
【写真】「着た瞬間に覚悟が芽生えた」衣裳にも注目! 望海風斗&末満健一の撮りおろしショット
■末満「もう1回初演するくらいの心持ちで」
――望海さんは、再演が決まってどんなことを感じましたか?
望海:初演の公演中に再演のお話を頂きました。どの公演も大変ですが、「何年後かにまたイザボーを演じるのは体力的に無理かも……。できない!」というのが最初の正直な感想でした(笑)。今でもギリギリの状態なのに数年後にまた演じるなんてって。イザボーは常に戦っていなければいけない役なので、精神的にも体力的にもすごくハードな作品でしたから、本当に「え!? 無理です!」と思ったのですが、別の作品を何作品か経験して時が経つと、人って不思議と痛みを忘れるんですよね。
――確かにそうかも知れませんね。
望海:今は当時の大変さが良い意味で薄れているのでまた新たにやっていきたいなと思っています。そして、上演時に「再演してほしい」「また観たい」と、お客様や友人たちから、お声をたくさん頂いていたので、「喜んでくれるかな」という思いはずっとありました。
――末満さんは、初演当時に望海さんがそんな大変だと感じていたことは分かってましたか?
末満:そうですね、感じ取るものはもちろんありましたので。
――その大変な作品ですが、やはり再演はやらなければと思っていましたか?
末満:この作品が第一弾であるMOJOプロジェクトに限らず、今、日本のミュージカル界全体がオリジナルミュージカルを作って、海外に持っていけるように、再演に耐えるような作品をと、活気づいてきています。『イザボー』も1回で終わるのではなくて、何度も再演していくことに耐えうるような作品にしていけたらと思っていました。脚本も演出も僕1人が担当しているので、演出家の考えたことが、脚本家にすぐフィードバックできるという利点があるんです。だから、初演をやりながら思ったことや、ここはもうちょっとこうしたかったなど多々あったので、初演を完成品とは思わずに、より良いものを目指して、初演をベースに、もう1回初演するくらいの心持ちでやれたらいいなと再演をとらえています。
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末満:とにかく全体の尺が長かったので、もうちょっと観やすく、お客さんのお尻に優しくしたいなとカットしています。曲もちょっと多すぎるという意見もあったので、曲のカットも入れつつ、初演にはなかった曲を足したりもしました。初演のままの曲もあれば、変えていく曲もあります。メロディと歌詞の洗い直しをして、より良いものを探しながら、面白い方向に持っていけたらいいなと思っています。
――新台本について、末満さんとキャストの皆さんと、一緒に話し合いをされたと伺ったのですが、そういう機会もあまりないことですよね。
望海:初演を踏まえて再演に臨むにあたり、さらに掘り下げて深まった、熱のこもったものをやろうと思うのは誰しも同じだと思います。できたものを受け取って、受け身でやっていくよりも、作っていく段階でどういう風に末満さんが考えて再構築されているのか知れたり、特に初演をやっていたメンバーが当時感じたことなどを意見交換ができたら、すごく久しぶりにやるというより、お互いにいいんじゃないかなと。せっかく再演するならば、そういうことができたら、より素敵なんじゃないかと思っていました。
今回初めて参加する東島京君(シャルル7世)は、思ったことや感じたことを言ってくれたのですが、初演メンバーだけでなく、新しいメンバーも一緒に『イザボー』を作っているんだと思って参加してもらえたらいいなと思います。稽古が始まってからだと、期間が限られてしまいますから。
■望海「今の人たちに何か共感して感じてもらえたら」
――末満さんは、初演で望海さんが演じたイザボーについてどんな印象が残っていますか?
末満:話が横道から入りますが、最近映画にしろ舞台にしろ、女性を強く描かなければいけないみたいな風が吹いているなと思っていて、一見すると、イザボーもそういうところにカテゴライズされるのかなと思うんです。でも、そうではないと僕は思っていて。初演当時というよりも、公演が終わってから思ったことなんですが、強い・弱いのような、一側面的な見方で解釈ができない人物だなと思いました。
もちろん弱い部分もあるし、強い部分もある、多層的な人物であるべきだなと思っていて、時代の流れや政局的なものなどで、自分を強く着飾る必要があったという人物。初演は一見すると強い女性の、“強さの物語”のような見え方もしたかもしれませんが、そういう二極で語れるものじゃない、イザボーという人物の奥行きや深さみたいなものに、望海さんと一緒に再演では挑めるんじゃないかと、今思っています。
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――そういうお話は、初演当時もお話されていたんですか?
望海:当時はとにかく向かってくる敵に戦っていかなければいけない強さを持ちつつ、その裏にある「イザボーがどうしてそうならなければいけなかったのか」「ただ強いだけじゃなくて、なぜそうだったのか」を考えていました。
演じるとその役を一番よく見せたくなってしまうのですが、自分にとってその時の一番の味方であり、一番の理解者であり、人に知ってほしいみたいな気持ちになるので、イザボーの強さと、その裏にある本来のイザベルの部分というものとの葛藤を思いながら、いろいろと試行錯誤をしていました。今回はそういう意味でも、より繊細に作っていけるのかなと思うので、すごく楽しみでもあります。
――あの時代だからこそ、選択する内容も強烈ですし、怖くも強くも感じますが、日常生活だったと考えたら、それも1つの人間らしさというか。
望海:そうですね。今の時代は、“Love Myself”といった考え方がありますが、そこに行き着くもっと前の時代の人たちなので、今の人と通じ合わないところもあるかなと。でもやっぱり、どこか今の人たちに何かを共感してもらえたり、何かを感じてもらえるようなものになったらいいなと思います。初演の3年前と情勢も変わっていますし、そういうところもうまく感じながら取り入れられたらいいなと思っています。
――3年経った今描くにあたって、末満さんが何か感じていることはありますか?
末満:今すごくウーマンパワーの描き方が難しくなっていて、たった3年だけれど、全然肌感覚が変わったというか。男性を描くときは男性の生き方を取り沙汰されないのに、女性を描くときだけ「女性の強さを描く」とか、そういうことにスポットが当たるのって、何かちょっと噛み砕きづらいものがあるので、「人間・イザボー」を描けたらいいのかなっていうところはありますね。
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■望海「(衣裳を)着た瞬間に覚悟みたいなものが芽生えた」
――イザボー役を再び演じるにあたって、望海さんが初演を経て感じている面白さや、新たにどう作り上げていくか、考えていらっしゃることはありますか?
望海:前回はなかなか作品を客観視できなくて、どうしても自分の役のことをやるのに必死だったので、作品全体や、俯瞰して見れなかった部分がたくさんあったのかなと思います。
再演の良さとして、1回役から離れられて、もう1回向き合えるという意味では、初演とは全然違う視野でできると思うので、どういうものが見えてくるのか、より繊細に作っていきたいなとは思っています。具体的なことはまだ考えていませんが、実際に台本と向き合った時にいろいろと見えてくると思うので、「この時は本当にこういうことしか考えられてなかったんだな」みたいなところを改めて知っていくのが楽しみです。
――再び衣裳を着て、撮影されて、何か思い出したことはありますか?
望海:まずとても個性的なメイクですし、メイクして頂いている時に思い出してきた部分もあるんですが、このお衣裳はいろんなことを戦ってきた後に着る衣裳だったので、袖を通した瞬間に当時の感覚が一気に戻ってきたというか。着た瞬間に覚悟みたいなものが芽生えたので、すごく恐ろしいなって思いましたね(笑)。
――覚悟が芽生えてしまうんですね。
望海:「懐かしい!」みたいな感じではなかったです。「あ、この感覚……」みたいな。
――末満さんは新しいキャストを迎えて、続投の皆さんとの新たな化学反応を、どんなところに期待されていますか?
末満:役者が変われば別物になりますから。先日、朗読劇をやったのですが、同じ主役を演じるキャストが6人いて、その役の1人が変わっただけで作品の見え方が全然変わるんですよ。ですから、予想はつかないので、どんなものが出てくるのか楽しみだなと思っています。新キャストとなるシャルル7世も、ブルゴーニュ公ジャンも、全然変わるだろうし、相手役が変わったら芝居の仕方も変わりますしね、反応の仕方とか。
――(先ほどお話があった)話し合いに東島さんがご一緒されたとのことでしたが、印象はいかがでしたか?
望海:すごくしっかりと自分の意見を持って発してくれるので、すごく頼もしいなと思いました。やっぱり初めて参加する人たちが一番やりにくいと思うんですよ。「自分がやるからには」というところで、すごく前向きに参加してくださっていたので楽しみでもありますし、また全然違ったシャルル7世になるだろうなと、お話を聞きながら思いました。
――シャルル7世は幕開き担当もありますね。
末満:そうですね……(含み笑い)。
望海:彼にかかってますから!
望海・末満:アハハハハ!
末満:つかみはね(笑)。そこの心配は、先日ミュージカル『どろんぱ』でご一緒して、彼の役者としての、人間としての人となりは、分かっている部分や、信用できる部分があるので、かましてくれるだろうなという強い期待があります。
■末満「エネルギーを表現するのにミュージカルがマッチする」
――そもそもイザボーという女性の人生をミュージカルで表現する魅力をどう感じていますか?
望海:いろんな描き方ができると思うのですが、ミュージカルになることで、リアルなところから、もう少しファンタジーに見せられるというか。かつ、やはり音楽があることで、彼女自身の複雑な心の内を、さらけ出せたりするのかなとは思います。作り手さん次第だとは思いますが、すごく悲劇的にも、もっとおぞましくも作れたりしますよね。
イザボーという人はあまり日本で知られていないですが、ジャンヌダルクは皆さん知っている中で、また1つ歴史を掘り下げられるきっかけにもなりますし、そういう人もいたんだと、時代背景も含めて知ってもらえるチャンスなのかなと。私自身も知らなかったので、すごく勉強にもなりました。どの作品でもそうだと思いますが、ミュージカルになることで構えなく、そこに入れるのかなとは思います。
末満:ストレートプレイでもできる題材だと思うんですが、とても可烈な時代を、すごいエネルギーで駆け抜けるように生きた人なので、その時代のエネルギーや、イザボー自身のエネルギーを表現するのに、望海さんがおっしゃったようにミュージカルとして出力するのはマッチするなと思いました。イザボーという人物を知った時に、ミュージカル向きだなと思ったんです。
――いち観客としてですが、望海さんに歌1曲で表現して頂くと、理屈抜きにこの人はこういう感じなんだと、すっと入ってくるんですよね。例えばストレートプレイだとセリフを頭で理解しようとするスイッチが入ってしまうことが多いのですが、ミュージカルだと感情と感覚で受け取れるところもあったりして。
望海:確かにそれはちょっと「違い」かもしれないですね。
――表現する側はどうなんだろうなと思っていたのですが。
望海:でも、これをストレートでやったら相当…‥。
末満:しんどいですね。
望海:音楽に救われている部分はすごくあって、それがミュージカルのいいところではありますよね。でも芝居を中心でされている方からすると、音楽が入ると分からなくなるそうです。やってきた環境の違いだと思いますが。
末満:単純に、ある意味、重たい人生を歩んできた人物を描くのに、エンターテインメントとして消化しないといけないので、そこでミュージカルというジャンルは、エンターテインするのにすごく有効な手段だなと思います。
――最後に再演に向けて、皆さんにお伝えしたいことをお聞かせください。
末満:初演でやったことを、シンプルにそのままもう1回やる再演ではなく、いろいろとブラッシュアップして、よりイザボーという人物が伝わるような、再構築を施した再演になります。初めての方も、初演をご覧頂いた方も楽しめるものになると思うので、ぜひ劇場に来ていただけたらと思います。
望海:キャストもそうですが、スタッフの皆さん含めて、みんなが本当に熱量を持ってやらないと太刀打ちできない作品でもあるので、その日その日の私たちの熱量というものを、ぜひ肌で感じていただけたらと思います。初演を観て再演を楽しみにしてくださっている方にも、初めてご覧になる方にも、楽しんでいただける舞台になるように、初日まで試行錯誤しながら苦しみながら、皆さんと一緒に作っていきたいと思います。
(取材・文・写真:岩村美佳)
ミュージカル『イザボー』は、2027年1月18日〜2月1日に東京・東京建物Brilia HALL、2月12日〜14日に大阪・オリックス劇場にて上演。
