盟友リチャード・ペティとともに自らの組織を育てて来たジミー・ジョンソン 毎週水曜に世界のツーリングカーやストックカーを中心に、ときにはラリーも含めたハコ車の話題をお届けする『WEEKLY ROUND UP』。今週は北米最高峰のNASCARカップシリーズにて、元“7冠”王者ジミー・ジョンソンが主宰するレガシィ・モーター・クラブ(LMC)が、来季の体制を確定させた話題をお届け。ライリー・ハーヴェストの移籍加入に続き実力派ジョシュ・ベリーも獲得し、ここ1週間で3台体制への拡充を表明している。
そのほか、今週末にシーズン終盤恒例の“エンデュランス(長距離耐久)カップ”に突入する南半球のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップからは、性能均衡(パリティ)の一環としてその第10戦『AirTouch 500(エア・タッチ500)』より、シボレー・カマロZL1スーパーカーの空力調整を実施し、さらに重心位置に関するテストの実施を計画している話題や、同じく南半球は南米大陸アルゼンチンから、導入2年目を迎えた前輪駆動SUVツーリングカー選手権TC2000第7戦の模様もお伝えする。
今季より復活した“The Chase(ザ・チェイス)”として、ここから全10戦で争われる2026年NASCARカップシリーズのポストシーズン初戦、ダーリントン・レースウェイで開催されたNASCARカップシリーズ第26戦『Cook Out Southern 500(クックアウト・サザン500)』を前後し、ジョンソン率いるLMCは立て続けに来季体制をアナウンス。約1週間前の現地水曜にジョン・ハンター・ネメチェクの今季限りでの離脱を発表すると、新たに準備する3台目の84号車トヨタ・カムリXSEにハーヴェストを迎え入れ、今週に入るとネメチェクの後任として噂に挙がっていたベリーの加入を発表した。
そのLMCは、この7月末にも戦略的オーナーシップ・グループに新たに9名を加えることを発表しており、そのメンバーにはNTTインディカー・シリーズの元王者3名も含まれ、スコット・ディクソン、トニー・カナーン、ダリオ・フランキッティら豪華な顔ぶれがチーム首脳陣として参画。またフルタイム参戦チームを3台に拡大するのに伴い、来冬から新たな拠点で活動を開始することも表明している。
「人材確保の観点からも(ノースカロライナ州)ムーアズヴィルに拠点を置くことは極めて重要だ」と語った“JJ”ことジョンソン。「私自身の移動時間が30分以上短縮されるという点でも楽しみだ(笑)。こうした拠点の集積地にいることは本当に大切で、トヨタもすぐ近くにあるし、トヨタ陣営の他のチームも近隣に位置しているからね」
現在はノースカロライナ州ステーツヴィルにある既存のレースショップ(旧GMSレーシングの施設)の改修ではなく、新規建設となる施設の広さは11万平方フィート(約1万200平方メートル)で、必要に応じて拡張可能なスペースも確保されている。またジョンソンによれば、計画次第では3階建ての建物にすることも可能だという。
「これまでスタッフ全員が移動のために多くの時間を車内で過ごして来た。会議に出席したり、他チームやリーグの担当者とやり取りしたりするために、あちこちへ移動しなければならなかったからだ。だからこそ、そうした移動時間が減るのは喜ばしいことなんだ」
この新施設の2階にビジネス部門や経営陣のオフィスが配置される予定で、1階は広々とした空間を確保。エンジニア、カーチーフ、クルーチーフ、そして現場のスタッフ全員が同じフロアで活動することになるという。また、ハーヴェストの古巣になる23XI Racing(トゥエンティ・スリー・イレブン・レーシング)はジョンソンに対し、2024年にハンターズヴィルで開設した最先端施設『Airspeed(エアスピード)』の建設経緯や構造について情報を共有。留意点として現行Next-Gen規定時代のレースチームにおける業務フローに加え、従来とは異なる車両の整備や移動のプロセスも伝えていた。
「今から2年ほど前に、新しい施設の建設を検討していた際、23XIから『こちらへどうぞ、案内しますよ』と声をかけてもらった」と続けたジョンソン。「彼らも『もしもう一度建てるならここを少し手直ししたい』といった細かな改善点があるようで、あそこはこうすればよかった、ここはもう少しスペースが欲しかった……といった情報を親切に共有してくれたんだ」
「誰もが口を揃えて『収納スペース』の重要性を説いている。充分なスペースがあると思っていても、いざとなると『これをどこに置こうか?』と悩んでしまう……まるで自宅の状況と同じだね。だから、私たちも収納スペースの確保には力を入れているよ」
そんなLMCと複数年契約を結んだラスベガス出身のハーヴェストは、長年のパートナーであるモンスターエナジーが、引き続き84号車のメインスポンサーも務める。
「これまでのキャリアは浮き沈みの激しい道のりだったが、クルーチーフやメンター、そして家族から、あらゆる段階で多くのことを学んできた」と移籍加入の決意を表明したハーヴェスト。「この新たな章は、NASCARカップシリーズで学び、成長するためのさらなる機会だ。ジミー(・ジョンソン)が進めているレガシィ・モーター・クラブの発展と構築に貢献できることに感謝している」
その84号車はこれまでジョンソン自身がパートタイムで使用してきたが、今季レギュラー最終戦となったデイトナで“フェアウェル”のラストランを実施。その車両をハーヴェストが引き継ぐことで来季LMCのフルタイム参戦体制が3台となり、古巣23XIのシートには来季コーリー・ハイムが起用されることになっている。
「カップシリーズでの最初の2年で多くのことを学べた。どのドライバーも成長の過程(ラーニングカーブ)を経験するものだが、レガシィ・モーター・クラブへの移籍はそのプロセスにおけるさらなる前進だ。これからの挑戦をとても楽しみにしているよ」
同じくチームの42号車を引き継ぐベリーも、2024年にスチュワート・ハース・レーシング(SHR)からカップ昇格を果たして以降、翌年のチーム閉鎖に伴いウッド・ブラザーズ・レーシング(WBR)へ移籍。2025年春のラスベガスでキャリア初勝利を挙げたものの、この6月にWBRとの契約を解消することで合意していた。
「レガシィ・モーター・クラブは目指すべきビジョンが明確な組織であり、僕もその一員になりたいと思っていた」と明かした苦労人のベリー。「このチームを間近で見る機会があり、彼らの実力はよく分かっている。ジミーが築き上げてきたこの場所──人、文化、そして方向性──こそが、僕がレースをしたいと願う環境そのものなんだ」
こうしてLMCの代表として確実にチーム体制強化を図るジョンソンも「ジョシュは懸命な努力と泥臭い仕事を通じて、すべてを勝ち獲ってきた実績あるドライバーだ」とベリーに期待を寄せる。「彼について際立っているのは、ステアリングを握りながら全体を俯瞰して管理する能力、つまりその経験、視点、そして知恵だ。彼のキャリアはその基盤の上に築かれており、ここでも大きなインパクトをもたらしてくれると確信している。彼をレガシィに迎えられることを大変うれしく思っているよ」
同じく新加入のハーヴェストに関しても「私はライリーがドライバーとして成長していく姿を見てきたし、彼の実力もよく知っている」と続ける。「オフロードレースを通じて彼らと私たちの家族には繋がりがあり、最初から自然なカタチで上手く行くと感じていた。彼がさらに成長し、カップシリーズでその実力を発揮できる場所を提供できることを光栄に思っている」
豪州RSCのシーズン第9戦『Ipswich Super 440(イプスウィッチ・スーパー440)』を終えた段階で、シリーズに参戦するトヨタとGMシボレーのホモロゲーション登録担当チームの双方が、性能差を是正するための均衡(パリティ)変更を運営側に要請。これを受け3つのホモロゲ担当チーム、すなわちTeam 18(GM)、トリプルエイト・レースエンジニアリング(T8/フォード)、そしてウォーキンショーTWGレーシング(WTWGR/トヨタ)との協議が行われた。
現地8日火曜にコミッション(運営委員会)へ送付された文書のなかで、スーパーカーは分析に基づきふたつの決定事項を明らかにし、まず第1にトヨタの車両モデル(GRスープラ・スーパーカー)がパリティ調整のトリガー(基準値へ到達)には達したものの、スープラの特定の領域がさらに開発されるまでは調整を検討することはできないと判断された。そして第2にスーパーカーが保有する情報を分析した結果、カマロには潜在的に不利な状況にある領域が特定された。
これによりシリーズは、次戦に向けカマロに小規模な空力変更を行うことを確定し、具体的にはフロント・アンダートレイ・トンネルの幅を合計70mm拡大する。ちなみにオフシーズンに実施された北米ウインドシア(Windshear)風洞でのテストにて、昨季と比較して300mm縮小された状態で今季の性能調整が運用されていた。
そうした今回の変更に加え、スーパーカーは今週末のタイレムベンドでの第10戦終了後、合計9台の車両を対象に重心位置(CoG)のテストを実施する計画を立てており、同イベント期間中にカマロZL1のパフォーマンスを注視するとともに、メルボルンで実施予定のこのテストに関する詳細も、追って発表される見込みとなっている。
そして最後に9月5〜6日にブエノスアイレス州フニンに位置する、アウトドローモ・エウセビオ・マルシージャで争われたTC2000第7戦の模様を。このイベントでは従来の『35分間+1周』の競技規則に加え、ピットストップの義務化という特別なレース形式が採用され、ドライバーは「レース開始から15分後から30分後の間にピットへ入り、少なくとも1本のフロントタイヤを交換しなければならない」との文言が追加された(この作業はセーフティカー導入中であっても許可)。
迎えたFP1とFP2では今季デビューの“伏兵”ルーカス・カラバハル(フォルクスワーゲン・ニーヴァス)がトップタイムを叩き出したものの、続く予選では今季も選手権首位を行くシリーズ“6冠”マティアス・ロッシ(トヨタ・カローラクロスGR-S)が、通算30回目のポールポジションを獲得してみせた。
「予選本番で初めてトップに立つことができたし、非常に満足のいくポールポジションだった」と手応えを語ったロッシ。「それまでの2回のフリー走行はクルマの熟成に専念する時間で、あのラップはドライバーにとって非常に要求の厳しいものだったが、エンジニアと僕は素晴らしい仕事が出来たと思う。いつでもポールポジションの獲得は大きな喜びで、チャンピオンシップにおいて重要な局面にある今、この結果はとくに価値があるよ」
予選トップ6のリバースとなるインバーテッド・グリッド・ルールの適用により、決勝ではマルセロ・チャロッキ(フィアット・パルス)とフランコ・モリーロ(シボレー・トラッカー)が最前列からスタートすると、6番手グリッドから出たTOYOTA GAZOO Racing YPF Infinia(ワイ・ピー・エフ・インフィニア)のエースはまさかのタイヤトラブルに見舞われ、義務付けられているタイヤ交換のピットオープンを待たずに作業レーンへと向かう。
一方のモリーロも、他者のクラッシュによるセーフティカー出動を挟んで、自身のシボレーが小規模な火災に見舞われストップ。義務ルーティンを消化した段階で、チャロッキのフィアットをパスしたシリーズ“3冠”の大ベテラン、ガブリエル・ポンセ・デ・レオン(トヨタ・カローラクロス)がトップに浮上する。
さらに終盤にはロッシがチャロッキのミスに乗じて2番手に浮上するも、そのままポンセ・デ・レオンが危なげなく勝利を収め、前戦トアイに続く連勝で今季2勝目、同シリーズ通算28勝目を飾った。
「信じられない。ここでの勝利のうちでも、最高の部類のレースになった。本当に困難で厳しい週末を好転させることができたので、感極まっているよ」と、陣営内のサテライト的位置付けであるコルシ・スポーツの初代モデルで勝利を収めた元チャンピオン。
同じくスタート時の苦境から挽回し2位に入ったロッシも「まず、ここフニンでのガブリエルの勝利を祝福したい。彼とチーム全員にとって、非常に感動的な瞬間だ」と勝者を称えた。
「そして『チェロ(チャロッキ)』にも感謝したい。数周にわたって激しいバトルを繰り広げたからね。終盤、彼がコーナーをオーバーランしたことで、僕は2位を確保できた。序盤、左リヤタイヤにメカニカルトラブルが発生し、明らかに多くの時間を失った。ただ、セーフティカーのタイミングに助けられたのは幸運だった。あれがなければ、僕のレースはそこで終わっていただろう」
この第7戦イベント会期を前にFIA国際自動車連盟の現会長、モハメド・ビン・スライエムがアルゼンチンを訪問し、同国モータースポーツ界の役員や主要人物との会合に出席。TC2000を運営するタンゴ・モータースポーツ代表のアレハンドロ・レヴィからは、記念品としてマティアス・ロッシが2025年のTC2000選手権を制した『トヨタ・カローラクロス』のスケールモデルが贈呈された。
現地のモータースポーツ専門サイト『Carburando.com』に対し、同会長との非公開会談について詳細を説明したレヴィ代表は、TC2000の現状や歴史、そして何よりも重要な「新型SUV車両プロジェクト」について説明する機会を得たと明かした。
「FIA会長と非公開で会談できたことは、非常に興味深く、有意義なものだった。TC2000とはどのようなものか、その歴史、そして会長の関心を強く引いた新型SUVについて話しをすることができた」と続けたレヴィ代表。「段階的に来季は旧規定のセダンが廃止され、これまで性能調整で均衡を図って来たSUVが真のパフォーマンスを解き放つ。そして(新規参入の)吉利汽車(ジーリー)に加え、さらなるマニュファクチャラーからもSUV規定に関する問い合わせを受けているよ」
[オートスポーツweb 2026年09月09日]