
福田正博 フットボール原論
■Jリーグ新シーズンは、新たな選手たちの活躍が目立っている。福田正博氏にその注目の選手たちを挙げてもらった。
>>前編「福田正博がJリーグ序盤戦で楽しみと感じたチーム」
【実力をしっかり示す小川航基】
今季のJリーグは「これまでと違う」と思っているが、それはやはり新たな選手たちが躍動しているのが大きい。
そのひとりが小川航基(FC町田ゼルビア)だ。北中米W杯ではオランダ戦で鎌田大地の同点ゴールを生むなどの活躍をしたが、29歳と選手として脂の乗ったタイミングでオランダのNECからJリーグへ戻ってきた。
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過去にもW杯に出場した日本代表選手がJリーグに戻ってくることはあった。ただ、そのほとんどはキャリアの晩年になってからで、W杯後の見る人たちの熱量が高いタイミングではなかった。小川のようにW杯によって顔と名前とポジションが日本中に知られるようになった直後にJリーグへ復帰というケースは、あまり記憶にない。
しかも、小川は「ただ戻ってきた」だけではなく、しっかりとプレーで実力を示してくれた。Jリーグ復帰後2戦目となった9月2日の川崎フロンターレ戦で途中出場すると、同点弾、逆転ゴールを決めて町田を勝利に導いた。
海外でプレーをする日本人選手というのは、外国人選手に当たり負けしないパワーをつけるために体重を増やすことが多い。一方、Jリーグではパワーよりもアジリティーが求められるため、海外から戻ってきた選手は体重のコントロールが課題になってくる。もしかしたら小川もここからパワーとアジリティーのバランスに苦労するかもしれない。ただ、小川がそこをどう乗り越え、どんな活躍を見せてくれるのかも、今シーズンは注目していきたい。
【横浜F・マリノスで注目のふたり】
もうひとりの新たな選手、それは三井寺眞(横浜F・マリノス)だ。10代の選手がJリーグでプレーすることはさほど珍しくないが、それでも16歳が開幕戦でスタメン出場しゴールを決めた。しかも、相手は2025シーズン王者の鹿島アントラーズで、さらに言えば地上波で試合中継されていたなかでの大活躍。ここまで揃うと、そういう星のもとに生まれたと言いたくなるようなめぐり合わせだ。
その後の試合でも落ち着いたプレーを見せている。16歳で、フィジカル的にはまだ成長の余地があるなかJ1の舞台で通用しているのは、技術の高さはもちろんだが判断と予測がしっかりできているからだ。相手がどう当たってくるかを含め、自分の身を守りながらプレーができる。まるでプロとして何年もやってきたかのような振る舞いをしている。
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三井寺は左サイドで起用されているが、左利きのため右サイドに置いてもおもしろいだろう。ただ、横浜FMの右サイドは近藤友喜が活躍しているため機会は限られるだろうが、サイドから中央にカットインしての左足でのシュートというシーンを見せてくれるのを期待している。彼も数年後には海外移籍をする可能性が高い能力を持つ選手だけに、いまの年齢でのプレーをしっかりと目に焼きつけておきたいと思う。
その横浜FMは2025シーズンは降格圏で喘いだが、今季はスティーブ・コリカ新監督のもとでしっかりしたスタートを切った。その中心はトップ下の天野純で、その後方で守備的MFの松村晃助と知念慶が支えている。そのなかで私が注目しているのがワントップの谷村海那だ。
2025年夏にいわきFCから横浜FMに加入し、今シーズンは6試合ですでに5得点。決定力もさることながら、前線でボールを収めることができるため、トップ下の天野が右MFの近藤、左MFの三井寺を使ってゲームを組み立てられている。
谷村は1998年3月生まれで、1998年8月生まれの上田綺世(リール)と生まれ年は同じだが、学年では1997年8月生まれの小川航基と同学年にあたる。次のW杯では32歳前後。ただ、サッカーは年齢でやるものではないので、まだまだ成長する可能性を秘めている。決して若手ではないものの、いまの谷村は日本代表でも見たいと思わせてくれる。
【日本代表での活躍も期待】
攻撃的なポジションでは、サンフレッチェ広島の鈴木章斗にも注目している。チームは開幕からジェフユナイテッド千葉を3−0、浦和レッズを4−1で下して2連勝したが、続く川崎とガンバ大阪には引き分け。名古屋グランパスには3−0で勝ったものの、翌節はファジアーノ岡山と打ち合いの末に2−3で敗れた。
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チームとして安定感を少し欠くなか、鈴木がゴールを決めた千葉戦、浦和戦、名古屋戦では勝点3を手にしている。それだけに鈴木がゴールという結果でチームを波に乗せてもらいたい。そして、2003年生まれで23歳の鈴木には、次のW杯に向けて日本代表でしっかり存在感を示してもらいたいとも思う。
その日本代表は来年1月のアジアカップまで森保一監督体制の継続が決まった。きっと日本サッカー界全体の発展を常に考えている森保監督のこと、「前回大会の雪辱を果たし、有終の美を飾りたい」なんていう気持ちは微塵もないだろう。このアジアカップは、2030年W杯の組分けを考えて、FIFAランキングを高めるため重要な戦いになる。いい形で次の大岩剛監督にバトンタッチしたいと考えているはずだ。
そのためには、いかにチーム全員が同じ目的に向けて一丸になれるかが重要。その点でヨーロッパ組はコンディションやモチベーションの面で難しさがあると推測されるので、Jリーグからも多くの選手を招集する可能性があるだろう。
そこに向けた第一歩となるのが、9月24日、28日、10月1日、5日に国内で予定されているウルグアイやベネズエラなどとの強化試合だ。海外組だけではなく、Jリーグもくまなく見ている森保監督だけに、今季の選手たちのパフォーマンスも細かくチェックしているはずだ。ここで触れた小川や谷村、鈴木や天野といった選手たちをはじめ、ひとりでも多くのJリーグ組が日本代表に名を連ねることを期待している。
text by Ichiro Tsugane