2026年9月2日、都内で『ミツビシ・パジェロ』のワールドプレミアが実施された。登壇者の岸浦恵介氏(左:三菱自動車工業 代表執行役社長兼COO)、板垣邦俊氏(中央:商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト)、吉峰典彦氏(右:デザイン本部 プログラム・デザイン・ダイレクター) 三菱自動車は9月2日、東京都内で新型『PAJERO(パジェロ)』のワールドプレミアを開催した。日本では7年ぶりに復活を遂げるパジェロの第5世代モデルは、同社が掲げる中長期ビジョンを具現化する第一弾であり、ブランドを牽引する新たなフラッグシップとなる。発表会で登壇した3名のキーマンは、それぞれの視点から新型パジェロに込めた熱い想いを語った。
■岸浦社長「“ミツビシらしさ”に磨きをかけ、新たなステージの幕をひらく」
パリダカ(現:ダカールラリー)7連覇を含む通算12勝を挙げ、“砂漠の王者”の異名を取ったミツビシ・パジェロ。名車の復活に際し、登壇した代表執行役社長兼COOの岸浦恵介氏は、ミツビシにとってパジェロがどのように位置づけられているのかを示した。
「どんな天候や路面でも安心・安全かつ快適に、自信をもって運転を楽しめる。『パジェロ』とは三菱自動車らしさをもっとも具現化したフラッグシップモデルであり、お客さまとの絆を深めてきた特別な存在です」
「『ふたたびパジェロを世に送り出したい』という社員の想い、『いつかはパジェロに乗ってみたい』というお客さまの願いが交錯したいま、パジェロは走り出し、新たなステージの幕がひらきます」
その出来栄えに対する自信は並々ならぬものがある。5代目パジェロは、北海道の十勝研究所に新設されたオフロードコースで悪路走破性が磨き上げられたほか、世界各地の路面を再現したオンロードコースでの開発や、海外での走行試験を重ねることで走りの幅が広がったという。
「新型パジェロには、当社の強みである四輪制御技術を中心に三菱自動車の技術の粋を集め、持てるすべてを注ぎ込みました」と語った岸浦社長。
「開発に携わるメンバーの想いは、お客さまの期待にお応えするという決意であり、お客さまに最高のパジェロをお届けするという約束です」
「長年、パジェロをご愛用いただいてきたお客さまには『次もパジェロに乗りたい』、はじめてパジェロをお知りいただいたお客さまには『いつかパジェロに乗りたい』と思っていただける出来栄えに仕上がっています」
生産拠点であるタイを皮切りに、日本、オーストラリアへも2026年度中の投入が予定されている新型パジェロだが、ミツビシが5月に発表した中長期ビジョンでは、かつて存在した『パジェロ・ミニ』や『パジェロ・イオ』などの“弟分”にあたる派生車の登場が示唆されていた。
岸浦社長はこれについて次のように言及している。「今後、新型パジェロを頂点とし、コンパクトSUV、スモールSUVを加えたパジェロシリーズを展開してまいります。ご期待ください」
■目指したのは“あらゆる路面で快適”なパジェロ
商品企画を担当した商品戦略本部のチーフ・プロダクト・スペシャリスト、板垣邦俊氏は、「本日私は、モノづくりに関わったすべてのメンバーを代表してここに立っています」と挨拶し、開発における技術的なこだわりと“パジェロらしさ”の進化について語った。
板垣氏はまず、クルマが提供すべき“信頼感”の重要性を説く。「クルマへの信頼感が、(外出や冒険の)ためらいをなくしてくれると考えています。その土台となるのが、ねじり剛性を高めた専用開発のラダーフレームとリヤに5リンク式リジッドを採用したサスペンションです。過酷な環境でも安心して走り続けられる高い信頼耐久性と走破性、そして優れた乗り心地を両立しました」
1982年に登場した初代モデルから一貫して、四輪駆動車の優れた悪路走破性と乗用車の快適性を融合させたクロスカントリーSUVとして進化を続けてきたパジェロ。板垣氏によると、開発チームが新型車においてもっとも追求したのは、新たな指標である“悪路快適性”だという。
「私たちがとくにこだわったのが悪路での快適性です。単に走り切るだけではなく、安心して快適に移動できることを重視し、独自の指標として新たに設定しました」
同氏によると、厳しい路面状況でも不快な振動や揺れ、作動音を感じさせないように繰り返しチューニングが行われたといい、「路面の小さな凹凸や砂利道でも、その違いを実感いただけます」と自信をみせる。
上質な車内空間も快適性を高めることにつながる。3列7シート車である新型パジェロは室内の空間設計とシート配置が最適化され、すべての席で快適に過ごせる広々とした室内空間を実現している。また、フロントガラスに加え、前後ドアガラスにも遮音ガラスを採用するなど、外から入ってくる音に対し徹底した対策が施されている点も特長だ。
「2列目シートに150mmという大きなシートスライド量とタンブル機構を両立。乗り降りのしやすさと使い勝手の良さにこだわりました。さらに3列目の着座姿勢にも配慮しています」と板垣氏は説明した。
「新型パジェロを象徴する進化が、上質さです。ドライブの帰り道。穏やかに流れる時間。その心地よい時間を支えるのが、高い静粛性です。私たちのこだわりは“自然に会話ができる室内空間”。遮音・吸音対策と気密性能向上にこだわり、ドアを閉めた瞬間に感じる静けさ、大声を出さずに会話ができる心地よさを実現しました。とくに雨の日には、その違いを実感いただけます」
板垣氏は、この新型パジェロが顧客の冒険心を後押しすると確信している。
「私たちは、パジェロを選び、所有することそのものに、歓びや誇りを感じていただきたいと考えています。見て分かる存在感。触れて分かる質感。走り出して分かる安心感。それぞれの体験の中に、パジェロらしさを息づかせています」
「パジェロの本質を、今の時代にふさわしく進化させました。『上質に進化したけれど、やっぱりパジェロ』と、皆さまにも、そう実感していただけると確信しています。あらゆるシーンで頼れるパジェロだからこそ、日常も非日常も心の余裕を感じ、どこへでも出かけたくなる。その冒険心を後押しします」
■自ら新しい価値を生み出す『独創進化』
最後に、デザインを統括したデザイン本部のプログラム・デザイン・ダイレクターである吉峰典彦氏が、新型パジェロのスタイリングと内装に込めた思想を解説した。
「初代は既存の価値観を追うのではなく、新たな価値を生み出し、世界中のお客さまに愛され共感されてきました。そして私自身もその魅力にひかれたひとりです」
「三菱自動車のコアバリュー、冒険心を呼び覚ます心豊かなモビリティライフを原点に、私たちはパジェロの本質を問い続けました。そして改めて確信しました。パジェロとは日本が世界に示してきた革新の歴史であると。新しいパジェロはこの歴史から導き出した答えです」
新型パジェロには、初代から受け継がれる水平でスクエアのフォルムや、初代へのリスペクトが込められた特徴的なグリップ、歴代モデルに採用されてきた3連メーターをモチーフにしたマルチメーターなど、歴史の積み重ねを感じさせるポイントがいくつかあるが、吉峰氏は単なる懐古趣味にとどまらない新たな設計哲学の基に5代目が生まれたと強調した。
「私たちが目指したものは、単なる復活ではありません。固定概念にとらわれず、パジェロの本質と向き合い、そしてたどり着いた答えが“独創進化”です」
「独創とは、日本で生まれたパジェロが誰かの後を追うのではなく、自ら新しい価値を生み出してきた精神。進化とは、その精神を未来へつないでいくこと、それが新しいパジェロのあるべき姿だと確信しました」
この独創進化という考え方に基づいた“グランドカリズマ”というコンセプトが、まったく新しいパジェロを生み出していく。そのコンセプトにふさわしいオリジナリティをまとったプロポーションは本質を継承しつつ、一から作り直されたという。
「このコンセプトを形にするうえで私たちが挑んだのは、パジェロのオリジナリティを作るということでした」と吉峰氏は語った。
「初代パジェロのロールバーからインスパイアされたCピラー、そして前方へ突き抜ける伸びやかなシルエットは、まさにFRレイアウトの表現であり、グランドの所以です。新しいアイコニックなロールバーキャラクターとスクエアで力強いプロポーション、新型パジェロ、グランドカリズマならではの存在感を生み出しました」
先進感あふれる特徴的なT字型のヘッドライトを採用し、横桟タイプとハニカムタイプという2種類のフロントグリルが設定されたフロントマスクは、「日本の武道に通じる冷静沈着さと、余裕のある揺るぎない自信を表現しました」と吉峰氏。ミツビシのアイデンティティである“ダイナミックシールド”は、ボディと融合させることで、より立体的かつソリッドな造形へと進化した。
日本の伝統工芸から着想を得たという縦のアクセントや、同じく伝統工芸の木目込みに着想を得た縫製技法が施されたソフトマテリアルなどが用いられたインテリアの設計は、ダカールラリーでの伝説的な歴史からもインスピレーションを得ているという。
壇上に立った吉峰氏は、日本人ドライバーとして初めてダカールラリー連覇を果たし現在はAXCRアジアクロスカントリーラリーを戦うチーム三菱ラリーアートの総監督を務める、増岡浩氏の言葉を紹介しながら次のように述べた。
「増岡の言葉です。『ラリーに必要なことは、ドライビングスキル以上に限界走行においても運転しやすく疲れないこと。そのおかげでパジェロは誰よりも早く確実にゴールできた。そしてダカールラリーで伝説になった』と」
「インテリアデザイン開発にとって、初代パジェロこそが発想の原点でした。増岡のミツビシの歴史を紡いだメッセージは、あらゆる挑戦を受け入れる自信と包容力を持った初代にも表現されていることに気づきました」
「明るく開放的なキャビンで乗員を包み込み、インストルメントパネルをキャビン全体へ水平に広げることを継承することで、ゆとりと包容力、限界のないやさしい居心地の良さを演出し、長い旅路でさえも、すべての乗員に心地よいくつろぎをもたらしてくれます。パジェロならではの、フラッグシップモデルにふさわしい風格をもったインテリアを実現しました」
岸浦社長は最後に、世界中の人々に向けてこう呼びかけた。「世界中でこの日をお待ちいただいていた皆さまと、新型パジェロで新しい冒険の物語を始めたいと思います」
時代が求める高い安全性と上質さ、そして誰もがどこへでも出かけたくなる冒険心を刺激する一台として、今まさに5代目パジェロが新たなスタートを切った。この挑戦的なフラッグシップモデルを皮切りに、ミツビシが今後どのような驚きと、新たな冒険の物語を届けてくれるのか。楽しみにしたいところだ。
■フォトギャラリー
[オートスポーツweb 2026年09月03日]