山田孝之「俳優は楽しいですよ」オーディション「THE OPEN CALL」立ち上げた理由とは

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2026年09月27日 08:00  日刊スポーツ

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熱い演劇論を展開してくれた山田孝之さん。姿勢を正して拝聴。そこで腕組みは相手を拒否する姿勢との例え話。その時に私は腕組み真っ最中。違うんです山田さん。私、拒否していません。インタビュールームが猛烈に寒かっただけなんです(撮影・水谷安孝)

俳優山田孝之(42)がメインパートナーを務める俳優オーディション「THE OPEN CALL」の様子を追うドキュメンタリー番組が、10月1日から映像配信サービス「Lemino」で独占配信される。2028年に公開するオリジナル長編映画のメインキャストを選ぶオーディションで、約1万4000人の応募が集まり、番組は32人まで絞り込んだ3次審査から始まる。なぜ俳優オーディションを立ち上げたのか、なぜオーディションの過程を視聴者に届けるのか、俳優という仕事に対する熱い思いとともに語った。【野見山拓樹】


★俳優って見えなさすぎる


「俳優って見えなさすぎる」。俳優として25年以上活動する中で、俳優の仕事や役作りの過程が世間から理解されていないことを感じてきた。オーディションに挑む候補者の姿を通して「俳優って何だ?」「役作りって何だ?」と提示し、芝居を見る人の理解を深めようと俳優の阿部進之介(44)らとともにオーディションを立ち上げた。


「舞台の芝居だったら稽古場で他の俳優さんやスタッフの方と作るけど、映像の芝居は家で1人で作り込むもの。練習風景が見えないから、ほとんどの人は何が大変なのか知らない。セリフ覚えが大変なのかな? とか、そんな感じにしか見えていないと思います。でも、そのセリフは演じる人物の感情が動いたから出るもので、感情を言葉や芝居に落とし込むのが難しいし、一番時間がかかる。そこを見てもらって『大変なんだね。頑張ってね』と思ってもらえたら、僕らも勇気づけられます」


★役も脚本もまっさら


通常の俳優オーディションは決まった役に適した俳優を探すものだが、このオーディションは役も脚本もまっさらだ。オーディションが終わり、メインキャストに決まった俳優の個性や芝居を見たうえで、ゼロから作品を作り上げる。年を重ね、オーディションのチャンスが失われた中堅からベテラン俳優にとってチャンスの場を作る意味もあるという。


「最初から役があると、年齢もキャラクターもある程度固まってしまう。そこにはまる人を見つけるのではなく、芝居がいいかどうかだけを見るなら役は決めない方がいい。普通のオーディションよりも候補者への要求のレベルをあえて上げて、分かりやすく見えるようにしているので、視聴者としても実力というものが見えやすいと思います」


アイドルグループなどのオーディション番組では、プロデューサーの熱心な指導のもと、候補者を育成しながら審査を進める様子が描かれるが、「僕はこういうアプローチでやっているとか、こう考えているとか、そういうことは伝えますけど、指導できることは何もありません。答えがないので」と、自ら指導し、俳優論を説くことはない。全員に同じ脚本を渡し、どんな人生を歩む人物を演じるか、発想や演技力を候補者1人1人に委ね、審査を行う。


「全員もらう脚本は一緒でも、どういう人生を歩んできた役を演じるか、どんなシチュエーションでセリフをしゃべるのか、という役作りはそれぞれ違う。本当に引き込まれる芝居からは、空間に何もなかったとしてもその人の衣装とか物理的な背景が見える。その人物が歩んできた人生が想像できたり、最後のセリフの後に取る行動が予想できたりする。それが見えるのが優れたお芝居だと思っています。僕は42年間生きてきた中で起きたシチュエーションから芝居を構築していくけど、全然違う視点を持っている人って当たり前にいる。その発想はなかった、と思う芝居が出ると胸を打たれますし、面白いと思えますね」


★自分をだまし込んで役に


山田自身はこれまでに「世界の中心で、愛をさけぶ」や「勇者ヨシヒコ」シリーズ、「全裸監督」、「正体」など数々の話題作に出演し、見る者を引きつけてきた。芝居の技術を言語化できるのは、狂気的な役からシュールな役まで、1つ1つの役に真摯(しんし)に向き合ってきた証しだ。


「芝居をする瞬間に視聴者を考える瞬間はありません。視聴者を考えているということは、役ではなく僕がいるということで、見られ方を考えてしまっている。役としてここにいると自分をだまし込んで、役の気持ちに入り込むようにしています。


芝居の技術として見られ方を気にすることはあります。例えば本当に苦しくて涙がこらえきれないシーンの場合に、本当にこらえてしまったらお芝居としては良くない。『この人は今強がってるな。心の中では泣いているんだろうな』というのが見えて初めて心が動く。リアルを追求しすぎると感情が読めないし、読めないと見ていても分からない。例えば何かを思い出すときは上を見たり、動揺したときに唇をなめたり、そういう動きを使いながらどのくらい伝えるか。そういうところは意識しています」


演技力の高さで多くの人を魅了してきたが、「プロ意識はかなりない方ですよ」と謙遜する。


「俳優って精神的につらい瞬間が多い。普通に生きていたら母を亡くすのは人生で1度だけですけど、僕は母役の人が亡くなることがたくさんある。ただの役でしょ? お芝居でしょ? と思われるかもしれないけど、僕はその役として本当に生きているから、母役のことも本当の母だと思っているし、だから亡くなる設定の時に本当につらくなる。映画って人の激動の瞬間を描くので、つらいシーンと向き合うとすぐに酒に逃げちゃいますね。飲まなきゃ無理! って思っちゃって。毎日走ってリフレッシュするストイックさがあればいいですけど、僕は無理なので、プロ意識が足りていないですよ(笑い)」


★つらい思い必ずあるけど


苦悩も明かしつつ、さまざまな役と向き合ってきた分、俳優という仕事への思いも人一倍強い。


「俳優は楽しいですよ。少ない情報から謎解きのように役をひもといて、その役を理解していける。つらい思いと向き合う瞬間は必ずありますけど、それでもなんで俳優を続けるかと言われたら、まだ誰も知らない、この世に存在していない役が徐々に分かってきて、その人になれる喜びがあるから。知る喜びがあるから、みんな俳優を続けているんだと思います」


「俳優って何だ?」「役作りって何だ?」に対する答えを、候補者が芝居と向き合う姿を通して提示しつつ、山田自身も俳優を続ける限り、新たな答えを求め続ける。


▼THE OPEN CALL


2028年に公開するオリジナル映画のメインキャストを募集する大型俳優オーディション。年齢、性別、国籍、経験を問わず、メインパートナーを務める山田が俳優仲間とともに審査しながら、「俳優とは何か」を追求する。オーディションの過程や候補者の個性をもとに、映画監督の榊原有佑氏と映画プロデューサーの山田兼司氏を中心にオリジナル映画の脚本を制作する。


▼オーディションの企画、プロデュースを手がける伊藤主税(ちから)氏(47)


現場で候補者1人1人の芝居をしっかりと捉え、丁寧に向き合うその姿は、我々プロデュースチームにとって誇りとさえ思えます。これまでに数多くの役を演じ、さまざまな経験を重ねてきた山田さんが、候補者たちに何かを「教える」のではなく、1人の俳優として対等に向き合い、自分の経験や考えを惜しみなく「共有」している。候補者たちと本気で芝居に向き合う仲間として接する姿から、俳優という職業への深いリスペクトと、芝居を探求し続ける覚悟を感じています。


◆山田孝之(やまだ・たかゆき)


1983年(昭58)10月20日生まれ、鹿児島県出身。99年「サイコメトラーEIJI2」で俳優デビュー。03年「WATER BOYS」でドラマ初主演。「世界の中心で、愛をさけぶ」、「闇金ウシジマくん」シリーズ、「勇者ヨシヒコ」シリーズ、「全裸監督」など、数々のドラマや映画で主演。25年に映画「正体」で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。身長169センチ。血液型A。

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