
2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米コロンビア大学などに所属する研究者らが1992年に発表した論文「Discrepancy between Self-Reported and Actual Caloric Intake and Exercise in Obese Subjects」は、1日1200kcal以下の食事制限を続けているのに一向に体重が減らないと訴える肥満患者の真相を突き止めた研究報告だ。
食事制限をすると痩せるが、それでも痩せない理由には2つの仮説が挙げられる。1つは、エネルギー消費量そのものが極端に少ない特殊な体質。もう1つは、本人が自覚している以上に、実はたくさん食べている。
研究チームは、食事制限をしても痩せないと訴える肥満患者10人を、そのような訴えのない一般的な肥満患者と比較しながら14日間にわたって詳細に調査し、その真相に迫った。
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二重標識水(印をつけた2種類の水を飲んでもらい、その減り方の差から吐き出した二酸化炭素の量、つまり実際のエネルギー消費量を割り出す方法)を用いて消費カロリーを測定した。
その結果、痩せないと訴えるグループの総エネルギー消費量や安静時の基礎代謝は、それぞれの体格から予測される正常値とほぼ一致していた。食事や運動によるエネルギー消費の効率にも異常は見られず、基礎代謝が低いために痩せないという体質的な理由は否定された。
では、なぜ体重が減らないのか。それは痩せないと訴える患者たちは、実際の食事摂取量を個人平均で47%も少なく申告していたからだった。1日1028kcalと申告しつつ、実際には2081kcalを食べていた。
さらに、運動によるカロリー消費量についても、実際の活動量より個人平均51%多く見積もっていた。1022kcal消費したという自己申告に対し、実際は771kcalしか消費していなかった。
心理的な評価では、うつ症状や人格特性、精神疾患の診断において一般的な肥満患者のグループと有意な差はなかった。しかし食行動の質問票では、空腹感や衝動的な食べ過ぎが少なく、自分は食事量を抑えられていると答える傾向が強かった。
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研究チームは、これを意図的な虚偽とは見ていない。過少申告は広く見られる現象で、一般的な肥満患者のグループにも同じ傾向がみられた。しかも、原因を突き止めるための手間のかかる調査に自ら進んで参加し、結果を告げられたときには一様に打ちのめされていた。
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