2026年F1第12戦オランダGP グリッドに向かうホンダとアストンマーティンのチームメンバー
ザントフォールト・サーキットで開催された2026年F1第12戦オランダGPを訪れた、ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長。シーズン前半戦の苦戦にはショックを受け、プライドも傷ついたとかしたが、今シーズンは第4期の活動時期と同じくらいの規模の人員を集め、さらに補強を行ったという。これまでとは異なる戦いや、アストンマーティンとの関係性について、渡辺社長が語った。
────────────────────────────────
──ホンダが2026年に向けて人材補強したなかには経験者もいたと思いますが、彼らを呼び戻したのは開幕してプライドがズタズタになってからなのか、それともそれ以前に手を打っていたのでしょうか? 海外の一部の報道だと、「ホンダは最近になって、ようやく経験者を呼び戻した」ような報道がされているので確認です。
渡辺康治社長(以下、渡辺社長):「2026年に向けた体制は、2025年の中盤までにかつての規模と同じ状態になっています。そのうえで、今年はさらに増強しました。ただ、大切なことは経験者がいるかどうかよりも、必要な技術を持ち、それを活かして開発できるかどうかです。もちろん、増強したメンバーにはそのどちらも備わっています。ただし、開発がスタートした当初に戦力が足りなかったということは事実で、それはマネジメントとしては反省すべきことです。とはいえ、現在のF1はコストキャップがあるので、ただ数を集めればいいということではない。優秀な人を適材適所に配置して少数精鋭で効率的に戦うことが求められています。それができれば、開発費にお金を回すことができるからです。戦い方自体が第4期とは異なっているので、そういう部分もアップデートしていかなければなりません」
──第4期はマクラーレンとトロロッソ、そしてレッドブルがパートナーでした。2026年からはアストンマーティンがパートナーです。新しい組織と組むと、どうしても最初は腹の探り合いみたいになるのではないかと想像しますが、アストンマーティンと信頼関係が深まったのはいつごろですか?
渡辺社長:「信頼関係というのはパートナーになって、すぐにすべてがうまく運ぶことはありません。ともに苦労して、ようやく腹を割って話ができるようになるということもあります。振動問題を一緒になって解決していく過程で信頼関係が構築されたと思います。それは私とエイドリアン(・ニューウェイ/チーム代表)だけでなく、現場の技術者同士も同様です。『車体が……』とか、『エンジンが……』とか言っているうちは強くなれません。いまはHRC Sakuraとシルバーストン(アストンマーティンのファクトリー)が1台のクルマとしての競争力をどのようにして高めていくのかをお互いに議論できるようになってきています」
──オーナーのローレンス・ストロールさんとの関係性はいかがですか?
渡辺社長:「元々、ホンダがアストンマーティンと組もうとした最大の理由は、オーナーの情熱です。前に組んでいたレッドブルも(オーナーのディートリッヒ・)マテシッツさんがそうでした。だから、オーナーに情熱があるチームは強いはずということを私も浅木(泰昭/元HRD Sakuraパワーユニット開発責任者)と話していて、ローレンスにはそれがあるということを見極め、このチームにしました。情熱家ですが、他人を思いやり、信じる力を持っている方で、とても付き合いやすいです。いまでは、メディアの前ではあまり言えないようなことも話せるほど、フランクに話をしています」
──ホンダにはワイガヤという企業文化があります。年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論するというホンダ独自の文化はいまも生きていると思うのですが、逆にそれが即断即決で開発を行っている現代のF1で通用しない障害になっているのではないかと指摘する海外メディアもあります。そういう意見について、渡辺社長はどう答えますか?
渡辺社長:「現状をすべて肯定するつもりはありません。必要に応じて変化することは自分たちもあると感じています。ただ、ワイガヤというものに誤解があるのではないかとも感じています。ワイガヤとは、無責任に何かワイワイガヤガヤとしゃべっているのではなく、それぞれのスタッフが立場を超えてプロとして、徹底的に議論すること。それはF1の世界でもまったくもって必要だと思います。かつて本田宗一郎さんがいた時代は、ひとりの天才が決めていけばよかった。でも、その天才がいなくなって、みんなでどう経営していくかっていうなかで、本音をぶつけ合って物事を決めていく集団指導体制が生まれ、それが社員にも根付いていった。それはしっかりと残すべきだと思います」
──オランダGPでは角田裕毅選手が8カ月ぶりにF1のレースに帰ってきました。どのように見ていましたか?
渡辺社長:「久しぶりだったのにも関わらず、いきなりいい走りをしたあたりはさすがだったし、本当にうれしかったですね」
[オートスポーツweb 2026年09月04日]