《独自インタビュー》Mリーグ・佐々木寿人「あなたと出会わなければプロになっていなかった」 “年の離れた親友”故・前原雄大プロとの歩み

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2026年09月11日 10:00  ねとらぼ

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出典:Amazon.co.jp

 Mリーグで「魔王」「麻雀攻めダルマ」の愛称でファンから支持される佐々木寿人プロ。2025年10月に68歳で急逝した前原雄大プロとは、「チームがらくた」の愛称で親しまれた名コンビでした。


【画像】話題になったがらくたポーズ


 前原プロが生前、「本にしたい」と書きためていた原稿には、佐々木プロへの思いもつづられていたといいます。しかし、残された原稿だけでは書籍としてまとめるには分量が足りないことが分かり、前原プロの書籍化の夢をかなえるため、佐々木プロが共著という形で参加することになりました。


 2026年4月に発売された『麻雀に生きる』(ART NEXT)は、前原プロと佐々木プロの歩みや麻雀への思い、2人の関係を振り返るとともに、日本プロ麻雀連盟会長の森山茂和プロ、伊藤優孝プロ、高宮まりプロらが前原プロの知られざるエピソードを語った1冊。前原プロの伝説的エッセイ『勝手にしやがれ』も厳選収録されています。


 ねとらぼ編集部は、本書『麻雀に生きる』について佐々木プロに対談インタビューを実施。対談相手を務めたのは、ゲーム配信者・編集者として活動し、Mリーグファンでもあるたろちん(@tarochinko)です。


佐々木寿人(@sasakihisato)


1977年生まれ、宮城県仙台市出身。Mリーグ・KONAMI麻雀格闘倶楽部所属。22歳で上京し、新宿の麻雀店で働きながら、プロの道を志す。主な獲得タイトルは、鳳凰位(第37期・第38期・第40期)、麻雀グランプリMAX(第7期)、チャンピオンズリーグ(第10期)、麻雀日本シリーズ2期(2018・2020)、紅龍戦(第2期)など。ファンからは「魔王」「麻雀攻めダルマ」「ホンイツコンサルタント」「ヒサト」などの愛称で支持されている。勝負めしはカツ丼。


たろちん(@tarochinko)


ゲーム実況者、ライター・編集者。ニコニコ動画でゲーム実況を開始。ねとらぼの編集者を経て、現在フリー。毎晩お酒を飲んでいたら2022年に「重症急性膵炎」を患い膵臓の3分の2が壊死。生涯禁酒となった経験をもとに、noteでは闘病生活やその後の日常について発信している。2025年10月には著書『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』(太田出版)を刊行し、話題に。


「こういう麻雀がしたい」佐々木寿人が憧れた前原雄大の“力強さ”

たろちん:前原さんは佐々木さんの麻雀観に大きな影響を与えた方だと思います。今日は、佐々木さんにとって前原さんはどのような方だったのか、どのような思いでこの本を書かれたのかについて伺えればと思っております。


佐々木寿人:よろしくお願いします。


たろちん:今回の本を共著として出された理由はなんだったのでしょうか


佐々木寿人:共著の依頼があったときに、「ぜひお手伝いしたい」と思いました。昔から前原さんの文章がとても好きだったんですよ。前原さんの最後のメッセージなので自分が少しでもお力添えできれば、という思いでお受けしました。


たろちん:前原さんが亡くなった後に、佐々木さんはnoteも書かれていましたよね。前原さんへの思いが率直につづられていて、熱い内容が話題になりました(note「【無料記事】あなたが遺してくれたもの【佐々木寿人】」)。


佐々木寿人:前原さんへの個人的な思いが強かったので、noteにつづりました。コラムに載せる予定だったんですが、先にnoteに掲載できることになったので、たくさんの方に読んでもらいたくて「無料にしてください」とお願いしたんです。


たろちん:佐々木さんから「無料に」と打診をされたのですね。本にも書かれていますが、あらためて、前原さんとの出会いについて教えてください。


佐々木寿人:前原さんは月刊誌で連載をされていて、僕はずっとファンで読んでいたんです。いつでも成績がよくて、すごく強い方だなと思っていました。


僕が22歳で東京・歌舞伎町に出てきたころ、働いていた雀荘で偶然、前原さんに初めてお会いしたんです。本当に強い麻雀で、自分が思い描いていた「前原雄大像」そのものでした。その強さに感銘を受けて、それからずっと後ろで麻雀を見るようになったんです。


たろちん:当時は、まだプロ麻雀が始まったばかりのころだったと思います。最近のようなネット配信もなかったと思うのですが、どういったところで前原さんの麻雀を見て、「この人の麻雀が好きだな」と思ったのでしょうか?


佐々木寿人:映像はもちろんありませんでしたからね。月刊誌に牌譜(はいふ ※麻雀の対局における、各プレイヤーの打牌やアガリなど、対局の流れを記録したもの)が載っていたので、それを見て「すごく強い人だな」と思っていました。それに、連載の『勝手にしやがれ』が面白くて。そういうところから、個人的にずっとファンだったんです。


たろちん:雑誌で見る印象と、実際に後ろから所作も含めて麻雀を見たときとでは、やはり違いましたか?


佐々木寿人:所作も含めてですが、とてもきれいとは言えない所作だったんですよね(笑)。


たろちん:(笑)


佐々木寿人:力強く、ダイナミックな動きをされていました。有名な話ですが、麻雀卓の天板には「ラシャ」というマットが張られているんです。前原さんが麻雀を打っていると、そこが熊の爪痕のように削れていくんですよ。当時はそれを見て、すごくかっこいいなと思いました。今だったら「マナーが……」と言われてしまうかもしれませんが(笑)。


一牌一牌、ツモるたびに盲牌しながら持っているんです。そうした力強さも含めて、他の人とは違うなという印象がありましたね。本当に力強かったですね。とにかく強かったです。


たろちん:前原さんのそうした力強い麻雀から、佐々木さんも影響を受けたのでしょうか?


佐々木寿人:もともと自分の中に持っていた部分もありますが、前原さんを見て、さらに火がついたところはあったかもしれません。「こういう麻雀がしたいな」という憧れがありました。


いわゆる“プロらしい”、きれいな手役作りをする方も多いですが、前原さんはむしろ真逆で、力強い麻雀で勝ち続けるんです。僕はそこに憧れていましたし、自分もそういうふうになりたいと思っていました。アガリ回数も多かったですし、親の連荘もすごかった印象がありますね。


たろちん:なるほど。よく「愚形リーチ」や「がらくたリーチ」と言われますが、そうした雀風の違いは、どのように生まれるものなのでしょうか。やはり性格なども関係するのでしょうか?


佐々木寿人:前原さんは「負けず嫌いじゃなくて、勝ち好きだ」と書いていましたね。勝つために、かなり研究されていたと思うんです。そのためには、愚形リーチも必要だと思います。


毎回、良形(りょうけい)でアガれるわけではないですし、手役がついてくるわけでもない。そうではない局面をどうやって制圧するかと考えると、愚形リーチが必要な場面もたくさんあるわけじゃないですか。


相手がひるんでいる間に、そういうリーチを打ちながら盤面の状態をよくしていって、自分の場を作る。前原さんは、それがうまかったと思いますね。


たろちん:どちらかというと、自分が押すことで、相手を引かせるようなスタイルだったのでしょうか?


佐々木寿人:まさにそのスタイルでしたね。


たろちん:本の帯には「あなたと出会わなければ麻雀プロになっていなかった」という言葉があります。佐々木さんがプロを目指すようになった一番大きなきっかけは、前原さんだったのでしょうか?


佐々木寿人:前原さんが、僕にプロになるようかなり勧めてくれたんですよね。もともと僕自身は、プロになるつもりは全くなかったんです。


ただ、前原さんや荒さん(荒正義プロ)の麻雀を後ろで見させてもらううちに、だんだんと惹かれていきました。当時は今と違って映像配信が全くなかったので、ギャラリーが卓の周りを囲んで対局を見るスタイルだったんです。そういうプロの舞台を実際に目の当たりにして、次第に「自分もここで打ちたい」と思うようになりました。


たろちん:本には、当時、佐々木さんは「食べていけないんだったらプロじゃないんじゃないか」と思っていたとありました。それでも、「ああいう人になりたい」という前原さんへの憧れが上回って、プロになることを決意したのでしょうか?


佐々木寿人:そうですね。それくらい、前原さんと荒さんの存在は大きかったです。僕にとって、最も影響を受けた雀士がこの2人でした。お二人ともタイトルを数多く獲られていましたしね。今振り返ると、プライベートでも親交があったことが大きかったのではないかと思います。


たろちん:最近の麻雀プロの方は、それぞれ独自の雀風があり、人柄やキャラクターも含めて魅力があると思います。前原さんや佐々木さんは、Mリーグが始まる以前から、特にそうした魅力を持つ方だったという印象があります。お二人とも攻めが華やかで、“魅せる麻雀”というイメージがありますが、そうした部分はご自身でも意識されていたのでしょうか?


佐々木寿人:やっぱり攻めないと勝てないと思っていますから。押しはできるだけ強くいたいと思っています。アガらないと勝てないので、そのためにどう攻めるか、手組みも含めてかなり考えていたと思いますね。そういう考え方は、前原さんや荒さんから間違いなく影響を受けています。


たろちん:逆に、守備型の雀士についてはどのように感じていますか?


佐々木寿人:今の僕は、どちらかというと守備型になってきているんですよね。だから今は、守備型の人の考え方も分かるところがたくさんあります。


若いころは攻めっ気が強くて、あまり守備が好きじゃなかったんです。でも、守備もやらないと勝てないということにだんだん気付いて。守備型の人は、もともとそういう意識が備わっていたんだなと思います。やっぱり守備の土台は大事だと思います。


“攻め”から“守備”へ――佐々木寿人が語る、勝ち続けるための変化

たろちん:佐々木さんは、ファンから「攻め」のイメージを持たれている一方で、押し引きのバランスがすごくいいとも言われていると思います。本にも、途中から守備を意識するようになって勝てるようになったエピソードが書かれていましたが、前原さんや荒さん以外で、守備の面で参考にした雀士や考え方はありましたか?


佐々木寿人:守備に関しては、誰かを参考にすることはなかったですね。負けるときは無駄な失点が多かったので、そこをどう改善していくかを考えました。


ただ、もしかしたら守備に関しても、荒さんの影響はけっこう受けていたかもしれません。荒さんは、きちっとやめられるんですよね。メリハリが利いていて。


当時の僕は、どこまで攻めて、どこでやめるのかという判断が、負けている時期にはできていなかったんです。見切りが悪かった。そういう「見切り」という部分では、負けた経験によって改善されたところもあると思います。


たろちん:僕は将棋も好きでよく見るのですが、麻雀はどれだけ実力を上げても、どうしても運の要素が絡んでくるところが難しいなと思いながら見ています。自分では一度も間違った選択をしていないのに負けてしまったり、逆に間違った選択をしたのに勝ったりすることもあると思います。そういう中で、佐々木さんはどのように気持ちをコントロールしていますか?


佐々木寿人:まさにおっしゃる通りのことが、よく起こるんですよね。でも、それをそのままにしていても勝率は上がらないので、正確な手順を追い続けることを意識しています。「運」ではなく、しっかりとした土台を作ることが大切だと思います。土台がしっかりしていれば、ある程度は安定してくるのではないかと思います。


これはよく言うことなんですけど、麻雀はムダヅモの方が圧倒的に多いんですよ。我慢している時間が長くて、相手がアガっているのを見ている時間も長い。つらい時間の方が長いんです。だから、忍耐力が大事なんですよね(笑)。僕も年を取ることで、少しずつそういう部分が身についてきたと思います(笑)。


たろちん:若いころは、今ほど我慢できなかったのでしょうか?


佐々木寿人:そうなんですよ。昔は攻めっ気が強くて、そこまで頭が回らなかったんですよね。


たろちん:昔のMリーグでの佐々木さんは、強烈に勝ちにいく印象があります。「しっかり振り込んで、しっかりアガる」という方針があるじゃないですか。そうした波があるところも、戦術や人柄としての魅力につながっているのではないかと思います。


佐々木寿人:それもよく言われましたね。自分の一番いいところだったとは思うんですが。前原さんと一緒で、僕も勝つことにこだわりがあるので。勝たなくちゃ意味がないですからね。


いくら自分が「こうしたい」と思っていても、結果がついてこなければ意味がないと思っています。なので、結果を出すために、いろいろと雀風を変えていますね。


たろちん:今でも、日々雀風は変わっていっているんですか?


佐々木寿人:変わりますね。ずっと勝ち続けられる世界ではないじゃないですか。いい時期もあるんですが、今はプロリーグでけっこう負けていて(取材は2026年7月下旬)。「打ち方が悪いんだろうな」と思いつつ、いろいろと反省しながら、毎年少しずつ雀風を変えてやっていますね。


たろちん:そうなんですね。視聴者からすると、「これで負けちゃうのはかわいそうすぎるだろ……」と思うような展開もありますが、そういうときはどう捉えていますか?


佐々木寿人:自分の中で隙を作っているというか、ちょっとした油断が負けにつながることって多いんですよ。リーグ戦は、まさにその典型例だなと思っています。


たろちん:麻雀は、自分の実力だけではどうにもならない部分があること、運によってツキが巡ってくることも面白さの一つなのでしょうか。


佐々木寿人:そうですね。アマチュアの方に好まれるのは、そういう部分もあるのかなと思います。プロが毎回勝てるわけではなくて、アマチュアの方がすっとトップを取れることもたくさんありますから。そこに魅力があるんでしょうね。


たろちん:実力が高くても負けてしまうことがあるというのは、「勝つことが好き」なプロにとっては、なかなか納得できないのではないかと思ってしまうのですが、どうなんでしょうか?


佐々木寿人:そうですね(笑)。でも勝率にしても、プロ野球のバッターとそこまで変わらなくて、3割いけばいいというイメージなんですよ。だから、そこは割り切るしかないと思っています。


長期的な目線で見れば5割、6割勝っている人って、1人もいないんですよ。プロでもそれくらいの勝率なので、「しょうがないかな」と思いながらやっていますね。


「麻雀界に風穴を開けてくれた」“チームがらくた”と前原雄大プロの生き様

たろちん:Mリーグについてもお聞きしたいです。Mリーグの発足前と後では、麻雀界も大きく変わったと思いますが、佐々木さんが特に大きな変化だと感じたことは何でしょうか?


佐々木寿人:やっぱり、Mリーグが始まってから麻雀ファンが圧倒的に増えましたよね。僕たちもすごく責任を感じていますし、もっともっと大きな世界にしていきたいと思っています。


最近では子どもたちにも麻雀が親しまれるようになって、「これからどうやって広めていこうか」という話もあります。うちの会長の森山(日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ)は、「麻雀は面白すぎるから、あまり子どもには教えたくない」という思いもあるんです。それも当然だなと思いつつ、僕たちはこれからどうやって麻雀を広めていくべきなのか、考えていますね。


たろちん:最近はテレビゲームでも、「麻雀に似ているな」と思うものが多いと感じています。例えば『スプラトゥーン』シリーズも、誰とマッチングするか分からず、上手い人が仲間になったり敵になったりする。使える武器などにもランダムな要素がありますよね。


絶妙に勝ったり負けたりするから面白くて何度もプレイしてしまう一方で、きちんと技術的な要素もあって、上達する楽しさもある。そういうところが麻雀に似ているなと思います。確かに、子どもたちが麻雀を始めたら、「10歳の天才雀士」のような存在が出てくる可能性もありますよね。


佐々木寿人:いずれそういう人が出てくると、麻雀界も盛り上がっていいと思いますね。将棋の藤井聡太棋士のような方が麻雀界にも出てくる時代が、いつか来るのかなと思いながらやっています。


僕も来年50歳になるのですが、業界が盛り上がっていくためには、若い人たちにも盛り上げてもらわないと、麻雀界は広がっていかないと思っています。先輩方からずっと受け継いできた「後輩を育てる」という気持ちは強くあるので、そこは大事にしていきたいですね。


たろちん:本には、前原さんが「熱狂を外に」という思いを意識されていたと書かれていましたが、佐々木さんはどのように考えていますか?


佐々木寿人:その気持ちはありますね。前原さんは、勝利時の「がらくたポーズ」に批判が寄せられたこともあって……。少し落ち込んでいた時期もありました。


たろちん:前原さんが対局終了直後の卓上で右手を上げて天を指さすパフォーマンスをしたことですね。「ラオウポーズ」などとも呼ばれていました。


佐々木寿人:あの後、僕も「がらくたポーズ」をやったら、前原さんが「気持ちが安らいだ」と言ってくれたんです。そういったことも含めて、前原さんは「麻雀をどうやって盛り上げていくか」という思いを体現されている方でした。


僕もそんなに目立ちたがりではないんですが、できるだけ麻雀を広めていけたらいいな、という思いはあります。


たろちん:いろいろなチームの方がそういった試みをされていて、ファンとしては「面白いな」と思いながら見ています。一方で、前原さんの「がらくたポーズ」にも批判があったと聞くと、麻雀界にも過渡期ならではの難しさがあったのかなと思うのですが、いかがでしょうか。


佐々木寿人:麻雀って、アガっても喜べないんですよね。前原さんは「選手の喜びがあまり伝わらない」と言われたらしいんです。それで前原さんなりに考えて、あのポーズで勝利の喜びを表現してみようと思ったんでしょうね。


実際にやってくれた勇気もすごかったですし、麻雀界が変わっていく一つのきっかけになったんじゃないかと思います。


たろちん:あのポーズを入りたての若手がやっていたら、また違った受け止められ方をしていたと思います。ベテランの前原さんがやったからこそ、意味があったのではないかと思いました。


佐々木寿人:そうですね。昔から麻雀界には、ガッツポーズなどをする文化がなかったので、あれは風穴を開けてくれたシーンだったと思います。


Mリーグのパブリックビューイングも始まって、ファンの方が勝利を喜んでくれている姿を見るのが、すごくうれしかったんですよね。「麻雀も少しずつ変わってきたな」と思っていますし、プロ自身も勝った喜びを少し表現してもいいのかな、とは思っていますね。


たろちん:佐々木さんは、自分が勝った対局は見るけれど、負けた対局は見ないと伺ったのですが、本当ですか?


佐々木寿人:そうですよ。体が、負けた試合の再生ボタンを押せなくなったんです(笑)。勝った試合なら押せるんですけど。なので最近のリーグ戦も、負けたので見られていないです(笑)。


たろちん:そのあたりも、プロによってタイプが分かれるのでしょうか?


佐々木寿人:そうですね。滝沢プロ(滝沢和典プロ)は逆のタイプで、負けた試合をよく見ると言っています。前原さんもそうでしたよ。「負けた試合を見ることに意味がある」と言っていました。そこは僕とは違います(笑)。


麻雀はメンタルを保つことがすごく大事なので、負けた試合を見てぐったりするよりも、勝った試合を見ていいイメージを持って次の試合に臨む方が、僕には合っていると思っています。


負けた日は、本当にぐったりして帰ってくるんです。でも、負けることは何度も経験しなければいけないので、できるだけ負けた試合を思い出さないようにしています。


たろちん:選手によって、かなりタイプが違うんですね。本にもたくさんのエピソードが書かれていますが、佐々木さんにとって「チームがらくた」はどのような存在でしたか?


佐々木寿人:麻雀界初のユニットだったと思っているんですよね。2人の性格もすごく合っていたので、番組でチームを組むのもすごくやりやすかったですし、イベントもやらせてもらいました。僕としては非常にありがたい存在でした。販売したTシャツを着てくれるファンの方もたくさんいて、うれしかったです。


たろちん:「チームがらくた」があることで、お二人ならではのカラーを出せた部分もあったのでしょうか。ご自身でも「チームがらくた」らしさを意識することはありましたか?


佐々木寿人:ありました。2人のカラーを出せたと思っています。森山さん(日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ)が命名して下さったんですけど、「チームがらくた」という名前もファンの間に広まってくれましたし、ありがたかったなと思います。


「がらくたリーチ」って、お客さんが喜んでくれたりするんです。正直、プロらしからぬリーチもあるんですけど、「これが見たくて地方から来たんです」と言ってくださる方もいて。そういうときは「ああ、よかったな」と思いますね。


たろちん:「がらくたリーチ」と名前が付いて、自分たちの戦法として定着するってすごいですよね。


佐々木寿人:そうですよね。別に必殺技でもなんでもないんですが(笑)。実況の方が「がらくたリーチ」と言ってくれたりするので、うれしいなと思います。


たろちん:視聴するファンとしては、「がらくたリーチ」のように必殺技のような名前が付いていると、見ていて分かりやすいですし、麻雀初心者の方も入りやすいのではないかなと思います。


佐々木寿人:前原さんが昔、「ハラハラドキドキさせて勝つのがスーパーヒーローだ」と言っていて、それがずっと頭に残っているんですよね。そういう“必殺技”のようなものがあるのは、うれしいことだなと思います。


「年の離れた親友」前原雄大が最後まで貫いた“麻雀に生きる”

たろちん:今回の『麻雀に生きる』を執筆されたり、前原さんの文章を読んだりする中で、あらためて気付いたことはありましたか?


佐々木寿人:前原さんの体のことなど、本を読んで初めて知ったことがたくさんあったんです。Mリーグの期間中も、僕が知らなかったことがたくさんあって。「こんなに大変な中で打っていたんだ」「こんな状態でやっていたんだ」と思いました。体調は相当きつかったと思います。


たろちん:前原さんは、一緒にいるときも体調の悪さを表には出さなかったんですか?


佐々木寿人:全然出さなかったので、分からなかったです。すごいですよね。体調が悪いことを周囲に気付かれないようにしていたんだと思います。


たろちん:前原さんの「麻雀に生きる」という言葉を、佐々木さんはどのように捉えていますか?


佐々木寿人:前原さんの最後の試合は達人戦(「達人戦〜GREAT LEAGUE〜」第7節)で、チューブをつけながら、最後の最後まで戦ったんですよね。決勝戦まではいけませんでしたが、本当に立派な麻雀プロとしての人生と生き様を、僕たちに見せてくれたと思っています。


すごくつらい状況で打っていたと思うんです。それでも、僕と最後に「鳳凰位決定戦」で打ちたいという思いでリーグ戦に臨んでいらっしゃった。その夢は叶いませんでしたが、その姿勢が本当にすごいなと。その思いを胸に、僕もこれから打っていこうと思っています。本当に素晴らしかったです。


実は、対局室と控室のほんの数メートルの移動でも、ゼエゼエと息を切らしながら歩いていらっしゃったんですよ。その姿を見ているので、本当にすごいなという気持ちしかないです。最後は「みんなに迷惑をかけちゃうから」と辞退されたんですけど、それでも「最後まで卓で打ち続けたい」という思いがあったんでしょうね。


僕と前原さんは、「鳳凰位決定戦」では一度も一緒に打ったことがないんです。それが叶わなかったことは、本当に残念です。


たろちん:最後に、本書の読みどころを教えてください。


佐々木寿人:僕も知らなかったことがたくさんあったんですが、前原さんがどんな思いで最後まで牌を握っていたのかが書かれています。そこはぜひ注目して読んでいただきたいです。


前原さんとは、一言で表現すると“年の離れた親友”という関係だったと思っています。大先輩なんですが、遠慮なく付き合えて、すごく話しやすかった。本には、そんな僕と前原さんとの関係性についても書かれています。


前原さんは本人いわく、「佐々木寿人マニア」だったそうです(笑)。そう言われて、うれしかったのを覚えています。X(Twitter)でもよく言っていたんですが、僕が出るものは試合も解説も含めて全部見てくれていたんですよ。前原さんは全試合を見ることで知られていましたが、特に僕の試合は全部見ていたと思います(笑)。


たろちん:本当のマニアですね(笑)。前原さんから「昨日の試合が〜」みたいに、何か言われることもありましたか?


佐々木寿人:「私に対する褒めが足りない」と言われたことがありました(笑)。解説中に前原さんの話を出すことがあったんですが、そういうときに「もっと私のことを言う回数を増やして」とか、「私のことを褒めて」と言われたことがありました(笑)。


(了)


『麻雀に生きる』

 「叶うことなら、卓上で命をまっとうしたい」。日本プロ麻雀連盟1期生として、昭和、平成、令和と変わりゆく時代の中で、常に第一線で戦い続けた前原雄大プロが、2025年10月12日、急逝された。68歳だった。圧倒的な強さとその存在感ゆえ、麻雀ファンから“総帥”と親しまれた前原プロが遺した言葉「麻雀に生きる」とはどういうことのなのか。 本書では、A1リーグをはじめ、全タイトル戦から身を引くことを決断した直後、自身の生き様を振り返り、伝えたかった思いを告白。前原プロと愚直な剛腕コンビ《チームがらくた》を結成し、MリーグでもKONAMI麻雀格闘倶楽部で共に戦っていた佐々木寿人プロは、その強さの真髄を振り返る。


 さらに“雄大伝説”をよく知る日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロをはじめ、同1期生として時代を切り開いて来た伊藤優孝プロ、KONAMI麻雀格闘倶楽部ファミリーとしてMリーグを戦った高宮まりプロらが、その知られざるエピソードを語り継ぐ。“雄大”の名付け親でもある作家の故・伊集院 静さん(享年73)が題字を書かれた前原プロの伝説エッセイ『勝手にしやがれ』も厳選収録。68年間の足跡から「麻雀に生きる」という言葉に込められた想いをたどる。




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