
【写真】東京浅草新喜劇『家族以上、父親未満』ゲネプロの様子
本作は、浅草観音裏にある昭和歌謡居酒屋を舞台にした人情喜劇で、店の一人娘の結婚話から絆を試されるような騒動が巻き起こっていく物語。脚本を大森博、脚色・演出を東が担っている。
旗揚げについて東は「伊東四朗さん、三宅裕司さん、そして欽ちゃんなど、いろいろな方と一緒にやらせていただいてきた中で、自分なりにチャレンジしてみたいと、今回こういう座組で、こんな喜劇をやってみたいと、東京浅草新喜劇というタイトルをつけました」と、囲み取材の中でその胸中を明かす。ただ「メディアの方とかには“継承”などと言っていただけてありがたいんですが…まずは来てくださったお客さんを楽しませ、1回、1回を積み重ねて、探りながら自分たちの形を探っていければ」と、謙虚に語った。そして、居酒屋店主の相棒・長山脩という自身の役どころを「LGBT的なことも踏まえた役」と話し、「ゲネプロは大成功。本番も大笑いして、大泣きして帰ってもらいたい」と、意気込んでいた。
近所で和菓子屋を営む青年を演じる福田悠太は、「僕も浅草生まれの人間で、以前から東さんに『浅草でお芝居やらないんですか?』と言っていたんです。だからすごく光栄です」と、地元での公演に特別な想いがあると話す。そして「東さんの行動力がすごくて、衣装もほとんど買ってきてくれた」と、東の見事な座長っぷりを明かす。
結婚を考えている年頃の娘・宮田優を演じる清水麻璃亜は以前にも東やはなわとは共演経験があるとのことで「もし次に何かやるときに自分の名前が無かったら嫉妬するかも、というくらい楽しかったので、ヒロインとして今回出ることができてうれしい」と語った。「(毎日が)本当に楽しくて! みなさん本当の娘のように言ってくださって…愛されてます(笑)。素晴らしい先輩方と舞台に立てる貴重な機会なので、“お父さん”たちにしがみついて頑張っていきたい」と笑顔で話した。
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居酒屋を切り盛りしながら、両親を亡くした優を引き取って育ててきた東出昭を演じるはなわは「(東は)東京喜劇を牽引していく人だとずっと思っているので、誘われてうれしいです」と、喜びと感謝を言葉にする。「人情部分もたくさんあって、今回はそこで重要になる役。ゲネでちょっと満足しちゃって気が緩んでしまうと怖いので(笑)、新たにスイッチを入れ直します。でも、本当に楽しい」と、確かな手ごたえを感じているようだった。また、「弟も漫才協会で浅草という場所にはお世話になっているし、浅草を盛り上げる手伝いができることが非常に嬉しいです」と、日替わりゲストで出演する実弟の塙宣之(ナイツ)との共演も楽しみだと話した。
本作の上演にあたり、地元の方々からの協力もたくさんあったそうで「浅草で喜劇をやると言ったら地元の方々がすごく喜んでくれて。ポスターを撮影した場所も浅草の居酒屋さんです。今日もゲネプロなのに、たくさん差し入れをいただき、ほんとうにありがたいですよ。朝からいろんな方があいさつに来てくれて、みんな全力で話してくださるんで、もうヘトヘトです(笑)」と東はにこやかに話し、地元での旗揚げを大いに喜んだ。
物語では、浅草という人情味あふれる街だからこそ感じられる、人と人とのあたたかな交流、血縁だけでは語れない強い絆が、笑いと涙を織り交ぜながら描かれる。そして、昭和歌謡居酒屋ならでは歌唱シーンも大きな見どころのひとつと言えるだろう。喜劇ならではの軽妙なやりとりの中に、令和にも受け継いでいきたい喜びが鮮やかにちりばめられていた。(取材・文・囲み写真:宮崎新之、公演写真は提供)
東京浅草新喜劇『家族以上、父親未満』は、9月13日〜20日、東京・雷 5656 会館ときわホールにて上演。日替わりゲストには、アニマル浜口・浜口京子、黒沢かずこ(森山中)、野呂佳代、古坂大魔王、塙宣之(ナイツ)、ビビる大木、田中裕二(爆笑問題)、土田晃之、堀内健(ネプチューン)が出演する。
※ゲネプロオフィシャルレポートは以下の通り
【ゲネプロレポート】
浅草の街に、新たな「東京喜劇」の幕が開いた。
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物語の舞台は、浅草観音裏にある昭和歌謡居酒屋「心春」。店を切り盛りするのは、東貴博演じる長山脩と、はなわ演じる東出昭。昭和歌謡ショーで客を楽しませる二人は、単なる店の仲間ではない。実は昭は、姪である優の「お父さん」、脩は「お父ちゃん」と呼ばれる存在。優の母・春子を亡くした後、二人で彼女を育ててきた、まさに「家族以上」の関係なのだ。
清水麻璃亜演じる優は、浅草に帰れば一気に家族の中の「娘」に戻る。明るく元気で、ちょっぴり酒癖も悪い彼女が抱える恋の悩みが、物語を大きく動かしていく。
優の恋人は井阪郁巳演じる小松透。金沢の老舗和菓子店「松緑堂」の跡取りという立場を背負いながら、優との結婚を望む青年だ。そして丸山優子演じる透の母、松緑堂の現社長・礼子が登場すると、物語は一気に波乱の様相を見せる。
一方、福田悠太演じる木下宏一は、浅草で和菓子職人を営む、優のお兄ちゃん的存在。何かと優の相談相手になり、家族の中では冷静なツッコミ役……かと思いきや、ここぞというところでしっかり笑いをさらっていく。
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そして、この作品の魅力は「笑い」だけではない。
物語の背景にあるのは、優の母・春子の23回忌。毎年恒例の「春の会」は、単なるお祭りではなく、家族みんなで春子を思い出す大切な時間でもある。昭和歌謡や浅草らしい人情、勘違いから生まれるドタバタを積み重ねながら、登場人物たちが少しずつ「家族」というものの意味を見つめ直していく。
クライマックスでは、昭和歌謡のメドレーから、優が歌う「未来へ」へ。笑いでいっぱいだった舞台が、いつしか優しい空気に包まれていく。昭が亡き春子に語りかけ、優が「家族が増えることになりました」と告げる瞬間は、この作品が描いてきた「家族以上」という言葉の意味を、改めて感じさせる場面だ。
笑って、笑って、最後に胸が熱くなる。
浅草という街が持つ、人と人との距離の近さ、血のつながりだけではない「家族」の温かさ。そして、昭和から令和へと受け継がれていく東京喜劇の味わい。
東京浅草新喜劇の第一歩となる『家族以上、父親未満』は、「家族ってなんだろう?」という問いを、笑いながら、そしてあたたかく受け止めさせてくれる一作となっている。
浅草から始まる新しい東京喜劇の歴史が、華やかに幕を開けた。
