日本人男児が刺された現場付近=2024年9月、中国広東省深セン市 外務省が、海外で犯罪被害に遭った邦人・家族が現地の弁護士に無料で相談できる支援制度の拡充に取り組んでいる。中国で昨年導入したのを皮切りに、フィリピン、タイでも開始。今後も被害や相談件数が多い国を中心に対象国を増やしたい考えだ。
制度創設の契機となったのは2024年9月に中国・深セン市で起きた日本人男児刺殺事件だ。遺族が、日本と異なる法的な手続きなどの問題に直面したことを踏まえ、日本語による弁護士相談業務の導入を検討し、25年1月に中国での運用開始にこぎ着けた。
支援対象は、殺人や傷害、暴行、DV(家庭内暴力)、不同意性交・わいせつなど深刻な被害を受けたケースを想定。在外公館の窓口を通じて申請手続きを行えば、被害届の提出方法や捜査・裁判手続きの説明、損害賠償などについて弁護士から助言を受けることができる。
政府関係者は「相談数は増えており、需要はある」と述べた。ただ、政府の予算に限りがあるため無料相談は1事案につき3回までに限定。希望に応じて現地の弁護士リストを提供する。
外務省幹部は「犯罪事件は突出してアジア地域が多い」と分析しており、今年5月にフィリピン、8月にタイで運用を始めた。フィリピンで昨年8月に邦人2人の射殺事件が発生したことや、タイが25年の援護件数トップだったことを踏まえた。
近年、邦人が事件・事故に巻き込まれるケースは後を絶たない。25年の邦人援護件数は1万2239件。このうち、5633件をアジアが占め、犯罪被害は705件に上った。
外務省関係者は「制度の認知度が低い」とも指摘。「DVや性被害でも、まずは在外公館に相談してほしい」と呼び掛けている。