「口の中に唐辛子を塗りたくられたような激痛」元歌のお兄さんが語る中咽頭がん・骨壊死・心筋梗塞の壮絶闘病と「伝えたい思い」

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2026年09月06日 16:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

杉田あきひろさん 写真/本人提供

 NHK『おかあさんといっしょ』で、9代目うたのおにいさんを務めた歌手・杉田あきひろさん。2022年に中咽頭がんを克服したが、昨年5月ごろ、奥歯と口内の激痛に襲われる。その原因は、放射線治療の後遺症で顎の骨が壊死する「放射線性顎骨壊死」。「がん治療よりつらかった」と振り返る壮絶な体験と、がん治療の後遺症について聞いた。

診断は中咽頭がん、ステージ2

「歌を歌っても、声は伸びやかに出ていました」

 と話すのは、歌手の杉田あきひろさん。しかし、2021年のある日、喉にこぶのようなものを見つける。喉の調子に変化はなく、念のため耳鼻科や歯科を受診したものの原因はわからず、様子を見ることになった。

 医師には「こぶ状のものは確かにあるが、がんではないだろう」と言われたという。

 半年ほど様子を見ていたが、こぶが急に大きくなった。嫌な予感があり、ちょうど仕事でお世話になっていた医師にCTとMRIを撮ってもらい、念のために細胞の検査を実施。そこで中咽頭がん、ステージ2との診断が下った。

病名がついたのは7月上旬。すぐに東京の大きな病院を紹介してもらうことになりましたが、予約が取れたのは7月末でした。驚いたのは、その病院でステージ3と言われたのです。歌手活動は、いったん休止し、抗がん剤と放射線治療を始めることにしました

 入院と自宅療養で3か月間仕事を休み、治療に専念。入院中は体力が落ちないように病院内を1日1万歩歩いた。3クールの抗がん剤治療、35回の放射線治療を終え、髪はごっそり抜けた。想像以上につらかったのが、副作用で起こる口内の痛み。

「口内炎だらけの粘膜に、唐辛子をグリグリ塗りたくられているような、今まで感じたことのない激痛に苦しみました。しかもそれがずっと続く。でも食べないと痩せてしまうと思って、麻酔の入ったうがい薬を使って一時的に痛みを抑え、無理やりごはんを食べる毎日でした

 味覚は一切なく、何を食べても痛みしか感じない。治療が一段落し、副作用が治まって味覚が戻るまでには1年以上かかった。

 54歳で介護士の資格を取得し、芸能活動以外に高齢者施設などで福祉の仕事も続けてきた杉田さん。

 友人が立ち上げた就労継続支援B型事業所で働き、治療後の体力も徐々に回復。しかし、がん治療から3年ほどたった昨年5月ごろ、左奥の歯茎が腫れ上がり、仕事を休まざるを得ないほどの強い痛みが現れる。

薬物依存症予防の講演活動も

通院していた歯科医院で抗生剤をもらいました。先生には飲み切るころには腫れも引くだろうと言われましたが、一向に治らず、2か月以上も飲み続けました。それでも痛みは治まらない。まさか口腔がんでは……という不安が頭をよぎりました

 秋ごろにようやくがん専門医に診てもらうと、中咽頭がんの放射線治療の影響で、顎の骨が砕けてしまう「放射線性顎骨壊死」のステージ2と診断される。

晩期障害といわれる後遺症が、治療から3年もたって起こるなんてショックでした。顎の骨が腐って、砕けた細かい骨が歯茎から飛び出してくるんです。それが奥歯を圧迫して、強い痛みと炎症を引き起こしていました。僕の場合はステージ2でしたが、3になると顎の下の皮膚に穴が開くなどする深刻な後遺症です

 骨を取り除く手術を受けることになったが、すぐに予約は取れず、半年以上先に。その間、痛みに耐えながら鎮痛剤を飲んでやり過ごしていたあるとき、今度は心臓の病に襲われる。

「昨年末、健康診断で心不全の疑いを指摘されました。でも大きな歌のイベントを控えていて、それが終わってから受診しようと、先延ばしにしてしまったんです。イベントが終わった翌々日、猛烈な息苦しさで早朝にタクシーを呼び病院へ行くと、心筋梗塞と診断され、即入院。カテーテル手術を受け、命をつないでもらいました

 過去に覚醒剤の使用で逮捕され、その後、依存症回復プログラムを受けた杉田さんは、依存症予防教育アドバイザーの資格を取得。薬物依存症予防の講演活動も行っている。当時も顎と奥歯の痛みに耐えながら講演の仕事をこなしていた。

心筋梗塞で入院したせいか、症状が悪化してしまって。口の中で顎の骨が飛び出してきて、舌の奥が切れてしまうんです。講演中、しゃべるたびに口の中が血の味がして……。顎が大きく開けられず、痛みで食事もできない。鎮痛剤を飲みながら、うどんや雑炊を流し込んでいました

 半年以上も抗生剤や鎮痛剤を飲み続け、やっと手術できたのが今年の3月。

歯茎がきれいに再生して、今は仮歯の状態。何を食べても『こんなにおいしいの?』と思うほどに回復しました。口腔内への放射線治療を受けた方で、もし数年後に口の中の痛みを感じたら、できるだけ早く病院で検査を受けてください。あんな苦しみを誰にも味わってほしくないですね

 もともと、歯医者が苦手で、以前の覚醒剤使用の影響もあり、口腔状態があまりよくなかった杉田さん。加えて4年前のがん闘病時、副作用などの予防のために必要な事前の歯科治療を受けていなかったことも一因ではと考えているそう。

 痛みと闘い続けた治療中、杉田さんの心を支えたのは、先輩歌手の岩崎宏美さんからの言葉だった。

早寝早起きのおかげで毎日元気

『生きていくことは自分と闘うこと』と、岩崎さんのメッセージに胸が熱くなりました。『杉田、がんばれ! 応援しています』といつもエールを送ってくれ、つらい治療も副作用も乗り越えられました。僕にとって敬愛する“男前”の姉貴で、マドンナです

 歌手活動も福祉の仕事も、どちらも体力勝負。入院中から続けている“1日1万歩生活”は、今も継続中だ。

朝5時に起きて、毎日ウォーキングするのが日課です。雨の日でも傘をさして最低5000歩は歩いています。夜は21時には就寝。早寝早起きのおかげで、毎日元気に過ごせています

 中咽頭がん、放射線性顎骨壊死、心筋梗塞。50代で3つの病気を立て続けに経験。幾度もの困難を乗り越えた今、病気と闘う人へ伝えたい思いがある。

病気になっても心が負けなければ、きっと乗り越えられると思います。そのときに力になるのがご家族や周りの方の支えです。もし近くに闘病中の方がいるなら、そっと寄り添い続けてあげてほしいと思います

 還暦を迎えてもなお、心身共にエネルギーは満タン。「歌を通じて元気を届けたい」と、来年は全国主要都市でチャリティーファミリーコンサートを計画している。

介護施設で働く中で、おじいちゃんやおばあちゃん、障がいのある方たちやそのご家族が、僕の歌を聴いて笑顔になってくれるのが本当にうれしかったんです。これからも、歌と福祉、両方をライフワークにしていきたい。体力が続く限り全国を回って歌を届け、みなさんに元気を与えたいですね

取材・文/釼持陽子

すぎた・あきひろ 福井県出身。'99年からの4年間、『おかあさんといっしょ』の9代目うたのおにいさんとして活躍。介護士およびサービス管理責任者資格を取得し、福祉施設で働きながら歌手活動も行う。

週刊女性2026年9月8日・15日号

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