
【写真】蘭寿とむ、インパクト大なクルエラビジュアル
◆ワンちゃんたちに立ちはだかる大きな壁になるべく試行錯誤
ドディー・スミスによる児童文学小説『ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語』(原題『The Hundred and One Dalmatians』)をもとにした本作は、2022年にロンドンで初演、その後イギリス全土で大旋風を巻き起こしている注目のミュージカル。そんな話題作が石丸さち子の訳詞・翻訳・演出により早くも日本初演を迎える。日本版でも英国クリエイティブチーム監修の高度なパペット技術によって、個性豊かで愛らしい犬たちが舞台上に次々と登場。個性派キャストたちが集結し、どんなハートウォーミングな物語を届けてくれるのか期待が高まる。
――あの名作がミュージカルになるんだ!と驚きました。
蘭寿:私もお話をいただいて、元々同じ原作のディズニー映画『101匹わんちゃん』は知っていましたから「あの名作がミュージカルになるの!? 絶対楽しい!」と思い、すぐに「出演したい!」とお返事しました。台本を読ませていただくと、ワンちゃんたちが一生懸命頑張っている姿が目に浮かんで感動しまして、敵であるクルエラを演じるのに涙、涙でどうしよう?と思いました(笑)。
――演じられるクルエラは、ワンちゃんたちの前に立ちはだかる“ファッショニスタ”で“世紀の悪女”ですもんね。
蘭寿:そうなんです。メインビジュアルのお衣裳もそうですし、本当にどの衣裳もすごくゴージャスでかっこいいんですよね。「美のカリスマ、私の美が全て!」というクルエラとして登場できたらいいなと思っています。
――“世紀の悪女”のほうは、“悪女”の部分が普段の蘭寿さんと結びつかなくて。どちらかというと穏やかでゆったりされている方のイメージがありまして…。
蘭寿:よくご存じで(笑)。ワンちゃんたちがあまりにもかわいいので、クルエラとしてはワンちゃんたちに立ちはだかる壁になるぐらいの悪女っぷりじゃないとダメだろうと思い、精いっぱい役作りして本読みに臨んだのですが、演出の石丸さち子さんからは「まだまだ」と。自分が想像している何倍も大きな壁というか、美の追求に対して規格外の大きさの思いを持った女性を作っていこうねと言っていただいたので、いろいろと教えていただきながら作っていけたらなと思っています。
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蘭寿:ワンちゃんたちを毛皮にしてコートを作るという欲望を満たそうと魔の手を伸ばすクルエラから、ワンちゃんたちが必死に逃げてお家を目指す姿を応援団みたいな気持ちで見ていました。きっと今回の舞台でもみなさん同じ気持ちになるんじゃないかなと思います。
――憎きクルエラを演じることになりますが、役作りではどんなことを心がけたいですか?
蘭寿:今回出演させていただくにあたり原作を読み返しもしましたが、私自身がこれまで培ってきたものも活かしながらの新しいクルエラを作っていけたらなと思います。石丸さんからは『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたミランダのように“自分を押し通す女性”とのヒントをいただきました。自分の意見が全てで、忙しい中でいろいろなものを決めていかないといけないから、それに向かう以外のものは全部排除というくらいの強い女性で、自分の感覚が全て、それが正しいと思って生きているので、おそらくクルエラも悪いことしているとは思っていないんですよね。自分なりの正義が正解、なぜみんなこれについてこられないの?という感覚だと思うんです。そのあたりの強さも出せたらなと思っています。クルエラは甥っ子のキャスパー&ジャスパーに対しても、人を人とも思わないような扱いをしたりひどい言葉を投げかけたりするので、周りのみなさんの助けも借りながら、強いクルエラ像を模索していきたいなと。
石丸さんの中に私たちそれぞれが演じるクルエラ像が見えてきているみたいなので、なんとかそこに到達できるように信じてついていきたいと思います。
◆新妻聖子とWキャスト それぞれの持ち味を活かし違ったクルエラを
――今回新妻さんとのWキャストとなります。同じ役を演じるにあたり何か新妻さんとお話されたことはありますか?
蘭寿:礼真琴さん主演のミュージカル『BOOP! The Musical』を観劇に行った時に、偶然新妻さんもいらしていて。観劇前にお茶に誘っていただいたのですが、もう普段の育児話や情報交換ばかり(笑)。これからちゃんと役についての話も深めていきたいと思います。
――蘭寿さんは『シスター・アクト〜天使にラブ・ソングを〜』で森公美子さんとWキャストを務められた経験がありますが、Wキャストの楽しさや難しさはどんなところにありますか?
蘭寿:森公美子さんとの時もそうでしたが、あまりにも持っているものが違うので、お互いに自分のよさを追求するという感じで、意識するとかはないんです。新妻さんが本読みをされているのを見て、すっごいド迫力で、お声もビンビンに響くし、高いところも自由自在、セリフも本当にパンチがあって「すごいなぁ。こんなクルエラもあるんだ! カッコいいなぁ」と思いましたし、自分は自分で、自分の持ち味で演じたら自然と違ってくると思うんです。お客様も違ったクルエラをご覧いただけたら楽しいと思うので、「両方観たいな!」って思ってもらえるようなクルエラを作れたらいいなと考えています。
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蘭寿:皆さん本当に個性的で、それぞれ全然違うワンちゃんなんですよ。もうワンちゃんを演じているんじゃなくて、ワンちゃんそのものです。本読みの段階から声だけでも感動しちゃったので、これにパペットが加わったらどんなものが生まれるんだろうとワクワクしていますし、皆さんにご覧いただくのが楽しみでしかないですね。
――そんな皆さんが勢ぞろいされて、どんなステージになりそうでしょうか。
蘭寿:とにかくワンちゃんたちの大冒険を心の底から楽しんでいただきたいです。絶対にワンちゃんたちの応援団になれると思いますし、推しのワンちゃんが見つかるんじゃないかっていうぐらい、本当にどの子もかわいくて。推しのワンちゃんばかりを追いかけるために、もう1回観る!なんてこともあると思いますし、クルエラも2人いますから、違う感覚で何度も楽しんでいただけたらうれしいですね。
◆デビュー30周年で悪役に目覚める!?
――蘭寿さんは今年初舞台から30周年を迎えられました。
蘭寿:宝塚音楽学校にはじまり、宝塚歌劇団に入団して30年。宝塚は舞台に立つための土台を作ってくれたところであり、いろいろな経験をさせてもらったところ。そして卒業してからもミュージカルはもちろん、映像作品やCDを出させていただいたり、ナレーション、朗読劇と本当にいろんな経験をさせていただきました。これからもここに出てほしいなと思ってもらえるような、いろんな蘭寿とむを表現できたらと、ひとつひとつのお仕事を丁寧に心を込めて取り組んでいきたいという思いでいます。
――出産を経て本格復帰された『RUNWAY』がもう2年前。本格復帰された後のご自身に何か変化は感じられますか?
蘭寿:『RUNWAY』の時はやっぱりまだバタバタしていましたね。2年経って少し落ち着きが出てきて、ちょっと切り替えもうまくなってきたのかな?というくらいですね。
――お仕事と子育てなどのプライベートもバランス良く、いい感じで…。
蘭寿:“良く”まではいかないです。時間が本当に足りなくて、もっと譜面を見る時間がほしい、台本を開く時間がほしい、1日24時間じゃ足りない!とずっと思っています。でもそこは家事の時短をしたり折り合いをつけつつ、全力で挑みたいなと思っています。
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蘭寿:いやぁ〜、悪役、楽しいですよね(笑)。
――(笑)。これまであまりヒールを演じられているイメージがないです。
蘭寿:少ない方だと思います。なんか作り込むのがちょっと楽しいなという思いが芽生えてきている感じがあって。かと言って悪役専科になるのではなく、いろんな役に染まれる俳優でありたいと思うんですけど、…クルエラ、楽しいです(笑)。
――今回のクルエラではどんな悪を目指しましょうか。
蘭寿:ワンちゃんたちにとって、この悪女をなんとかしたいと思わせる壁になるような、石丸さんの言葉をお借りすると“規格外”の悪い女を作っていきたいと考えています。
――クルエラが悪ければ悪いほど、ワンちゃんたちへの感情移入も増しますもんね。
蘭寿:規格外の悪のクルエラを乗り越えて、大冒険の果てにワンちゃんたちがお家に帰れた時のほうが感動が大きいと思うので、その大きな山、壁になれるぐらいの存在、そんな圧でステージに立ちたいです。
――最後に本作を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
蘭寿:笑えるシーンもふんだんに散りばめられた、感動あふれるハートウォーミングな作品になっています。お話ももちろんですが、音楽もジャジーなものもあれば、ポップなもの、涙が出るようなハートウォーミングなものもあったりととても魅力的です。最後は一緒に手拍子しながら歌えてハッピーになれる曲もあるので、本当に楽しんでいただけると思います。
お子さんにはダイレクトにピュアな心に届くと思いますし、大人にはクルエラの悪などいろんな目線で楽しめます。楽曲もファッションも含めた『101ダルメシアンズ』の世界すべてを何にも考えずにただただ楽しんでいただける作品です。ぜひ何度でも劇場に足をお運びいただけたらうれしいです。
(取材・文:田中ハルマ)
ミュージカル『101(ワンオーワン)ダルメシアンズ』は、10月13日〜29日東京・日生劇場、11月7日〜15日大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。
