
NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00〜ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=羽柴秀長/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。劇中、軍師として秀長&秀吉兄弟の天下取りを支えるのが、黒田官兵衛だ。演じるのは、連続テレビ小説「おちょやん」(20〜21)、「あんぱん」(25)で注目を集め、世界的大ヒットドラマ「SHOGUN 将軍」(24)でも活躍した期待の若手俳優・倉悠貴。大河ドラマ初出演となる本作の舞台裏を語ってくれた。
−大河ドラマ初出演ということで、ここまで撮影を進めてきた現場の印象はいかがですか。
僕が連続テレビ小説「あんぱん」に出演していたとき、隣のスタジオで「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(25)を撮影していましたが、“大河ドラマ”というだけで、勝手に近寄りがたい雰囲気を感じていたんです。でも、実際に自分がその現場に入ってみると、驚くほど温かくて。それは、主演の仲野さんのお人柄のおかげでもあると思います。おかげで、初めは緊張して萎縮する部分もありましたが、今では「とてもいい現場だな」とすっかり和んでいます(笑)。
−倉さんの演じる黒田官兵衛は、初登場からここまで年齢を重ねてきましたが、その変化をどのように捉えていますか。
登場したばかりの頃の官兵衛は、自分の能力を積極的にアピールするような若者でした。しかし、石田三成(松本怜生)や藤堂高虎(佳久創)といったより若い世代が登場してきたことで、官兵衛自身は羽柴家中の重鎮として、秀吉&秀長兄弟を支える立場になってきました。それによって「俺が、俺が」という意識は自然に消えていきました。一言で言うなら、「大人になった」ということだと思います。
−そういう官兵衛を演じる上で、どのようなことを心掛けていますか。
外見的には月代をそり、ひげを生やすなど、雰囲気はかなり変わってきました。それに伴い、お芝居の面では、今までは目や声、態度でわかりやすく「頭が切れる」ということを印象付けてきましたが、目の動きが多いと落ち着きがなく、どうしても若く見られがちです。それよりも、動きを少なくした方が、何を考えているかわからず、落ち着きも出て大人に見えるので、最近はあえて何もしないことを心掛けています。言ってみれば、多少の物事には動じることなく「この人は何を考えているんだろう?」と思わせるお芝居を意識しています。
−では、初出演となる大河ドラマに対する思いをお聞かせください。
僕も1人の俳優として、「いつかは大河ドラマに出演したい」という思いは持っていましたが、それが実現したのがこの作品で本当によかったと思っています。仲野さんを始め、池松さん、小栗(旬/織田信長役)さん、菅田(将暉/竹中半兵衛役)さんなど、これまでテレビや映画で見てきた先輩方とご一緒できる幸せを日々かみしめています。皆さんがお芝居について相談している様子を見ると、ワンシーンや一つのセリフに徹底的にこだわられているんです。そんなふうに、実績のある先輩方が作品を少しでもより良いものにしようと貪欲に取り組む姿勢を見ていると、僕自身も俳優として大切なものを改めて思い出すことができます。
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−秀長&秀吉兄弟を演じる仲野太賀さん、池松壮亮さんの印象をお聞かせください。
仲野さんは、現場でもいろいろなことを考えている様子が秀長と重なり、とても魅力的です。池松さんは、普段はニュートラルな方ですが、お芝居になると全く違う空気感を醸し出し、一瞬で場の空気を自分のものにしてしまいます。その上でお二人は、「ここはこういうシーンなので、これくらいの熱量でやりましょう」といった感じで現場を引っ張って下さるんです。大河ドラマの現場全体に気を配るのは大変なはずですが、まるで演出家やプロデューサーのような視点で見守ってくださって。そういう俳優としての解像度の高さは、とても尊敬しています。


−本作では戦国時代の過酷さが描かれる一方で、ユーモアのあるシーンも多いですが、その辺もお二人が空気感を作っているのでしょうか。
その点は、お二人と一緒に現場を引っ張ってくださる蜂須賀正勝役の高橋努さんの存在も大きいです。この作品は、戦国時代の過酷さを描く場面も多いので、空気が重くなってもおかしくありません。でも、努さんを含めたお三方が、その辺のバランスをうまく取ってくださるんです。おかげで、僕を含めた4人で軍議をするシーンでは、想像もしなかったものが生まれたりして。しかも、入念に打ち合わせをするわけでもなく、「こんな感じで」と一言伝えるだけで、その空気が出来上がるんです。そういうチーム感は、撮影が長期にわたる大河ドラマならではです。
−時代劇に出演するのは「SHOGUN 将軍」に続いて二度目だそうですが、所作などでお手本にされた方はいますか。
初めて時代劇に出演した「SHOGUN 将軍」では、主演の真田広之さんに伝統的な時代劇の所作を一から教えていただきました。この作品では、現場でお会いする機会は少なかったのですが、民放のドラマでご一緒した山口馬木也(柴田勝家役)さんから、いろいろとアドバイスをいただいていました。馬木也さんは、時代劇に関してはプロフェッショナルな方なので、とても心強かったです。
−ところで、羽柴家臣団には個性豊かな顔ぶれがそろっていますが、倉さんのお気に入りの人物は誰でしょうか。
ダントツで、蜂須賀正勝です!(笑) 僕は努さんを尊敬していますし、官兵衛と正勝は羽柴家の左右両翼をなす存在です。官兵衛が冷徹な策士だとしたら、人情味豊かで家中の人間関係を円滑にしているのが正勝。その点について劇中で詳しく描かれてはいませんが、努さんから「二人でそういう関係性を作れたら」というお話があって。だから、お芝居でも官兵衛が正勝を意識することも多いですし、官兵衛が正勝に「黙っていてください」と突っ込んだときは、努さんがリアクションで面白くしてくださいました。そういう安心感もあり、皆さんが正勝を「影のヒロイン」と呼んでいるくらいです(笑)。
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−それでは最後に、これからの官兵衛の見どころを教えてください。
これからも、官兵衛は羽柴家の重鎮として、四国攻めや九州攻めで活躍することになります。その一方で、家督を嫡男の長政に譲り、もう一段階変化していく姿をご覧いただけると思います。具体的にどう演じるかは、ビジュアルも含めて皆さんと相談しているところですが、晩年の官兵衛は優しい人間だったという説もあるので、合戦が続く中では見せられなかったそういう人間味も表現できたらと考えています。1人の役を長く演じる貴重な機会なので、いろいろとアイデアを出しながら最後までしっかり演じ切りたいと思います。
(取材・文/井上健一)


