて問いかけてくる。



映画『失楽園』も手がけた脚本家の筒井ともみさんは、ドラマと“不倫”の関係をこう語る。



「いまも昔も、不倫というと、一斉に世間は好奇心をむきだしにして、魔女裁判にかけたがる。昭和の時代が寛容だったなんてことはありません。ですから『失楽園』でも、あのつながったまま――の世間に抗うラストになったのです」



『失楽園』では、ヒロイン像に“己の責任で世間と闘っていく強さ”を吹き込んだという。



『Tシャツが乾くまで』についても「2人の関係がそのまま事実だとしたらこれは不倫かどうか? 世の中的な定義は、ほかの誰かに迷惑をかけ、つらい思いをさせるのならそれなのでしょう」と指摘しつつ独自の視点でこう示す。



「不倫って“ふみ行うべき道にあらず”という意味なので、正式な夫婦であっても、“愛はなくてとりあえず生活”という在り方なら私にとっては不倫です。私は何があってもすべてを自分の心と体で受け止める女性のしなやかな強さを描いてきました。



不倫を否定しながら見ていても、やがて自分もそちら側にいくかもしれない……と思わせる。それが“そそられる”ドラマですよね」



地上波の全ドラマを録画、観察しているコラムニストの堀井憲一郎さんは、本作は“家族とは何か”が大テーマだと分析する。



「サブストーリーのように見える咲子の同僚である千鶴(臼田あさ美)の不倫模様は、物語を暗示している。彼女が不倫相手と別れた時点で『ただの不倫ドラマではない』という制作側のメッセージと受け取りました。あずさと充がコインランドリーで会うだけの関係を“令和の不倫”と位置づけることもできますが、親族との関係が疎遠な充と、施設で育ったあずさは、生い立ちが似ているからこそ互いにシンパシーを感じていたのでしょう。むしろ“家族のような関係”だったと捉えるほうが、しっくりきます」





■三島由紀夫の『愛の渇き』が伏線に



堀井さんは、充の失踪癖にも着目する。



「失踪を描いたドラマはさまざまありますが、充の場合は昭和の“蒸発”に近い。理由なく家庭から離れたくなる、同じ人と向き合いたくない。こういう特性のある男性は少数派ですが、ここを描くってなかなか思いきった設定。女性は理解できないでしょうが、きっと悪気はないのです」



咲子、充、あずさ、樹生は、いずれも毒親やネグレクトなどの家庭環境を背景に持つアダルトチルドレン。家族問題評論家の池内ひろ美さんは、充の失踪癖や、1年ぶりに「ただいま」と帰宅した夫を受け入れる咲子の姿に、“完全なる他者依存”の表れが見られると分析する。



「不倫をフックにしつつ、本質的なテーマは自己評価の低さ・承認欲求・母親の呪縛からの解放を描いています」(池内さん、以下同)



加えて劇中のあずさの愛読書である三島由紀夫の『愛の渇き』を伏線のひとつとし、登場人物全員が“満たされない愛のなかにいる”状態を象徴しているとも指摘する。



咲子の「私は愛されているのだろうか」という自己肯定感の低さや、「信じることに決めた」という愛し方、「妻はなんでも打ち明けてくれるもの」という樹生の支配的価値観は現代の30〜40代に共通する“承認欲求の世代”“事なかれ主義”なども背景にあると池内さんは話す。



■フィルターが外され樹生は人格が崩壊!?



「咲子と充夫婦の『言いたくないことは言わなくていいが嘘はだめ』というルールも、“傷つきたくない世代”の象徴。私たち昭和・バブル世代であれば平気で『どこへ行っていたの? 何していたの?』とどんなに傷ついても、白黒はっきりさせたい。ドラマもそんな主人公が支持されたものです」



今後の展開として、咲子と充が元鞘に戻るのであれば“本音”でぶつかり“フィルターを外す”シーンは不可欠であろうと池内さんは推測する。



いっぽう、樹生は人格が崩壊していく可能性も。



「咲子との未来はなさそうです。とはいえ、シングルファザーとして家事・育児に奮闘はできず。翔くんを施設など他者に預けたりして、自分は新たな愛を求めて行くくらいの展開も考えられます」



ドラマでは洗濯機の“フィルター”と“好きな人フィルター”という言葉が繰り返し登場する。登場人物が日常でかけている“フィルター”を外したとき、別の人格や本音が浮かび上がる暗示では?という読みがSNSでも活発だ。



■物語のキーマンは充の母親!?



いっぽう、堀井さんが指摘するように、咲子が充を訪ねて長野に行った際、充の母親の顔があえて映されなかった点も注目されている。幼少期に母親から愛情を注がれてこなかった過去も明かされたが、この“充の母”の謎が、物語の核心にどうつながっていくのか。



筒井さんは最後に「優れたドラマって『この人、いったいどうなるの?』と次回を待ち遠しくさせるサスペンス要素が不可欠。さらにキャストと脚本、監督だけでなく関わるスタッフすべての絶妙な人材の“愛”が集まる奇跡が名作を作る」と解いてくれた。



まさに本作は実力派が顔をそろえるなか、人がふだん見せている顔とは違う本質をあらわにしていく過程は、視聴者自身の“フィルター”を外すきっかけにもなりそうだ。ドラマの最終回まで、ますます目が離せない。



【PROFILE】


筒井ともみ


映画『阿修羅のごとく』『失楽園』などの脚本家、作家、エッセイストとして活躍。10月に、半自伝的小説『マイ・ディア・ファミリー』(百年舎)を刊行。

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