
連載【果てしない延長戦】第17回
元Jリーガーで、現在は秋元康プロデュースの昭和歌謡グループ・SHOW-WAのメンバーとして活躍する青山隼の連載「果てしない延長戦」。現役時代の先輩や戦友をはじめ、各界で活躍する方をゲストに招き、「人生の転機」や「次への挑戦」をテーマに熱く語り合う。
引き続きゲストは、SHOW-WAのツアーや、グループ初の日本武道館公演(10月1日開催)を担当する舞台監督・小野貴巳さん。SHOW-WAコンサートの裏話などを語った前編に続き、後編では舞台監督になった経緯や信念、武道館公演に向けての思いを語ってもらった。
【舞台監督歴30年の始まり】
――この連載ではゲストの方々に「人生の転機」についてお伺いしています。小野さん自身の転機は、この業界に入ったことでしょうか?
小野 そうですね。高校を卒業してすぐにこの仕事を始めたことですかね。僕の兄が小劇団の舞台監督をやっていて、「ちょっとパネル(舞台美術)作りを手伝って」と頼まれたのがすべての始まりでした。手伝いに行ったら、「お前、パネルを叩いて作ったんだから、現場でちゃんと立てるところまでやらなきゃダメだろ」と劇場まで連れて行かれて。
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青山 そのまま劇場に連れて行かれたんですか(笑)。
小野 そうなんです。パネルを立てたら、今度は「いつ倒れるかわからないから、本番中は舞台袖でずっと見てろ」と袖付きをやらされて。やっと公演が終わったとホッとしたら「これをバラして持って帰るんだよ」と......。「完全にハメられた!」と思いながらやっているうちに、気づいたらそのまま舞台監督になっていました(笑)。でも、辞めずにずっと続けているということは、この仕事が嫌いじゃなかったんでしょうね。
青山 お兄さん上手いですね(笑)。舞台監督になられて、もう何年くらいですか?
小野 18歳から始めたので、30年くらいになりますね。30代半ばくらいまでお芝居の現場をやっていたのですが、知り合いから「コンサートやってみない?」と誘われたんです。ただ、音楽ライブの経験がなかったので、「ホール現場の2番手ならやるけど、チーフ(全体の責任者)はやらないよ」と念を押して引き受けました。その半年後に、またハメられたんですよ(笑)。
青山 ええー! またですか!(笑)
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小野 野外ライブがあって、社内のチーフやスタッフなどの主戦力がみんなそっちの現場に行ってしまって。前日に都内で開催されたファンミーティングの現場に、なぜか僕ひとりぽつんと立たされていて(笑)。必死に対応してそのピンチをなんとか乗り越えたら、チーフ舞台監督になっていました。
青山 その状況で対応できちゃうのがすごいです! 舞台の世界に入ったら、いつかはチーフになりたいと思うものではないんですか?
小野 え、僕は本当に嫌でしたよ(笑)。自分で言うのもあれですが、チーフになったら大事なことをすべて自分の責任で決断しなければいけないじゃないですか。そのプレッシャーが怖くて。
青山 舞台監督のお仕事で一番大変なことはなんですか?
小野 なんだろうね。いつも通りに、無事に本番を終わらせることかな。
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青山 深いなぁ。この仕事が好きで楽しいと思い始めたのはいつ頃からですか?
小野 最近かもしれないですね。僕は結婚しているのですが、家族に「仕事は嫌だけど、家族のために我慢して働いている」なんて口が裂けても言えないじゃないですか(笑)。「好きな仕事をさせてもらっている」と言うほうが、お互いの精神衛生的にいいですよね。だから最初は、自由に仕事をさせてもらっている感覚が念頭にあっただけで、やりたかったわけでもなかったんです。
青山 この30年間で仕事を辞めたいと思ったことはありますか?
小野 いっぱいありますよ! でも絶対にやめない。チーフの責任も怖いですが、仕事を辞めることのほうが怖いですからね。
青山 30年続けるだけでもすごいですし、今はスタジアムやドームなど、ひとつひとつの現場がホールよりも大きいじゃないですか。プレッシャーも相当ですよね。
小野 スタジアムの現場もやらせていただきましたが、感覚としてはライブハウスでやるのと同じでした。やったことがないから怖かっただけで、いざやってみると同じなんだなと。経験したからこそ言えることで、周りのみんなにやらせてもらったんだと感謝しています。
【一度逃げたら先に進めない】
青山 小野さんが人生やこれまでのキャリアの中で最も大切にしている信念や座右の銘を教えていただきたいです。
小野 「逃げないこと」ですね。どんなに嫌でもどんなに怖くても、とにかく絶対に逃げない。それだけは大事にしています。だって、一度逃げてしまったら、その先に進めないんですよ。若い頃、責任の重いチーフの仕事を避けていた時期も、今思えば"逃げ"だったんだろうなと。でも、腹をくくって向き合えば結果はあとからついてくる。生き方として、そこは持っておきたいです。
青山 "逃げない"という言葉、今の僕にもすごく響きます。新しい挑戦を前にすると、どうなるかわからなくて不安になるし怖くもなる。でも、思うように結果が出せなかったとしても、逃げずに向き合った経験そのものが先々の人生に残っていく。僕もサッカー選手時代に、同じ経験がありました。今も30代半ばを過ぎてから歌やダンスに挑戦させていただいて、「できるわけない」と絶望しそうになることもあります。それでも必死こいて本気で向き合い続ければ、最後は「ちゃんと形になってやり遂げられている」という瞬間が訪れる。あきらめるのは簡単ですが、そこで踏みとどまって乗り越えていくこと。これはグループの活動でも自分の生き方でも同じことだと思っています。
小野 そうですね。逃げて後悔するのが一番嫌いなんです。何もやらないでモヤモヤするくらいなら、当たって砕けたほうが何倍も清々しい。それに一度逃げてしまうと、また別の場面で同じような壁がやってくる気がするんですよ。「また逃げるの?」って神様から試されているような感じで(笑)。だったら、最初から腹をくくって、今ここで向き合っちゃったほうがいい。そうやってひとつの現場に向き合うことで、そこで得た経験を次のアーティストのステージに持って行けますから。
青山 本当に、全く同じ考えです。きっと、10月1日の武道館公演もそうですよね!
【SHOW-WA初の日本武道館へ】
――ファーストツアー、セカンドツアーを駆け抜け、いよいよ10月1日にはSHOW-WA初となる武道館公演を控えています。楽しみですね。
小野 そうですね。ライブ会場の箱の規模が毎回更新していくので、それに対してメンバー全員が毎回、裏でビビり散らかしている(笑)。だけど、いざ本番を迎えるとその怖さを乗り越えて、気持ちをひとつにしてステージに上がってくれる。そういうグループなので、一緒にやっていて僕自身も勉強になっています。初めて立つ大きなステージで本番をやるのって、やっぱり怖いじゃないですか。それは自分の仕事にも言えることです。ただ無難にこなすだけじゃダメで。この壁を超えられるかギリギリのところに立たされたとき、逃げずにちゃんと向き合えるかどうか。それを乗り越えないと、どんな職業でも次のステージに進めない。必死になる彼らの姿を見て、僕も背中を押されている感じがします。
青山 初めてチーフとして担当された武道館やドームはいつ頃ですか?
小野 どちらも最近なんですよ。もうずっと怖くて逃げ回っていたんです(笑)。ホール規模しか担当してこなかった人間からすると、アリーナやドームなんて舞台美術の仕組みから違うんですよね。舞台装置を作っているとは思えない領域から入るのは本当に怖いです。
青山 初めてのドームってやっぱり怖かったですか?
小野 ドームに限らず、初めての会場を任されるときは夜も眠れないですよ。クレーンを使った演出をするときは「クレーンが倒れる夢」を見て、天井が落ちてくるとか、ツアーが終わるまでいろんな事故や事件が起きて本番が進行できなくなる夢をずっと見続けて......。本番を無事に終えると、怖い夢もピタッと見なくなるんです。
青山 わかります! 僕もライブ前、本番で歌詞が飛ぶ夢をよく見ます! 武道館公演まであと1ヶ月を切りましたが、今回も新曲が入ってくるのでまた振り入れが......。「この極限状態、前にも見たことあるな」って、毎回同じ追い込まれ方をしている気がします(笑)。
小野 大丈夫ですよ(笑)。その状況からどう進行していくかは置いておいて、そういうのをがむしゃらに乗り越えるのがあなたたち、SHOW-WAでしょ?
青山 そうですね! もちろんミスしないように練習はしますが、一生懸命に向き合っている必死な姿をお見せするのがSHOW-WAかなと思います。
小野 そうそう、そんな姿を見せることができたら、本番で多少のミスがあったとしてもそれはミスじゃない。逆に、どれだけ完璧に踊れたとしても、SHOW-WAらしさを出せなかったら、それこそミスになるんですよ。
青山 小野さんが近くにいてくれて、本当に心強いです。僕らがブレそうになったときにこういうお話を聞くと「そうか、僕らはこういうグループだったよね」と芯を取り戻せるというか。
小野 ファーストツアーの頃から「武道館に立つ、紅白に出る」と言っていたのは知っているからね。10月1日は、SHOW-WAにとって間違いなく大事な日になると思います。ただ、武道館はまだ見ぬステージに進むための入口でもある。ただ、どれだけ会場が大きくなってもやるべきことは変わらなくて、ひとりでも多くのRubyのみなさんを楽しませて、幸せにして帰ってもらうこと。ただそれだけを胸に、ステージに立ってほしいです。
青山 本当にありがとうございます! 小野さんが僕らの背中を支えてくれているからこそ、自信を持って飛び込んでいけます。この対談の言葉は、楽屋の壁に貼りたいくらいの宝物になりました。6人の思いをひとつにして、武道館公演を絶対に成功させます。そして、その先にあるさらに大きなステージを目指して、逃げずに進み続けます!
★果て戦だけの激レアSHOW-WAオフショット★
配信番組『ムーンライト青山通り』でしんちゃん(寺田)と仲良くクッキング!
●小野貴巳(おの たかし)
1978年8月23日生まれ 宮崎県出身
◯株式会社ピース所属。小劇場のお芝居からドームライブまで、数々の現場の舞台監督として活躍。SHOW-WAではファーストツアー、セカンドツアーのほか、10月1日(木)に開催されるSHOW-WA初の日本武道館公演も担当する。
公式サイト【https://piece222.studio.site/】
●青山隼(あおやま じゅん)
1988年1月3日生まれ 宮城県出身
◯2006年にプロデビュー。U-20日本代表経験を持ち、Jリーガーとして名古屋グランパス、セレッソ大阪、徳島ヴォルティス、浦和レッズでプレーし、2015年に現役引退。その後は、俳優として舞台やドラマ等に出演。現在は、秋元康プロデュースの昭和歌謡グループ・SHOW-WAのメンバーとして活動中。ラジオ『SHOW-WA寺田&青山の青春時代を取り戻せ!』(CBC、毎週日曜22:00〜)レギュラー出演中。2026年10月1日(木)にはSHOW-WAとして初となる日本武道館での公演が決定!
公式X【@jun_aoyama1988】
公式Instagram【@jun_aoyama_show-wa】
取材・文/釣本知子 撮影/上村透生

