「Tシャツが乾くまで」©TBS2026年の夏ドラマも、まもなく終了の時を迎える。そこで今日は、毎クール全ての作品をチェックしているドラマニアな筆者が「勝手にベスト3」と題して、中でも印象深かった作品を厳選して紹介していこう。今期は、仕事や恋、結婚などさまざまな場面で奔走する女性たちの姿が心に残っている。
第1位:「Tシャツが乾くまで」
目まぐるしく変化する“人の印象”
あなたは、愛した相手のすべてを知っている?
「silent」の脚本家・生方美久さんが描いた新作ドラマ「Tシャツが乾くまで」は、蒼井優さんを主演に迎え、バス事故に巻き込まれた二組の夫婦の“喪失”と“再生”、“愛”と“秘密”を描いた物語だ。結婚情報誌の編集者として働く主人公・瀬尾咲子は、事故の後、突如姿を消した夫・充(松山ケンイチ)の行方を追う過程で、同じ事故で妻を亡くした園田樹生(中島歩)と出会い、パートナー同士が不倫をしていたかもしれないという衝撃の疑惑に直面する。
そうして確信を得ることができないまま時は経ち、真実を追い求める中で、徐々に心の距離を縮めていく二人――。しかしながらそこへ充が戻ってきて、不倫のような事実はなく、ただ第三金曜日にコインランドリーで会うだけの心の支えだったと明かされるのだ。しかも原因は、充の幼少期からの失踪癖にあると言い…。
とにかく毎話、各登場人物たちの印象がガラリと変わっていくのが本作の醍醐味だろう。「この人の言動は少々理解しがたい」と感じた翌週、「なるほど、裏にそんな事情があったのなら仕方ないかも」と見事なまでに掌の上で踊らされている感覚が病みつきになる。序盤からずっと瀬尾夫婦の間で掟となっていた「ウソはダメ。でも、言いたくないことは言わなくていい」というルールが、最終的に巡り巡って、事件の発端となった充を追い詰めていく展開に背筋が凍った人も多いのではないだろうか。
「自分が愛したはずの相手は、本当はどんな人物なのだろう?」すべてを知ることが正しいのか、はたまた知らない方が幸せなのか…。主人公が選んだ結末とは? まさに最後の最後まで目が離せない、この夏イチオシの一作としてSNS上でも考察合戦が過熱した一作を第1位に選ばせていただいた。
第2位:「大空港〜GATE24〜」
主人公が「なんと!」と言うと何か起こる…!?
事件の真実を徹底して追い求める姿が癖になる
本作は、類まれな観察眼を持つ風変りな税関職員・森万智(趣里)を主人公に、各省庁から集められた選りすぐりのメンバーたちが、内閣官房直属のスペシャルユニット「GATE24」――日本の境界線と言われる空港の最強門番として、衝突しながらも事件を解決していく新感覚エンターテインメント。
これまであまり扱われたことのないゲートが舞台ということもあり、個人的にはまずお仕事ドラマとして非常に興味深い内容だった。もちろん、通常こんなにたくさんの事件は起こらないだろうが、「もしも」という仮定で見ると「そうか、こういうケースもあり得るのか」と盲点を突かれることもしばしば。ほぼワンシチュエーションにして、とても濃厚な事件・推理・解決の流れを毎話たっぷり楽しませてもらったと思う。
また加えて、主人公・万智の、空気の読めない性格がとても“良い意味で”キャラクターとして立っていたのが魅力的だった。「なんと!」という口癖が思わずこぼれると、それがなぜか事件の予兆となって…!? 対人能力はほぼ皆無だが、税関を通ろうとする「モノ」が発するわずかなSOSを察知する能力に長けており、納得がいくまでとことん調査を続ける姿に、同僚の入国審査官・早見(眞栄田郷敦)をはじめ「GATE24」の仲間たちは心動かされていく。大きな信念を胸に働く彼女たちの姿に誇りを感じずにはいられない、今期一番の学び多きドラマ「大空港」。もしまだ見ていないという人は、後追いでもぜひチェックしてみていただきたい。
第3位:「君の好きは無敵」
キャラクタービジネスの業界を舞台に下剋上!
味方を増やして上り詰めていく爽快な物語
松本若菜さん×佐野勇斗さんがタッグを組み、パワフルなラブコメディに挑んだドラマ「君の好きは無敵」。本作は、趣味がなく推しという気持ちがわからない元コンサルのバリキャリ主人公・草壁杏奈と、逆に“かわいい”への愛は人一倍だが偏屈で変人な訳ありキャラクターデザイナー・瀬尾深月が、キャラクター業界を駆けあがっていく爽快な成長物語だ。実際に株式会社サンリオが取材協力しているとあって、リアルなビジネスの描写などが新鮮で面白かった。
瀬尾が描いた新作キャラクター・ハイエナの「チュチュチュエラ」に、人生で初めてズキュンと心を打たれ、「この子を多くの人に届けることが使命だ!」と“初推し”への深い愛情で突き進んでいく杏奈。そんな杏奈に、いつしか瀬尾自身もズキュンと心打たれて…。恋と仕事が交錯していくドタバタ展開は、今期あまり数が見られなかったラブコメの中でひときわ存在感を放っていたように思われる。最初はライバル会社に所属していた仲間たち、プランナーの廣瀬(藤井隆)やプロデューサーの佐々岡(小野花梨)との誤解がとけて、ひとりまたひとりと味方が増えていく胸アツな要素もあり、気がつくと夢中でチュエラの行く末を見守りたくなってしまった。“かわいい”が心に寄り添い、そっとただ支えてくれるだけで世界は明るくなる――鞄にぬいぐるみをつけている人を街の中で頻繁に見かけるようになった現代において、ぬいぐるみとの絆は胸に響くテーマ。とても令和ドラマらしい一作に仕上がっていたのではないだろうか。
以上、夏のドラマ「勝手にベスト3」。あなたの好みとぜひ見比べてみては? 次回は秋ドラマのおすすめ作品をピックアップしてご紹介予定。お楽しみに。
(YUKI)